対面したとき、まずはその巨体に驚かされる。実際に乗り込むと、その優雅さや上質さに2回目の驚きを感じる。走り出すと、滑らかな乗り味だがこれは想定内と胸を撫で下ろすが、アクセルを踏み込みコーナーへ向けてステアリングを切り込むと、この体躯で“BMWらしさ”が顔を出し、3度目の驚きに見舞われる。そう、これがラグジャリーの先を行くフラッグシップSUVだ。
どのシートに座っても上質感を感じる
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BMWのSUVはX1、X3、X5を基本に、それぞれの派生モデルとしてクーペシルエットを備えるX2、X4、X6を展開してきた。だが、新たに投入したX7はBMW初の最上級ラグジャリーSUVだ。このカテゴリーは、ランドローバーのレンジローバーが主役となる。キャデラックのエスカレードも、比類なき存在感を放つアメリカンSUVの王者だ。
X7は、そうした競合モデルと肩を並べても威風堂々ぶりでは引けを取らない。縦方向のバーを強調した超大型キドニーグリルがギラリと輝きつつも薄型ヘッドライトのクールな眼差しが、LCIを経た7シリーズと同様に新世代にBMWにふさわしい最上級ラグジャリーを表現している。
ボディサイズは全長と全幅が7シリーズやレンジローバーよりも大きく、全高はエスカレードよりも低い。それだけに、X7に後方から迫られたら押し出される空気で自分のクルマが前に進みそうなほどの威圧感がルームミラー越しに伝わってくるはずだ。
インテリアも、まさに最上級ラグジャリーだ。肌触りが柔らかなメリノ・レザーで覆われ、試乗車はオプションでカラーがアイボリー/ブルーとなり木目が美しいファイン・ウッドとコーディネートされていたのでなおさらだ。
しかも、試乗車の2列目席はキャプテンシートとなり3列目席を含め6人乗り仕様だ。ボディ全長は5165mmに達するため、室内スペースは広くて当然だが余裕の度合いは競合モデルでも最高レベルだ。なぜかといえば、X7はホイールベースが全長で30mm大きいエスカレードよりも65mmも長いのだ。つまりサイズ頼り切りではなくスペース効率が高いわけだ。
実際に、男性としては大柄な筆者が前席で最適な運転姿勢を選んでから直後の2列目席に移り、スライド調整により5シリーズくらいの足下スペース確保。そして、3列目席に乗り込んでも膝が2列目席の背もたれに触れることがなくフル6(7)シーターといえるスペースが確保されている。ただ、3列目席は床に対する座面高が低く膝裏が浮いてしまうため、くつろぎ感を得るまでには至らない。
とはいうものの、走りの快適性は文句なしのレベルに達する。2015年に7シリーズへの投入で採用が開始されたFR用プラットフォームは完成度に磨きをかけ、ノイズを見事に支配している。ザラついた路面通過時のゴーッというロードノイズは音量が最小限に抑えられ、発生源が床のずっと下にあるように感じるので響くこともない。路面段差通過時のドスッというインパクトノイズも、意識の外に置くことができる。それは、前席だけではなく2列目席でも同じだ。室内スペースの広さも、ノイズの抑制に効果をもたらしていると考えて間違いない。
唯一気になるのは、2列目席に移るとタイヤのグルーブ内部の空気振動により発生するビョーッというパターンノイズが少しだけ耳に届くことがあるくらいだ。それも、あえて聞き比べれば気付く程度の違いでしかない。
最上位SUVであっても「走り」へと誘いかける
X7は、乗り心地のしなやかさにも驚かされる。4輪エアサスペンションを標準装備し、オプションのエグゼクティブ・ドライブ・プロフェッショナルを組み合わせていたためもある。カメラにより路面状態を検出し、ダンパーの減衰力などを最適制御する機能だ。
路面を横断する大きなうねり通過時は、サスペンションは入力をフワッといなしてくれる。そのままでは縦揺れが残りそうだが、次の瞬間にはスッとボディの動きを抑え込んでしまう。衝撃といえるような強い入力に対しても、最終的にはボディが振動を減衰する。
