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【かつての「軽の王者」なぜ陥落!?】ワゴンR/ムーヴ王座奪還に必要なのは?

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【かつての「軽の王者」なぜ陥落!?】ワゴンR/ムーヴ王座奪還に必要なのは?

 軽自動車が多く愛用される日本市場だが、いまや主流はスーパーハイトワゴン。特にホンダN-BOXの大躍進はご存知の通りだ。

 しかしひと昔前を見てみれば軽自動車の主役は元祖ハイトワゴンとも言えるワゴンRとムーヴであった。スズキとダイハツの開発競争が大きく軽自動車を前進させたと思うが、今日ではこの2車はあまり元気がない。

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 とはいえ、コンパクトなこともあり燃費や乗り味もスーパーハイトワゴンよりも優位な2車。しかしなぜここまで売れていないのかはやや疑問。

 時代のニーズはあれどワゴンRとムーヴはまた輝きを取り戻せるはず!! いったいどうすればいいのでしょうか?

文:渡辺陽一郎/写真:スズキ、ダイハツ

■ワゴンRがトップ10落ちの現状をどう見るか?


 今は軽自動車の販売が好調だ。2019年上半期(1~6月)のデータを見ると、日本で売られた乗用車の35%が軽自動車であった。


 さらに軽乗用車の内訳を見ると、N-BOX、タント、スペーシアなど、全高が1700mmを超えるスライドドアを備えた車種が48%に達する。

現行型ワゴンR(スティングレー)。実用性も高いのだがN-BOXなどとの比較に持ち込まれると厳しいようだ

 次に多いのは、ワゴンR、ムーヴ、N-WGN、デイズなど全高が1600~1700mmの車種で、軽乗用車の37%を占める。従って軽乗用車の85%が、全高を1600mm以上に設定した背の高い車種になった。

 そして全高が1700mmを超えるスライドドアを備えた軽乗用車は、車種数が比較的少ない。

 その割に販売比率が高いから、主力車種の売れ行きは絶好調だ。そこで2019年上半期の国内販売ランキングベスト10車を見ると、以下のような内容になる。

【2019年上半期の国内販売ランキングベスト10車(★は軽自動車)】
★1位:N-BOX(少数のスラッシュを含む)
★2位:スペーシア
★3位:タント
★4位:デイズ&デイズルークス
・5位:プリウス(少数のPHVとαを含む)
★6位:ムーヴ&ムーヴキャンバス
・7位:ノート
・8位:アクア
★9位:ミライース&ミラトコット
・10位:セレナ

 ベスト10車のランキングを見ると、上位を軽自動車が独占している。

 4位のデイズ&デイズルークスは、実質的に2車種の合計だから差し引く必要があるが、1~3位はすべて全高が1700mmを超えるスライドドアを備えた車種だ。

 ここで気付くのは、背の高い軽自動車の老舗といえるワゴンRが入っていないこと。ワゴンRはセレナに続く売れ行きで11位となった。

現行型ムーヴも苦戦中。やはり全高を上げるしかないのか?

