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若者は「セダンがキモイ」 クルマの基本形が変わった日本 続々登場する新型国産セダンで潮流変わる?

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若者は「セダンがキモイ」 クルマの基本形が変わった日本 続々登場する新型国産セダンで潮流変わる?

■日本国内でセダン復権なるか?

 最近は、日本国内で発売される新型車の数が減っています。各メーカーともに、海外市場を優先しているためです。今は日本車メーカーでも、世界生産台数の80%以上を海外で売るため、日本の優先順位が下がりました。

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 クルマのカテゴリ別に見ると、日本国内で売られるクルマの36%が軽自動車です。コンパクトカーも堅調で、SUVも伸びていますから、かつて人気の高かったセダンは販売比率を下げています。

 この状況を考えると、2018年は、セダンの新型車が珍しく多かったです。トヨタは「クラウン」と「センチュリー」をフルモデルチェンジ。トヨタが展開するレクサスブランドの「LS」も一新され、新たにレクサス「ES」も発売されています。

 ホンダでは、プラグインハイブリッドの「クラリティPHEV」が発売され、ハイブリッドの「インサイト」も復活。セダンが話題を提供した1年だったといえます。

 セダンが発売されると、必ず聞かれる言葉が『セダンの復権』です。2017年にトヨタ「カムリ」をフルモデルチェンジしたときは、開発者から“カムリによってセダンの流れを変えたい”という言葉が聞かれました。

 また、新型になった「クラウン」は、外観のデザインを大幅に変えて、伝統的なグレードのロイヤルサルーンを廃止しています。その代わりスポーティなRSが中心的な存在になり、プラットフォームも刷新したため、走行安定性が大幅に向上しました。

 走行性能が良くなった半面、運転感覚はメルセデスベンツに近づき、日本の道路や交通環境に合わせた『クラウンらしさ』が薄れたのは残念です。しかし、クラウンが変革を図ろうと懸命になっているのは分かります。今後も時代に合った「クラウン」のあり方を求めて、さらに変化を重ねていくのでしょう。新型はその第一段階です。

 このようにセダンは進化していますが、昔のように販売の主力になることはありません。理由は『ミニバンが復権した』からです。

■ミニバンやSUVに押されるなかでの「セダンのメリット」とは

 過去を振り返ると、1920年代までのクルマは、乗用車でも箱型のミニバンスタイルでした。車種によってはボディの後部に折り畳み式の荷台を装着して、大きなトランクを運べるように工夫していました。

 1930年代に入ると、流線形のトレンドに沿ってトランクがボディに一体化され、いまのセダンスタイルが生まれます。商用車にはミニバンスタイルのバンが残り、1940年代にはセダンをベースに荷室を広げたステーションワゴンも登場しますが、乗用車の主力は実用性よりもデザインを重視するセダンでした。

 このセダンの時代が60年ほど続き、1990年代には、再びミニバンスタイルが注目されるようになります。ボディ後部に背の低いトランクスペースを加えたセダンより、ボディの後端まで天井を長く伸ばしたミニバンスタイルの方が、空間効率が優れているからです。

 2000年代に日本でも販売されたクライスラー「PTクルーザー」は、外観がクラシックなデザインです。後ろ姿も昔の乗用車をイメージさせますが、ルーフを後方まで長く伸ばしたことで車内は広く、実用性も優れています。

 つまり、クライスラー「PTクルーザー」を見ると、昔の乗用車が、今でいうミニバンだったことが分かります。その後、乗用車にはデザイン面の付加価値が求められてセダンの時代が訪れ、その後再び実用重視のニーズが高まってミニバンが復権したのです。合理的なミニバンが復権した以上、今後セダンが大量に売れることはありません。

 ただしセダンのメリットは健在です。セダンはミニバンやSUVに比べると天井が低く、後席とトランクスペースの間には隔壁があります。そのためにセダンは低重心で、ボディ剛性を高めやすいです。

 そうなるとセダンはミニバンやSUVに比べて、走行安定性を向上させやすくなります。危険を避ける能力も優れています。そして走りの基本性能が高ければ、足まわりの設定を乗り心地に振り分けることも可能です。

 このようにセダンは、ミニバンやSUVに比べて車内は狭いですが、『安全と快適』を追究できます。従ってセダンには、スバル「WRX」のような走りの優れたスポーツモデル、トヨタ「センチュリー」のように乗り心地が際立って快適なクルマも用意されています。

 以上のようなセダンの価値を、ていねいに分かりやすくアピールすれば、ユーザーが感じる印象が変わるかも知れません。逆に旧態依然とした訴求を続けていたら、レクサス「ES」の発売やインサイトを復活させても、セダンに対する世間の印象は今までと同じです。

■セダンの良さを実感できるクルマに期待

 数年前に若い女性同士の会話を聞いて驚きました。“タクシー(セダンのこと)の格好って、何だかキモイよね。お尻を突き出したみたいでさ”。おそらく彼女はトランクスペースのないクルマを見慣れていて、セダンの外観が奇異なものに感じたのでしょう。

 そしてこの感想には一理あります。ややこしい走行安定性などの話を除いて空間効率的だけを考えると、居住空間の部分で持ち上げた天井を、わざわざ低く下げて独立したトランクスペースを設ける必然性はないからです。

 クルマ業界で生活していると、今でも『セダンがクルマの基本形』という見方をしがちです。『セダンがキモイ』など考えもしません。しかし若い人達の間では、このような認識が確実に広まっています。

 最近は、安全に対する関心が高まっていますから、セダンもそのメリットを効果的に訴求できる新しい表現方法を考えるべきです。

 一方で、しばしば使われる『走る楽しさ』は難しいです。クルマに安全を求めても、楽しさには関心の乏しいユーザーも多いからです。

 クルマにはいろいろな価値観があってこそ、幅広いニーズに対応できて、楽しさも生まれます。ユーザーの立場に立った訴求方法で、セダンを復権させて欲しいと思います。

 日本のユーザーが、セダンの良さを実感できる新型車の開発も不可欠です。セダンが好調に売れた時代に比べると、今のセダンはサイズが必要以上に大きく、価格も高くなってしまいました。日本に適したセダンを開発しないで、日本でのセダンの復権を目論むのは難しい気がします。

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