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レクサスの新型EV「RZ450e “Version L”」に乗ってみて感じた既視感の正体

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レクサスの新型EV「RZ450e “Version L”」に乗ってみて感じた既視感の正体

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 レクサスの新しいEV(電気自動車)「RZ450e」。前後2つのモーターで、4輪を駆動する。「バージョンL」というグレードで、都心から一般道と首都高速道路を乗り継ぎ、湘南を往復した。短いワインディングロードも走った。車両価格は880万円、オプションを含めた総価格は946万5500円(消費税込み)。舗装の良い平滑な路面では、クルマが重いことを有効に活用して、走りっぷりはフラットで安定感があって好ましかった。

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機械として優れているか?★★★3.0(★5つが満点)

 しかし、重たいバッテリーを積んでいるEVの半ば宿命でもあるのだが、段差や路面の凹凸を乗り越える際のショックがサスペンションで吸収し切れず、そのままこちらの身体に伝わってきていた。首都高速走行中の舗装の切り替え金具や、トヨタ東京本社への車道からの入り口の段差を極低速で乗り越える際にも、ビシッと頭の天辺まで突き抜けるような鋭いショックに見舞われた。

 首都高速道路で速度を上げていくと、車内が途端にうるさくなる。タイヤと路面の擦過音と風切り音が盛大に車内に入り込んでくる。トンネルは最悪で、他のクルマが上げる各種騒音が壁に反響し、それらも入ってきて、とても騒々しい。

 走行モードは、ノーマル、スポーツ、ECO、RANGE、カスタムと5つあり、それぞれパワートレイン、ステアリング、エアコンなどの制御が変わるが、走行感覚の違いは大きなものではなかった。前後輪への駆動力を配分するという「DIRECT-4」の走行状況による違いは感じ取れなかった。



 最小回転半径が5.6mと大きく、狭い場所では切り返しの多用が求められた。ちなみに、メルセデス・ベンツ「EQS450 SUV」はリアアクスルステアが付いていることもあって特別に小さな5.1mで、BMW「iX」は6.0m。「RZ」に追加予定のステア・バイ・ワイヤ機構ならば多少は小さくすることができるのだろうか?

 同じレクサスの「LS」やトヨタ「MIRAI」に搭載されている運転支援システム「Advanced Drive」が「RZ450e」にも搭載されていて、さっそく試してみたのだが「LS」や「MIRAI」の使いやすい先進的なレーンチェンジアシストシステムと同じものではなかった。名称は同じでも機能が異なるので、混乱させられる。

 その「RZ450e」のレーンチェンジシステムは作動条件が厳しく、それに合致した狭い範囲でしか作動しなかった。条件などの詳細を試乗後に確かめてみても、その通りだった。表示などのインターフェイスもわかりにくく、他社のシステムより使いにくい。羹に懲りて膾を吹いているのではないか。

 PDA(プロアクティブドライビングアシスト)では、前者との車間距離が縮まるとドライバーが何もしなくても減速が強められていたのは、これもまた優れた運転支援機能のひとつだが「RZ450e」では効きが弱かった。システムは同一ではないかもしれないが、メルセデス・ベンツ「EQS450 SUV」やBMW「iX」、アウディ「e-tronトロンGT」などのアダプティブ回生ブレーキ機能では、もっと強く効いて好ましかった。

 ステアリングホイールの左右スポーク上の十字キーで多くの操作が可能となった。今までのボタンの数が減り、集約されたのは大きな進化だ。ただし、直感的ではないので、購入直後に意識的に使って使い慣れておかないと、せっかくの便利な機能を使わなくなってしまうだろう。

商品として魅力的か?★★★3.0(★5つが満点)

 ドアを開けて驚かされたのは、インテリアだった。とてもセンスの良くまとまっている。エクステリア色のライトブルーメタリックと合わせて、インテリアの革や樹脂などのパーツのほとんどがさまざまな色調のブルーとオフホワイトの2色だけでまとめられている。



シフトダイヤル周辺のパネルの木目柄も茶色系ではなく、ネイビーの木目と徹底している。シートやドア内張に用いられている革も、東レのウルトラスエードを使ってパーフォレーション(孔)の有無を使い分け、アクセントとして縁取りにネイビーの表革を配したり、バランスもセンスも抜群。色数を抑え、素材に適した大きさで、ふさわしい場所に用いるという、簡単な大原則が守られていないクルマがほとんどなのだ。特に日本車。だが、これは例外中の例外。

 後席の足元が広いのも大きな美点だ。センタートンネルがないから床はフラットで、前席の背もたれまでの間隔も長い。センターモニター画面とメーターパネルの表示を見較べると、クオリティーの違いが一目瞭然なのが惜しい。メーターパネルは面積が小さいにもかかわらず、画素数が粗く、ひと昔前の感じに見える。センターモニター画面が鮮やかなので、余計に強くそれを感じる。

 また、運転支援機能の作動状況の表示が3つにも重複してしまっている。ひとつはメーターダイヤル右隣の小さなアイコンが緑に点灯すると実効していることを示している。もうひとつは、メーター下半分の各種表示を十字キーで切り替えると、大きく作動状況が表示される。さらに、ヘッドアップディスプレイに簡易的に表示されるから3つ。

 インターフェイスに於いては混乱していて、スッキリしていない。増築に増築を重ね迷路化してしまった温泉旅館みたいだ。指摘する人が誰もいなかったのだろうか?「RZ450e」はEVであり、多機能であり、新しい価値と世界観を持っているはずのに、それらを商品としてうまく表現し切れていない。エンジン車時代の感覚と価値観に囚われ過ぎてしまっているようにも思える。

 エクステリアデザインから始まり、走りや細部にいたるまで、“どこかで見た感じ”が付きまとっている。良くも悪くも予想通りで、既視感に捉われる。せっかくのレクサスのEVなのだから、“今まで見たこともなかった”という驚きも感じさせてもらいたかった。



■関連情報
https://lexus.jp/models/rz/

取材・文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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