変化は穏やか 991からの正常進化
ようこそ。今回は新型ポルシェ911、これは991型の後継となる992型だ。これは911の中で8世代目にあたる。多くが変わったが、わたしも先ほど受け取ったばかりなので一緒に見て行こう。
この小さなギアレバーを引いてドライブに入れる。8速PDKを自分で変速するためのパドルもついている。これは以前の7速に取って代わるものだが、MTも追って設定される。
これはワイドボディの911だが、この型からはすべてワイドボディになっている。3Lフラット6ツインターボにも変更が加えられ、ターボチャージャーが大型化したほか左右対称のインタークーラーはエンジン直後に移設され効率が高まった。
第一印象は911らしいものだ。キャビンも変わり、クラシック911のようにダッシュボードは幅広だが、デジタルディスプレイが多用されている。中心のレブカウンターはアナログだが、その左右はデジタルで自由に設定できる。
中央には大型のデジタルディスプレイがあるが、タッチスクリーンだけでなく物理ボタンも用意される。例えば温度調節は今まで通りボタンで操作する。いつものごとく変化は穏やかだ。新型シートによりヘッドルームは12mm拡大されているが、ボディサイズは先代とほぼ変わらない。
ホイールベースも変わらず短めだ。これはエンジン搭載位置によるもので、デザイン上の理由から全長は20mm拡大されているが、技術的な理由はない。ポルシェはこの世代にややアグレッシブなルックスを与えているが、全グレードがワイド化されたため911ターボのようにも見える。ターボはどんな見た目になるのだろうか。
オプション満載 すべてが優秀に
これは4Sであり、スポーツシャシーにより車高が10mm低くなり、アクティブ・リアステアも装備され現在用意されるシャシー関係のオプションはすべて揃っている。
この3Lユニットは991と同じく7500rpmまで回り、フラット6らしいサウンドだが、GT3ほど魅力的ではない。とても良い音でPDKの動作も素早い。もちろんツインクラッチ式はクラッチを一方からもう一方へと切り替えるだけなのでどれも速い。
ブレーキフィールもとても素晴らしく、ステアフィールも良く重さも適切で、コーナーでは徐々に重さが増します。最近はどのクルマも電動パワステだが、どんどん改善されこれは非常に良くできている。
ボディコントロールは良く、細かな動きも感じ取れる。これはレースカーでなくロードカーだが、攻め込んだ時のシャシーバランスも試してみよう。感触は非常に良好で、ニュートラルだ。
評価の一貫性のため先週久しぶりに991に乗ってみた。911Tで公道を走ったのだが、非常に911らしくフロントが軽くリアが落ち着いた印象であった。自動車のエンジニアらは911は理想的な動きをしていないともいう。前後でダンピングの周波数が異なるのだが、これは重量配分の偏りが原因だ。
普通の911に乗っていると、しばしば鼻先の向きを修正する必要が生じる。もちろんその一方でトラクションは莫大だ。しかしフロントのトレッドが拡大されたことによりリアエンジンらしさが薄まり、より前後の一体感があるのだ。
アクティブ・リアステアが装備されるほか、アクティブ・エンジンマウントも以前より硬くなり、より効果的で驚くほど優秀になっている。それでいて変わらずエキサイティングだ。
楽しさ維持して洗練度アップ
以前は911の世代交代で失われるものもあった。もちろん各要素は良くなっているのだが、水冷化されたりパワステや電動パワステに加え、ついにはターボ化もされた。これらの進歩は911を熟成させるとともに、その走りの興奮をわずかに削いでもいた。
しかしこの世代にはそれは当てはまらないようで、先代同様のエキサイティングさを維持しながらより洗練されている。
さて技術的な詳細についてもう少しお話ししたら、場所を公道に移し、その走りを試そう。根本的にはサーキットで素晴らしいクルマは公道でも楽しいスポーツカーであるはずだ。
992型はボディシェルにおけるアルミの割合が増え、先代の30%前後から60%程度になった。フロントのトレッドは46mm拡大され、リアは2駆モデルのみ39mm拡大されている。これはワイドボディ化のおかげだ。
標準の911としては初めて前後異径ホイールを履き、フロントに20インチ、リアに21インチとなる。そしてタイヤ幅は前245/後305だ。これがこの性能を支えている。
さて今度はカレラ2Sだ。カメラは回していないが、4Sでも公道を軽く走ってきた。四輪駆動で450psのSモデルが発売当初の唯一の選択肢だが、より低パワーのグレードやマニュアルが追って登場し、その後GT3RSなどが追加される。
ライバルを寄せ付けない圧倒的な仕上がり
先ほどまでは4Sだったので、次は2Sの話をしよう。4Sも非常に楽しめたが、わずかにステアリングの欠点があった。4WDシステムは最低5%をフロントに送るが、ウェットモードでは特に増加する。
アウディR8と同様ほとんど後輪駆動の4WDシステムは若干
ステアリングに影響を与える。これは911にとってその魅力の核心であり、2Sの方が楽しめるのだ。ステアリングの正確性がわずかに勝り、電動システムとしては素晴らしいラックだ。
重さもちょうど良く、オフセンターのフィールも適切だ。重さの増し方もリニアかつ一貫的で、ロードフィールを感じ取りやすい。本当に素晴らしい。
例えばはるか昔の初代911より楽しいクルマだろうか。ポルシェの基礎となるクルマであり、165幅のタイヤと15インチのホイールを履き、見た目も美しくコンパクトだ。
こんな道を走らせても限界も低く、マニュアル・ギアボックスですべてが気持ちよく、荷重移動が感じられる。これが本来の楽しさでもあり、単純さや軽さ、それにレスポンスの鋭さは今日の911のようなクルマではなかなか実現できない。
最新技術で固められた大きなクルマだからだ。これは2Sにも言えることだ。フロントがワイド化された今、残念ながらもう少し幅の狭かった911が恋しく感じる。
さて、各要素ごとにまとめてみると、ステアリングは正確かつレスポンシブで、フィーリングも良く、シャシーもうまくまとまって乗り心地も良く、ボディコントロールはスポーティなGTらしい仕上がりだ。インテリアはややタッチスクリーンが多めで、もう少しボタンが欲しいところだが、全体的には良くできた堅実なキャビンだ。
その他の部分は991をベースにより熟成させた911という印象だ。われわれは今後しっかりとグループテストを行う予定だが、おそらくこのクルマはクラス最高の地位につけるだろう。わたしには他のライバルとの比較テストで負ける姿が想像できない。それだけ圧倒的な仕上がりだ。
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