いよいよEQE SUVを走らせる。メルセデス・ベンツの中核にあたる「EQE SUV」はどんな走りを披露し、何を感じかせてくれるのだろうか。
デザインの統一とHMIの重要さ
常識を覆す「EQE SUV」のパッケージングとデザインは要注目![メルセデス・ベンツEQE SUV試乗記]
「EQSセダン」に始まったメルセデスのBEV(バッテリー電気自動車)専用モデルシリーズ。そのT字型のユニークなコクピットスタイルにもようやく見慣れてきたように思う。異なるモデル間のデザイン的な統一性を嫌う向きもあるが、ジャーマンプレミアムブランドでは特殊なモデルを除き伝統的にインテリアデザインのテーマを世代ごとに共有してきた。ドライバーとの関係性を考えたとき、その時代における最適解を見つけてラインナップへと展開することもまたブランドの個性を固める手段であると彼らは知っているからだ。人とクルマとの接点=広義のヒューマンインターフェイス(HMI)こそがブランドの礎だ。
“重さ”を感じさせないBEVマジック
前輪の存在をステアリングホイールでしっかり感じ取りながら、いつものようにゆっくりと走り出す。圧倒的な静粛性は上級EQシリーズの魅力の一つ。あまりに静かすぎて、路面との関係性がよくわからなくなって不安になることもあるくらいだ。
サウンドエクスペリエンスという“走行音の演出”も悪くない。よくできている。特に三種類あるサウンドのうち、“ロアリング”は嫌いじゃない。けれども驚異的な静かさを味わってしまうと余計なお世話だと思ってしまった。この静けさの中で耳が寂しくなるというのであれば、好きな音楽を掛ける方を筆者は選ぶ。AVサウンドシステムもまた上等であった。
街中での乗り心地は上々だ。とろけるようだった「EQS SUV」の乗り味に感覚的にはかなり近いように思える。大きい方の21インチタイヤ&ホイールを履いていたので多少のコツコツを感じることもあったが気になって仕方ないというほどではない。ゴー&ストップも頻繁な市街地走行でも2.6トン以上という重量をまるで感じさせず、むしろ「GLA」を駆っているのかと思えるほど軽快なあたり、さすがはBEVの力強さというものだ。
何より驚かされたのは、やはりその小回り性だった。試乗途中に狭く入り組んだ路地に入り方向転換を余儀なくされたのだが、これはちょっと厳しいなと思えるようなスペースでも楽々とお尻を入れていけた。否、かえって切れ込みすぎて障害物検知のアラームが鳴ってしまったほど。ミラーを見れば恐ろしいくらい(最大10度)にリアタイヤが曲がっている。とにかくホイールベース3m級のモデルとは思えないほどの扱いやすさである。
上等十二分の出来栄え
乗用メルセデスの核心はSUV&電動時代を迎えてもやっぱり「Eクラス」相当なんだな、と妙に感心しつつ、ノーズを首都高速の入り口に向けた。ものは試しにとドライブモードをスポーツに、サウンドをロアリングにそれぞれセットして空いた首都高をクルーズしてみた。もはやサイズも重量もまるで感じさせず、なんなら路面の存在すら希薄になって、走行と滑空の狭間で走っている。速度がますにつれライドコンフォートはEQS SUVにさらに近づいた。
この辺りの感覚はシャシーがエンジンに優っていた20世紀終盤のメルセデスベンツの「EクラスW124」と「SクラスW126」との関係に似ている。一般的にはEクラスですでに上等十二分で、それでも見栄が勝って人より上のモデルが欲しい、もしくは社会的な立場から最上のモデルを買うことが必然という人だけがエクストラコストを出してSクラスを買うというわけだ。
Vol.4へ続く
メルセデス・ベンツ EQE 350 4MATIC SUV ローンチエディション
全長:4,880mm 全幅:2,030mm 全高:1,670mm ホイールベース:3,030mm 車両重量:2,630kg 前後重量配分:前1,310kg、後1,320kg 乗車定員:5名 交流電力量消費率:208Wh/km(WLTCモード) 一充電走行距離:528km(WLTCモード) 最高出力:215kW(292ps) 最大トルク:765Nm フロントモーター最高出力:71kW(96ps)/2,682-16,031rpm フロントモーター最大トルク:251Nm/0-2,682rpm リヤモーター最高出力:144kW(196ps)/2,662-15,913rpm リヤモーター最大トルク:514Nm/0-2,662rpm バッテリー総電力量:89kWh モーター数:前1基、後1基 トランスミッション:電動パワートレイン eATS 駆動方式:AWD フロントサスペンション:4リンク式エアサスペンション リアサスペンション:マルチリンク式エアサスペンション フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク リアブレーキ:ベンチレーテッドディスク タイヤサイズ:前後265/40R21 最小回転半径:4.8m 荷室容量:520~1,675L 車両本体価格:13,697,000円
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みんなのコメント
ジャーナリストにも野暮ったいって言われるレクサスRXとかNX、クルマの性能もセンスも未来永劫追いつけませんね