 また6位のムーヴ&ムーヴキャンバスも、売れ筋は後席にスライドドアを備えたムーヴキャンバスで、ベーシックなムーヴはあまり売れていない。

 つまり全高が1600~1700mmのワゴンR、ムーヴ、デイズ、N-WGNは、全般的に販売が低調だ。

 ちなみにN-BOXの2019年上半期における1か月平均販売台数は、2万1872台であった。ワゴンRは8563台だからN-BOXの40%にとどまる。

 なぜN-BOX、スペーシア、タントのような軽自動車が絶好調に売れて、ワゴンRやムーヴなど全高が1600~1700mmの車種は伸び悩むのか。

■全高1700mm以上のハイト系は子育て世代から人気


 全高1700mm以上の軽自動車が好調に売れる一番の理由は、比較的若い子育て世代のユーザーに適しているからだ。

 例えば子供を抱え、買い物袋も持って乗車する時は、電動で開閉できて開口部の上下寸法にも余裕のあるスライドドアが便利に使える。

スズキスペーシアはN-BOXに次ぐ売れ行き。こうなるとワゴンRの存在価値がなくなってしまうように思えるが……

 車内に入った後も、天井が高く後席の足元空間も広いから、子供をチャイルドシートに座らせる作業がしやすい。

 後席を前側に寄せると車内の最後部にベビーカーも収まる。後席を畳めば大人用の自転車を積むことも可能だ。収納設備も豊富で、子育て世代に適した機能を満載した。

 そしてこれらの機能は、子育てを終えて3列シートが不要になり、ミニバンから小さなクルマに乗り替えるユーザーにも馴染みやすい。

 ミニバンの開放的な室内、開閉時にドアパネルが外側へ張り出さないスライドドアの使い勝手に慣れると、背の低いセダンやハッチバックは窮屈で不便に感じてしまう。

 つまり背の高いスライドドアを備えた軽自動車は、小さくても便利な「2列シートのミニバン」なわけだ。

 中高年齢層が乗り降りする時も都合が良い。シートの着座位置が適度に高く、乗降時の腰の移動量が少ない。

 ドアの開口部にも余裕があるから、頭を下げずに乗降できる。このように全高が1700mmを超えるスライドドアを備えた軽自動車は、さまざまなユーザーにとって使いやすい。

 しかも「軽自動車は小さくて狭い」という昔ながらの先入観を持ったユーザーが見ると、新鮮な驚きがある。

 「今の軽自動車はこんなに進化したのか!」と感心して、広い車内が必要か否かにかかわらず、購買意欲が一気に沸き上がる。

 販売店によると「N-BOX、タント、スペーシアの3車種は、機能、価格、さらに値引きまで徹底的に比べて選ばれる」という。

 ライバル同士の競争が激化して、標準ボディの売れ筋グレードは、140~150万円の狭い価格帯に集中している。

 安全面を中心に、装備を充実させながら価格上昇を最小限度に抑えるモデルチェンジを繰り返した結果、「これ以上は安くでません!」という140~150万円の限界に落ち着いた。

 そうなるとワゴンRやムーヴとの価格差も縮まり、N-BOXやタントの価格は、左側スライドドアの電動機能まで含めて、実質15万円程度の上乗せに収まる。そうなるとN-BOXやタントに買い得感が生じるわけだ。

 販売店では「背の高いスライドドアを装着した軽自動車は、背の低い車種よりも高値で売却できます」といったアドバイスもするから、ますますN-BOXやタントが売れ筋になってきた。

 これに比べると、ワゴンRやムーヴは機能が地味だ。外観も背の高いN-BOXやタントほど立派には見えない。そこで売れ行きを下げたが、ワゴンRやムーヴには、N-BOXやタントとは違うメリットが備わっている。

背の高さは積載性や居住性の高さにもつながるが同時にふらつきなど、ネガティブな面も持っている(写真はスズキスペーシアカスタム)

 まずワゴンRやムーヴは、N-BOXやタントに比べて全高が100~150mm低い。重いスライドドアと電動開閉機能なども備えないから、車両重量は共通のプラットフォームを使う車種同士で比べて40~50kgは軽い。

 背が低く軽量であれば、空気抵抗の低減もあり、動力性能と燃費に良い影響を与える。重心を下げられるから、走行安定性も向上する。操舵感を鈍く抑えて安定性を確保する必要も薄れ、自然な運転感覚を得やすい。

 さらに前述のように価格が15万円前後安く、自動車取得税も抑えられる。下取査定はN-BOXやタントが有利だが、長く使うユーザーにとってはあまり関係がない。

■実質的な金額差は少なくてもあえてワゴンR/ムーヴを選ぶ理由

 このようにN-BOXやタントのような全高が1700mmを超えるスライドドアを備えた軽自動車は、居住性/積載性/使い勝手が優れている代わりに、動力性能/走行安定性/燃費/価格では不利になりやすい。

