■新型「カローラシリーズ」全面刷新級の進化を実現!
2022年10月3日、トヨタ「カローラ」「カローラツーリング」「カローラスポーツ」の一部改良をおこないました。
【画像】これはフルモデルチェンジじゃない? トヨタの新型「カローラ」の実車を見る!(28枚)
12代目の皮切りとなったハッチバック(スポーツ)の登場が2018年、セダン/ツーリングの登場が2019年なので、「モデルライフ折り返しに向けたリフレッシュなんだろな」と思っていたのですが、その内容を見てビックリ、従来のトヨタであればフルモデルチェンジ級の変更内容となっています。
チーフエンジニアの上田泰史氏は「我々は常に『もっといいクルマづくり』を目指しています。そのため『時が来たからフルモデルチェンジ/マイナーチェンジ』といった従来の考えをやめ、常に全力投球をおこなうことが大事だと考えました。それをワールドワイドで展開をおこなうカローラでやる、これも大きな挑戦でした」と語っています。
エクステリアはフロント周りのアップデートが中心で、よりキリっとした顔つきに進化しています。
スポーツはよりアグレッシブ、セダン/ツーリングはよりスマートになった感じがしますが、筆者はどことなく新型クラウンに似ている印象を受けました。この辺りは新世代トヨタデザインの要素が上手に盛り込まれているのでしょう。
インテリアは上級グレードに12.3インチのフル液晶メーターを採用。これは新型「クラウン」やマイナーチェンジ後の「ハリアー」と同じデザインで燃費やハイブリッドモニター、運転支援などを同時表示が可能に。4つのデザインと3つのレイアウトが選択可能ですが、残念なのはすべての要素がほかのトヨタ車と全く同じこと。
せめて1つくらいは車種独自のデザインがあってもいいと思いました。個人的には歴史があるクルマだからこそ、多くの人の記憶に残っているデザイン(例えば80年代のトヨタ車に多く採用されたデジタルメーターなど)を再現するのもアリかなと。歴代オーナーが思わずクスっとなるアソビ心も欲しいです。
加えてインフォテイメント機能も最新版にアップデートされていますが、新型クラウンや「ノア」「ヴォクシー」などで指摘している操作性や表示方法などは全く改善されておらず。
本来、もっとアジャイルに進化できる機能なはずですが、このスピード感はちょっと早急の対応を期待します。
ここまでは一般的な一部改良レベルといった印象ですが注目はメカニズムで、何とパワートレインは全面刷新です。
従来ボトムレンジを支えていた1.8リッター直列4気筒自然吸気(140ps/170Nm)は、新世代ダイナミックフォースエンジンの1.5リッター直列3気筒自然吸気(120ps/145Nm)に。
スポーティ系モデルに採用の直列1.2リッター直噴ターボ(116ps/185Nm)は新世代ダイナミックフォースエンジンの2リッター直列4気筒自然吸気(170ps/202Nm)へと変更。
ハイブリッドは1.8リッターエンジン(98ps/142Nm)こそ不変ですが、電動化ユニットはノア/ヴォクシーから採用される第5世代へと刷新。
フロントモーターが72ps/163Nm→95ps/185Nm、E-four(4WD)のリアモーターは5.3kW/55Nm→30kW/84Nmと出力アップと共にバッテリーの容量アップ(3.6→4.08Ah)。更にE-fourのバッテリーはニッケル水素→リチウムイオンに変更されています。
カローラの長い歴史を振り返ってみても、モデルライフの途中でパワートレインがここまで変わったのは初めてでしょう。
ちなみにトランスミッションは1.2リッター直噴ターボがモデル落ちしたことで6速MTが消え、全車2ペダル仕様(CVT)となっています。
パワートレインの刷新に合わせてフットワーク系も大きく手が入っています。具体的にはバネ/ダンパー、スタビライザーの見直しですが、単なる最適化レベルではなく前後のロールバランスを見直すほどの大規模な変更だといいます。
ちなみにガソリン車のみリアサスがダブルウィッシュボーンからトーションビーム式に変更されています。
