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ヒット確実のアジア限定高級ミニバン レクサスLMを日本で発売しない理由と導入の可能性

掲載 更新 78
ヒット確実のアジア限定高級ミニバン レクサスLMを日本で発売しない理由と導入の可能性

 トヨタは国や地域によって販売車種を選別している。これはトヨタのプレミアムブランドであるレクサスについても同様だ。

 そのレクサスで今注目を集めているのが、中国、香港、台湾をはじめとするアジア限定の高級ミニバンであるLMだ。少数ではあるが、並行輸入車として日本に上陸し、2000万円オーバーの高額ながら、入れば売れる状態が続いている。

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 ちなみに、中国で販売されるLMは、2.5LハイブリッドのLM300hで4人乗りと7人乗りをラインナップし、7人乗りは116万6000元、4人乗りは146万6000元ということで、1元=16円で換算すると、それぞれ日本円で1865万6000円、2345万6000円となる。

 ということで、並行輸入業者が暴利をむさぼっているわけではないのだ。

 この超高級ミニバンのレクサスLMが日本に導入されない理由、そして日本導入の可能性について考察する。

文/渡辺陽一郎
写真/LEXUS、TOYOTA、ベストカー編集部

【画像ギャラリー】中国では2000万円前後で販売中!! LSより高額なフラッグシップミニバンのLMは史上最高級ミニバン!!

■日本で販売していないLMの需要は高い

 最近はアルファードの販売が好調だ。

 2020年9/10/11月の登録台数は1万台を超えた。もともとアルファードは人気車だったが、取り扱い販売店はトヨペット店のみだった。それが2020年5月以降は、トヨタの全店が全車を扱う体制に移行して、アルファードの売れ行きも急増した。

よく売れているミニバン、アルファード。350万~500万円の売れ筋グレードが実用車のシエンタより売れていると言うのだから、驚異的だ

 そのいっぽうで姉妹車のヴェルファイアは売れ行きを落とし、1カ月あたり1000~1300台に留まる。基本的にはアルファードと同じクルマなのに、登録台数では大差を付けられた。

 それにしてもアルファードの売れ筋価格帯は350万~500万円に達する。この価格帯のクルマがフィットやシエンタよりも多く売れるのだから、物凄い人気ぶりだ。

 そしてアルファードの人気が高騰するなら、レクサスLMのニーズも同様に高いだろう。

 中国や香港で販売されるレクサスブランド(トヨタが展開する上級ブランド)のミニバンで、アルファードをベースに開発された。ただしミニバン大国とされる国内市場には投入されていない。

中国でのレクサス LSが日本円で1400万円相当からなのに対し、LMの販売価格は1800万円からだと言う。オセアニア地域市場向けでのフラッグシップは今後LMにする言うことなのだろうが、それにしても凄い値段だ

■LMはアルファードをベースにさらに高級化

 LMの外観は基本的にアルファードと同じだが、フロントマスクにはレクサスのスピンドルグリルが備わる。

 LSなどと同様の顔つきで、高級感を盛り上げる。全幅やホイールベース(前輪と後輪の間隔)はアルファードと同じだが、外観の変更で全長は90mmほど伸ばされて5mを超える。

 内装も豪華だ。3列シートの7人乗りに加えて、2列シートの4人乗りを用意したことも特徴となる。4人乗りの後席は、アルファードのエグゼクティブラウンジシートをさらに豪華にしたような造りだ。

 前後席の間にはパーテーションとキャビネットが装着され、リムジンのような雰囲気を感じさせる。

2列/4人乗り仕様。まさにショーファードリブン

3列/7人乗り仕様。こちらと比べて貰えば、4人乗り仕様の贅沢さをより感じて貰えると思う

 7人乗りの2列目は、アルファードのエグゼクティブパワーシートに準じた造りになり、シートアレンジも実用性を重視した。2種類のグレードを用途に応じて選べる。

 エンジンは販売する地域に応じて、直列4気筒2.5Lのハイブリッドと、V型6気筒の3.5Lを用意する。基本的なメカニズムはアルファードと同じだが、ショックアブソーバーなどは上級化されて快適性を向上させた。

■LM日本導入について販社の見解

 このLM300hやLM350を国内に導入する予定はないのか。改めてレクサスの販売店に尋ねた。

「2019年にLMが上海モーターショーで披露された時は、かなり話題になった。日本では販売しないのか、という問い合わせも多くいただいた。しかしメーカーは、トヨタブランド車をベースにしたレクサスは、日本では取り扱わないという。レクサスをトヨタから独立した特別な高級ブランドに育てたいからだ。このような事情もあり、LMを日本で販売する話は聞いていない」。

