この記事をまとめると
■ポルシェコレクターとして有名なマグナス・ウォーカーとはどんな人物かを紹介
日本にもパトカーが存在! 「貧乏人の911」なんて揶揄された「ポルシェ912」って何もの?
■アパレルで大成功をしてポルシェをコレクション&カスタマイズ
■自身のセンスと正統なレーシングカスタムをミックスしたアウトローな車両がクール
カルトな人気を誇るポルシェコレクター
令和の世にあって、法や秩序の外、いわゆるアウトローを気取るのはトレンドとは言い難いもの。ですが、クルマ好きならマグナス・ウォーカーのようなアウトローには大いに憧れるかもしれません。なにしろ、一代で膨大な数のポルシェ・コレクションを築き上げたばかりか、その生き様は映画にまでなっています。腰まで伸びたドレッドヘア、クラッシュなのか単に破けただけか判別しづらいデニム、それでいて自らカスタムした911を象ったナイキを履きこなす男。マグナス・ウォーカーは、そんな新たな世代のコレクターであり、次世代のアウトローに違いありません。
アメリカでこそ、コレクターやファッションアイコンとして超有名なマグナス・ウォーカーですが、日本では一部のポルシェマニアくらいしか彼の名を知る方はいないはず。1967年、ウォーカーはイギリスの地方都市、シェフィールドの中産階級の家庭に生まれたそうです。父親はクルマのコレクターどころか「トラクターくらいしか乗らなかった」そうで、とてもポルシェと縁があるとは思えない家庭環境に育ったようです。
が、少年時代にアールズコートで開催された自動車ショーで、初めてポルシェ911を目にして「いつかは、これに乗りたい」と心に決めたのでした。そればかりか、彼はポルシェに「仕事が欲しい」と手紙まで書いたのですが、シュツットガルトからは「学校出てからまたおいで」との返事。これにヘソを曲げたのか、ウォーカーは学校を中退してパンクロックのバンドを結成するといういかにもイギリスの不良らしいアウトローっぷりを発揮したのです。
そして、時が下って18歳になると単身渡米。はじめはデトロイトでサマーキャンプのインストラクターとして働き始めたのですが、キャンプ終了と同時にロサンぜルスにそそくさと移住。フリマなどで仕入れた古着を、母親仕込みの技術でもって自らカスタムという商売が大繁盛し、ついにはシリアスというブランドまで立ち上げてしまうほどに。で、このアパレルブランドは、マドンナやアリス・クーパー、ブルース・ウィリスといったセレブたちに愛され、大成功を納めることに。
豊富な資金を手にすると、ウォーカーは新たなビジネス「ロケーションサービス」に進出することに。ロスの郊外に広大な敷地を購入して、洒落た倉庫に改造するとハリウッドの映画関係者やテレビ番組プロデューサーがひっきりなしに仕事が入るという、これまたウハウハだったようです。
そんなウォーカーが初めて911を買ったのは1992年のこと。7500ドルで手に入れた夢の1台は1974年式の911Tで、「自分にとって最高の買い物だった」と、いまでも感慨に耽るのだそうです。それからコレクションは増える一方で、40台以上のポルシェを手に入れて、あるものは念入りなレストレーションを施し、またあるものは自身のセンスを反映したカスタムを施すなど、クルマ好きなら羨ましい限りかと。また、集めるだけでなくガシガシ乗るのもウォーカーの特徴で、ストリートはもちろん、サーキットでレースに興じることもしばしば。
すると、今度はウォーカー自身がテレビやメディアから注目されることになり、ご存じジェイ・レノのショーをはじめ、数々の番組にゲストとして招かれ始めたのです。それまでのコレクター像はどちらかといえばジェントルメンでしたから、ウォーカーのキャラはとても新鮮に映ったはず。
センスあるカスタムでポルシェのアウトロースタイルを創造
アーバン・アウトローのタイトルで、ウォーカー自身を主人公とした短編映画が製作されたのもこの時期(2012年)で、彼の自由奔放な半生とポルシェのコレクションを活写した作品は、さまざまな映画祭で高い評価を得たようです。また、この後もテレビ特番やクルマ雑誌など、ウォーカーはメディアから引っ張りこ。
やはり、アウトローな生き方は一定の人気があるようで、ついにはウォーカーを主役に据えたテレビゲーム(Need for speed)まで発売されることに。ここに登場するカスタムマシンこそ、のちにナイキとコラボレーションすることになるゼッケン277の911Tに他なりません。911Rをモチーフにしたと思われるボディの軽量化をはじめ、エンジンもカリカリにチューニングされているとのこと。
ナイキのスニーカー「ダンク」は、この277のゼッケンやカラーリングを再現したモデルで、プレミア化したことは言うまでもありません。
アウトローなウォーカーですが、ことカスタムに関してはしっかりセオリーや時代考証をわきまえているのが特徴かもしれません。西海岸の草レース風や、イギリス人らしくプライベートファクトリーらしいテイストを盛り込むなど、自身のセンスと正統なレーシングカスタムが程よくミックスされており、誰もが好感を抱くはず。
筆者は以前から彼のSNSをフォローしていたのですが、アウトローなルックスながら乗っているカスタムマシンは「センスいい!」と感心することしきり。
いまでは、ビジネスの最前線からは退き、ひたすらに自らの人生を謳歌しているとのことですが、最後にひとつアーバン・アウトローからの名台詞をご紹介しておきましょう。
「もしも、あなたがルールや常識に囚われない人物なら、何ひとつ不可能はない」
成功している人の言葉は、やはり響くものがありますね!
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