エグゼクティブ・ドライブ・プロフェッショナルにはスタビライザーの機能を可変制御するアクティブ・スタビライザーが含まれるので、直進状態では効きを最小化にして左右輪の干渉を回避。片輪ずつ不連続に入力があっても、ボディの横揺れが発生しにくい。座面が高いだけに横揺れの影響が大きくなりがちだが、そうした不快感とは無縁でいられる。こうした快適性は、7シリーズを超えBMWでは史上最高レベルだ。
それでいて、スポーティな一面も備える。ダンパーやスタビライザーの可変制御により、コーナー進入時は手応えがスッキリと軽めなステアリングを切り込むのと向きの変わり具合が完全に一致する正確な応答性を実現。その際のロール感はほとんどないが、サスペンションのしなやかなストロークは保たれたままなのでコーナリング中に荒れた路面を通過しても余計な姿勢変化は起きない。
さすがに、コーナー脱出時に早めのタイミングでアクセルを踏み込むと狙った走行ラインよりも外側にふくらむことはある。ただ、挙動の変化が分かりやすいため自然な感覚でアクセルを戻して、少しステアリングを切り足せば元の走行ラインに復帰可能だ。アクセル操作を誤らなければ、コーナーが連続する場面でステアリングを切り返しても反応が遅れることがない。2440kgの車重を忘れるほど、コーナリングは軽やかだ。
xDrive35dが積む3Lの直列6気筒ターボディーゼルも、スポーティに走りたいという期待に応えてくれる。メーター表示をトルクモニターに切り替えると2000rpmを超えるとアクセルを踏み込めば即座に最大トルクの620Nmが発揮されることが分かり、迫力ある加速を開始。そのままアクセルを踏み続ければ265psを発揮する4000rpmを超えてもパワーの頭打ち感がなく、ガソリンエンジンのような快音を響かせながら5000rpmに迫る勢いで伸びやかに加速する。
そこまでエンジンを引っ張らなくても、最大トルクの発生回転数がやや高めなので日常的な場面でアクセルを踏み足す程度でも力強さの盛り上がりが実感できる。それだけに、場面が許せば自らの意思でスポーティな走りが楽しみたくなる。X7でも、BMWらしく巧みな誘いかけがあるのだ。
その一方で、周囲の流れに合わせて走る場面ならアクセルの踏み加減はペダルに足を乗せる程度で十分だ。トルクモニターによると1500rpmで300Nmを超えているので、力強さがあふれ出すほどではないにせよ余裕は確かめられる。高速道路では、100km/hで8速1300rpmしか回っていない。エンジンは優れた静粛性を保ち、大柄なボディが空気の壁を盛大に切り裂いている割には風切り音も気にならない。
BMWのXモデルでは最後発にして頂点に位置づけられるX7、競合モデルに対するアドバンテージも予想以上の大きかった。X7と立場を脅かすのは、もはやロールス・ロイスのカリナンくらいということになりそうだ。
【Specification】BMW X7 xDrive 35d DESIGN PURE EXCELLENCE/BMW X7 xドライブ 35d デザイン・ピュア・エクセレンス
■全長×全幅×全高=5165×2000×1835mm
■ホイールベース=3105mm
■トレッド=前1680、後1705mm
■車両重量=2440kg
■乗車定員=7(6)名
■エンジン形式/種類=B57D30A/直6DOHC24V+ツインターボ
■内径×行径=84.0×90.0mm
■総排気量=1499cc
■圧縮比=16.5
■最高出力=265ps(195kw)/4000rpm
■最大トルク=620Nm(63.2kg-m) /2000-2500rpm
■燃料タンク容量=80L(軽油)
■燃費(WLTC)=11.4km/L
■トランスミッショッン形式=8速AT
■サスペンション形式=前Wウイッシュボーン/エア、後インテグラルアーム/エア
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前285/45R21、後285/45R21
■車両本体価格(税込)=12,290,000円
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最高出力=265ps(195kw)/4000rpm
最大トルク=620Nm(63.2kg-m) /2000-2500rpm
エンジンが素晴らしい