 それでもLMは、レクサスの販売店として欲しい車種ではないのか。

「最近はアルファードが絶好調に売れており、LMを国内で販売すれば、売れ行きを伸ばせると思う。特に今までのレクサスブランドには、ミニバンがなかった。LMがあれば新しいお客様を獲得できる。今の時代に新規開拓を行えるメリットは大きい」

 と、コメントした後に続けた。

過去トヨタは、ソアラからレクサス SC430へ機種転換した経験がある。もしLMを国内導入するなら、その知見を生かして戦略的に行うだろう

「ただしLMを唐突に加えることは考えにくい。例えばトヨタブランドのアルファードをフルモデルチェンジする時に、レクサスLMも加えて両車種を連携させるなど、国内へ導入するとしても何らかのブランド戦略に基づくだろう」。

■LMをはじめ新たなカテゴリーの車種が必要

 海外市場におけるトヨタ車は、1970年代に発生したオイルショックによるガソリン価格の高騰をきっかけに、「低燃費で耐久性の優れた安価な小型車」として普及した。従って高価格車を好調に売るには、トヨタとは異なる上級ブランドのレクサスが必要だった。

 しかし日本国内の事情は大きく異なる。1955年に発売された高級乗用車の初代クラウンが事実上の出発点だ。

 そこから1957年に初代コロナ、1961年には初代パブリカ、1966年に初代カローラという具合に、求めやすい価格帯の車種を充実させた。

 このようにトヨタの高級車が認知される日本では、レクサスは不要なブランドだったが、1990年代の後半以降はメルセデスベンツやBMWが車種を増やして好調に売れ始めた。

 海外のように高級車市場を攻める目的ではなく、国内におけるトヨタの高級車市場を守るために、レクサスを導入した経緯がある。だからレクサスの北米開業は1989年なのに、国内は2005年と遅れた。

 そして2020年にレクサスは日本国内で4万9059台を登録したが、メルセデスベンツは5万6999台と多い。メルセデスベンツは車種数が豊富なこともあり、登録台数はレクサスを1万台近く上回る。

 この状況を打開して日本のレクサスを成功させるには、ミニバンのLMのようなメルセデスベンツなどの欧州車とは違う国内市場に合ったカテゴリーが必要だ。

欧州勢の高級ミニバンは、日本国内だと700万~1000万円あたりに位置する。ここに1800万円のLMを投入する事で、一般的な日本車と欧州車の値段関係と立場が逆転することに

 ちなみに2005年にレクサスを日本で開業した当初は、「日本のレクサスは海外と違ってSUVなどを扱わない。後輪駆動車を中心にセダンとクーペを販売していく」と述べていた。

 ところが実際には売れ行きは伸び悩み、今ではレクサスの主力商品は前輪駆動のSUVになった。

 あくまでも市場の性格を重視して、日本のユーザーが欲しい商品を素直に導入すればいい。しばしばブランド戦略は、ユーザーニーズに従うのではなく、それを誘導する趣旨の内容が多いが、行き過ぎると本末転倒になって失敗に終わる。

■レクサスの発展に必要なもの

 前述のとおり国内市場は、レクサスではなくトヨタブランドの天下だ。クラウンなどのトヨタ車から、レクサスに乗り替えるユーザーも多い。そこを考えても、最上級ミニバンとなり得るレクサスLMが欲しい。

 今は実質的にアルファードが最上級ミニバンだから、さらに上級移行したいアルファードやヴェルファイアのユーザーは困ってしまうが、レクサスLMがあれば満足できる。

レクサスブランドでこの優雅な座席を見たら、アルファード/ヴェルファイアの上位存在として認めてしまいそうだ

「トヨタからレクサスへ」という強固な導線を築ければ、海外とは違う日本特有の効果的なブランド戦略や販売促進も可能になる。メルセデスベンツの売れ行きを上回ることもできるだろう。

 ただし「トヨタからレクサスへ」という国内独自の展開を確立させるには、トヨタ車と同様、日本のどこでもレクサスの購入を可能にする必要がある。

 それなのに今のレクサスの店舗展開は、輸入車が好調に売られる都市部が中心だ。しかも国内の店舗数は約170箇所で、トヨタ全店の約4600店舗に比べると大幅に少ない。1県に1店舗しかない地域も多い。

 レクサスが誰でも公平に購入できるトヨタブランドの安心感を身に付けることも、今後の大切な課題だ。レクサスの店舗は高コストだが、地域によっては、トヨタの販売店の中にレクサスコーナーを設けてもいいだろう。レクサスをもっと身近な存在にすべきだ。

 レクサスをさらに発展させるには、堅苦しい縛りを設けず、地域などのニーズに応じて柔軟に対応することが不可欠になる。LMの導入もその中に含まれる。

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