 逆にワゴンRやムーヴは、走りと燃費がメリットになる。

 そして全高が1700mm以下のワゴンRやムーヴでも、車内は十分に広い。例えば身長170cmの大人4名が乗車した場合、後席に座る乗員の膝先空間は、ワゴンRが握りコブシ3つ半、ムーヴも3つ分を確保する。

 Lサイズセダンの後席が握りコブシ2つ半程度だから、全高が1700mm以下の軽自動車もゆったりと座れる。

スーパーハイト系よりも背が低いからといって狭いというわけではない。燃費などでも有利なムーヴやワゴンRがピッタリなユーザー層も多いはず(画像はムーヴ)


 そして全高は低めといっても1600mmは上まわるから、頭上空間も広く、後席を畳めば大人用の自転車は無理でも十分な荷物を積める。

 従って3~4名で乗車する一般的なファミリーユースなら、実用的にはワゴンRやムーヴで不満を感じない。

 そこで軽自動車が欲しい時は、まず全高が1600~1700mmのワゴンR、ムーヴ、デイズ、N-WGNなどを検討する。そしてさらに広い居住空間や荷室、スライドドアが欲しいと思ったら、N-BOX、タント、スペーシアなどをチェックすると良い。

 今後の商品開発では、全高が1600~1700mmに位置する軽自動車の価値を改めて見直すことも考えたい。

 参考になるのはムーヴキャンバスのヒットだ。全高は1665mmだから、車名が示すようにムーヴと同等だが、フロントマスクなどを柔和な雰囲気に仕上げてリヤゲートは角度を若干寝かせた。

 後席側にスライドドアを装着して、独特の質感と見栄え、優れた乗降性を両立させている。N-BOXやタントは広さを徹底追求するから、天井の高さやピラー(柱)の角度が予め決まるが、ワゴンRやムーヴにはデザインの自由度がある。このメリットを生かしたい。


ムーヴキャンバスの成功はダイハツにとっても大きな功績。ワゴンRもムーヴも「見せ方」で大きく変わるのだ

 いい換えれば発想の転換だ。以前はワゴンRやムーヴが軽自動車の基本で、スペーシアやタントはさらに背の高い派生車種だったが、今は少なくとも販売面では後者が主流だ。

 主流と派生車の立場が入れ替わったから、ワゴンRやムーヴは従来とは違う独自の価値を追求せねばならない。

 ダイハツとしては、そのひとつがムーヴキャンバスだろう。スズキもワゴンRをベースにしたSUVのハスラーを用意する。

 それでもワゴンRとムーヴが、社用車&レンタカー向けという現実は寂しい。NーWGNが、ほかのホンダ車に先駆けてホンダセンシング(緊急自動ブレーキと運転支援機能)の自転車検知機能を採用したように、ワゴンRやムーヴにも先進技術を与えたい。

 安全装備は全高が1600~1700mmの車種でまず採用して、続いてN-BOXやタントに広めると良いだろう。

 N-BOXやタントがミニバン的な価値観なら、ワゴンRとムーヴには、上質感や先進技術を高めるセダン的な魅力を与えたい。そうすれば軽自動車の新たな選択肢に成長できるだろう。

★   ★   ★

【編集部補足】

 ワゴンR、そしてムーヴが属するハイトワゴン市場にはホンダがN-BOXの弟分でもあるN-WGNを2019年7月に投入した。

新型N-WGN。この市場を再び盛り上げてくれる存在になりそうだ

 ホンダがこの市場にあえての新型車を投入したこと、そしてN-BOXと同等のクオリティを確保していそうな現状をみれば、再びこの市場が賑やかになる可能性は高い。

 ムーヴとワゴンRの一層の進化も期待できるはずだ。

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