■世界で2社だけが採用続ける「水平対向型エンジン」とは
スバルのEJ20型という水平対向型エンジンが、2019年末をもって生産終了となり、約30年の歴史に幕を閉じます。
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現在、水平対向型エンジンを採用しているのは、バイクやOEM車を除くとスバルとポルシェの2社に限られますが、なぜ少数派のエンジンを使い続けているのでしょうか。
クルマのエンジンは、用途によっていくつかの分類があり、「直列型」「V型」「水平対向型」の3タイプに分けることができます。
現在、ほとんどの自動車メーカーが採用しているのが、シリンダーを一列に配置した「直列型」と左右交互のV型に配置した「V型」です。
対して、シリンダーを左右交互に配置する「水平対向型」は、前述のとおりスバルとポルシェだけになります。左右対称のピストンの動きがボクサーのパンチを打ち合う様子を連想させるため、「ボクサーエンジン」とも呼ばれています。
なぜ「水平対向型」を採用するメーカーが少ないかというと、エンジンの構造に関係し、「直列型」や「V型」に比べ、部品点数の多さや排気通路が複雑化するなど生産性が落ちるほか、燃費の悪さも問題となります。
また、水平型のため横幅が広くなるため、コンパクトカーなど車格が小さなクルマでは、エンジンルームに搭載することが困難なほか、メンテナンスの際の整備性も悪いです。
しかし、「水平対向型」には、クルマを走らせるうえでのメリットも多く存在します。具体的には、「低振動・低重心・高剛性・回転バランスの良さ」などが挙げられ、速さを競うモータスポーツなどの場面においては、低重心なクルマほど安定性が高くなり、コーナリング時などで有利に戦えます。
メリットもデメリットもある「水平対向型」ですが、スバルとポルシェの2社だけが採用しているのはなぜなのでしょうか。
スバルは、1966年に発売した「スバル1000」に「水平対向型」を搭載したことがきっかけで、現在まで開発・改良を重ねていくことになります。
現在は、軽自動車などのOEMを除く全車に採用され、1989年の初代レガシィから搭載されている「EJ型」、環境性能と走りを両立する新世代の「FB型」、さらなる低重心化を目指した「FA型」といういくつかの種類をラインナップ。
スバルは、いまでこそ大手自動車メーカーにならぶ知名度がありますが、以前までは小規模メーカーといわれていました。
そのため、ほかのメーカーとの違いを表現する方法のひとつとして、独自性がある「水平対向型」を採用することで、ユーザー獲得や固定ファン層を維持。それゆえ、自社開発のエンジンをひとつに絞ることで生産性も確保しています。
水平対向エンジンの開発を続ける理由について、スバルは次のように話します。
「水平対向エンジンは、スバルが考える理想のパワーユニットです。水平かつ左右対称に配置されたピストンが、互いの慣性力を打ち消し合うことで、振動の少ないスムーズなエンジンフィールを提供します。
また、スバル独自の4輪駆動システムとして『シンメトリカルAWD』がありますが、このシステムの特徴は水平対向エンジンを含めたパワートレイン全体が、エンジンと同じく左右対称に、かつ一直線上でレイアウトされているということです。
水平対向エンジンと、それを核としたシンメトリカルAWDは、『どんな道や環境でも、乗る人すべてが変わらない安心と愉しさを感じられる』というスバルの理想を叶える、独創的かつ合理的なコアテクノロジーなのです」
■水平対向は電動化が進むとどうなる?
スバル同様に「水平対向型エンジン」を採用しているのが、ドイツの自動車メーカー「ポルシェ」です。現在では「パナメーラ」や「カイエン」「マカン」以外のスポーツモデルに採用しています。
ポルシェの1号車として登場したポルシェ「356」に搭載されたエンジンは、空冷4気筒PHVの「水平対向型」でした。その後の「911シリーズ」にも「水平対向型」が採用され、現在にいたります。こうした「911=水平対向型」という伝統に加え、前述の『クルマを走らせるうえでのメリット』などと相まって「水平対向型」が採用され続けています。
従来、ポルシェの「ボクスター」「ケイマン」には、水平対向6気筒エンジンを搭載してきましたが、年々厳しくなる燃費規制やパワー・トルク向上の技術革新により、2016年から水平対向4気筒エンジンにシフトしたモデルも登場しています。
将来的には、さらなる燃費規制や電動化が予想されるなか、ポルシェは、2025年までに全モデルの50%を電動化すると宣言。2019年9月には、ポルシェ初の量産EV「タイカン」が発表され大きな話題となりました。
一方、スバルは「水平対向型」と電動技術を組み合わせた新開発のパワーユニット「e-BOXER」を展開。燃費の悪さをカバーするとともに、規制にも対応していくとしています。
同じ燃費の悪さで、一旦は姿を消したマツダの「ロータリーエンジン」は、モーターの発電用として新たに開発が進められ、近い将来には市販車に搭載して登場する予定です。
独自性をもつ「水平対向型」は、新たな形で進化を続けていくものと思われます。
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