3代目ルノー メガーヌR.S.のステアリングを実際に握るチャンスが来た。クローズドコースで開発ドライバーのロラン・ウルゴン氏の助手席を体験し、その比類なき走行性能に驚かされた。「いったいこの走りはどうやって作り出されているのだろうか」そして、投入された武器とその制御レベルの高さを知り、いよいよ、自らドライブする機会を得た。
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ステージは箱根の一般道。ワインディングを存分に楽しめる場所だ。開発ドライバーのウルゴン氏も、箱根周辺は走りまくったという話を聞いている。日本の道路はアンジュレーションが多く、高速道路や橋ではその継ぎ目の衝撃が大きいことも熟知しているという。そうした日本の道路も踏まえ、楽しく走れるサスペンションに仕上げてきたのが3代目メガーヌ ルノー・スポールだ。
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ルノー・スポール専用デザイン
スペックを確認しよう。1.8Lガソリンエンジンにターボを搭載し、6速ツインクラッチEDCを搭載。そしてHCCダンパーと4コントロールというリヤ操舵を搭載したのがメガーヌR.S.だ。詳細はvol.2へ。
このルノー・スポールは通常の市販モデル、メガーヌGTなどとは一線を画し、トレッドやボディサイズもアップされた走りを楽しむラインアップで構成されている。かつてはルノー・スポールのエントリーグレードがシャシー・スポール、その上がシャシー・カップ、そしてトップグレードにトロフィーというヒエラルキーで構成し、メガーヌだけでなく、ルーテシアも同様のラインアップを展開している。しかし、現在はそのヒエラルキーを国内には持ち込まず、ルノー・スポールとして発売されている。
エクステリアは、メガーヌGTと比較して、フロントトレッドが+45mm、リヤが+25mm拡大しており、ボディサイズでみれば、フロントが+60mm、リヤが+45mm広げられている。そのため全体的にワイドで低重心の印象があり、また個性的なフロントマスクとチェッカーフラッグをイメージさせるドライビングランプはR.S.ビジョンの呼称がある。そして、3Dハニカムパターンのメッシュグリルも特徴的だ。
ボディサイズを確認すると全長4410mm、全幅1875mm、全高1435mm、ホイールベースは2670mmで、Cセグメントサイズにカテゴライズされる大きさだ。ライバルはゴルフGTIやシビック タイプRといったあたりだ。
ボディサイドでは19インチの大径タイヤが目を引く。そしてフロントフェンダーに組み込んだスリットはフロントフェンダー内の空気の掃き出し整流している。リヤは新設計のルーフスポーイラーを装備し、バンパーコーナーに設置したバーチカルスリットはワイド感を強調するだけではなく、空力特性にも貢献しているという。
そして歴代メガーヌ ルノー・スポールのシンボルとも言うべきセンターマフラーも装備、ディフューザーとともにスパルタンな印象を与えるデザインだ。
インテリアではバケットタイプのヘッドレスト一体型シートが目を引く。R.S.のロゴ刺繍やシートエッジ、シフトブーツノブ、センターアームレストには赤いステッチが施され、スポーティ感が増している。
試乗レポート
マルチセンス(走行モード)は主にニュートラル(ノーマル)とスポーツで走行した。レースモードはESCが完全にオフになる仕様で、サーキットに限られたモードというわけだ。さて、走り出して最初の印象は、19インチの大径サイズでありながら一般道でもその乗り心地の良さに驚かされた。やはりタイヤサイズの大きさと扁平率を見ると硬そうな印象を受けるが、全くその心配はなかった。ちなみにタイヤサイズは245/35R-19である。
試乗ルートは箱根でもやや道幅が狭く、アンジュレーションのきついルートを選択した。ルートはタイトコーナーも多く、そして路面のねじれも多いので、普段は走行しない場所だ。しかし、敢えてこのルートを選択した理由は、修善寺でのテスト走行を体験し、アンジュレーションのいなし方を現実の路面ではどうなのか、試したかったからだ。
車速も2速と3速を使う程度で速度域も低い。普通のクルマでは揺れが激しく厳しい道なのだ。だが、このメガーヌR.S.はテストコースで感じたことがそのまま再現されていた。ロールを感じることなくコーナーをクリアしていく。そして4コントロールの威力である小回りが良く効き、ステアリング舵角も通常より少なくても曲がり切れる。
そしてなによりも、路面のねじれを感じさせることなく、何事もないようにフラットになめらかに走り抜けていくのだ。このロールがなく、アンジュレーションを感じさせないのは、まさにHCCのサスペンションと4コントロールの威力が存分に発揮されているということだ。
そしてステージを変え、ハイスピードで走れるワインディングに移してみる。ここでもロールの少なさに驚かされた。旋回時の剛性感やしっかり感をはっきりと感じさせながらコーナーをクリアする。このルートには、いつも使う評価コーナーがいくつかある。特に下りの左コーナーの途中にアンジュレーションがあるコーナーはクルマの挙動が分かりやすいからだ。しかし、そこも路面のねじれなど全くないように走り抜けてしまうのだ。国産プレミアムブランドのFR車で走行したときには、コンプライアンスステア的な動きが出てしまうような場所にも関わらずだ。
それほど驚異的なクルマの動きをしている。いや、クルマが動いているのではなく、サスペンションが動き、ボディは安定していると伝えたほうが正確だろう。
実は、この4コントロールはメガーヌGTにも搭載され、リヤの舵角も全く同じ設定の同位相1度、逆位相2.7度の設定だ。だが、ルノー・スポールではリヤ操舵されている感じが薄い。言い換えれば自然な動きとして感じるのだ。メガーヌGTでは明らかに後輪が操舵されていることに気づき、乗りはじめは違和感として体感する。が、次第に慣れていく行程があった。だが、このR.S.はその違和感が全く起きない。
説明によれば、舵角自体は同じでも制御プログラムが異なり、全く別のアルゴリズムで制御されているからだということだ。言い換えればより人間の感性に寄り添った制御ができているということなのだろう。
従って、車両の安定感、旋回性には抜群の信頼性と安心感があり、自然と速度域も高くなってしまう。それでも軽快にいつまででもアクセルが踏み続けられるのではないかと勘違いさせるほどのスタビリティなのだ。そして、エンジンもミッションもバランスがよく、箱根の厳しい上り坂をパワー不足と感じさせることなく、力強く駆け上る。
特にスポーツモードにすればDモードでも自動でブリッピングしながらシフトダウンをし、心地よいエンジンサウンドを室内で聴くことができる。
このレベルまで来るとますます、車両の限界を知りたくなるもので、ぜひサーキットで試乗してみたいという衝動に駆られるスポーツモデルだったのだ。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
価格
・車両価格:メガーヌ ルノー・スポール 440万円(税込)
スペック
・全長:4410mm
・全幅:1875mm
・全高:1435mm
・ホイールベース:2670mm
・エンジン:M5P型1.8L直噴ターボ
・出力:279ps(205kW)/390NM
・ミッション:6速EDC(DCT)
・フロントサスペンション:ダブル アクシス ストラット
・リヤサスペンション:トーションビーム
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