加えて、従来モデルで高い評価を得ていた第3世代EPS制御も更なるブラッシュアップを実施。
ひとつ残念なのは、従来モデルのカローラグローバル累計5000万台記念特別仕様車に採用された「除電スタビライジングシート」が、上級モデルのみオプション設定という点です。
開発者は「(コスト面も含めて)、全車採用するためのさまざまな課題がクリアできなかった」といいますが、空力特性はもちろん走る/曲がる/止まるの基本性能にも大きく効果があることを実感している筆者としては、「これこそ全車標準装備にすべき」だと思っています。
※ ※ ※
実際乗るとどうだったのでしょうか。
まずはガソリン車のセダンからです。エンジンは1.8リッター直列4気筒エンジンから1.5リッター直列直3気筒エンジンに、リアサスはダブルウィッシュボーンからトーションビームと、実は「もっといいクルマといいながらも、コストダウンじゃないの?」と心配しましたが、走らせると全てがレベルアップしています。
エンジンはスペック的にはダウンしていますが、むしろ常用域の力強さは1.5リッターのほうが上です。
「ヤリス」より遮音性が優れるのと音の伝達経路が異なるのか、常用域では意外と低音が効いたサウンドでアクセル全開にしないかぎりは3気筒特有の安っぽさは顔を出しません。
発進ギアを備えたCVTも常用域では想像以上にダイレクト感があり、見た目に似合わず小気味よく走ってくれます。
フットワークは従来モデルよりも全体的に穏やかになった印象です。といってもダルなになったのではなく、基本の良さはそのままにおいしい領域をより低い速度にシフトといったイメージです。
トーションビームに変更したネガ(ドタバタした動きやアタリの強さ)はほぼ感じず、むしろ凹凸を乗り越えるときのカドの取れた優しさやショックのいなし方などは、従来モデルよりも優れています。
■ツーリングやスポーツはどんな印象になった?
続いて、ハイブリッドFFのツーリングに乗り換えます。電動パワートレインの進化は走り始めから実感できます。
アクセルを踏んだ時の力強さはもちろんですが、アクセル開度を開けてもエンジンが始動しにくい“粘り強さ”にもビックリ。
ちなみにエンジンの始動(EVモード→ハイブリッドモード)も従来モデルよりも解りにくくなっています。
そういう意味では、少しだけ電動車感が増したかなと。一方、高速道路での追い越しなどでエンジンが唸るのは従来モデルと大きく変わらない印象ですが、出力がアップしているのでその時間は確実に減っています。
フットワークは従来のスポーティさはそのままに全ての動きが滑らかになった印象です。
とくにステア系の軽いのに芯の強さを感じるフィールは、フォルクスワーゲン「ゴルフ」を上回るレベルだと感じました。
フットワークは基本的には従来モデルと変わらずスポーティとコンフォートを上手にバランスさせた味付けですが、そのバランスがより高い所で実現されています。
具体的には運転中の目線の動きの少ないボディコントロール、今まで以上に4輪を使って曲がる旋回姿勢、より意のままになったライントレース性などを実感つまり走りの“精度”がより高まった印象です。
さらに驚いたのはハイブリッド&E-fourです。具体的にはFFよりも旋回軸がドライバーの近くにあるようなイメージで曲がる印象で、より一体感がある走りだと感じました。
これはリアモーターの出力アップ(=全車速域で作動)に加えて、旋回時の駆動力制御も効いているのでしょう。
ちなみにGRヤリス/GRカローラはリアの駆動力を“曲げる”に積極的に活用していますが、そのノウハウの一部がカローラにもシッカリと水平展開されているというわけです。個人的には新型のE-Fourはオンロードユースのユーザーにも積極的にお勧めしたいと思いました。
そして、最後はスポーツのガソリン車です。2リッター自然吸気エンジンはほかのパワートレインと比べると余裕を感じる動力性能はもちろん、想像以上に高回転までスッキリ回るフィーリングなどスポーティなユニットです。
同じエンジンを積むRAV4/ハリアーよりは雑味が抑えられたサウンドではありますが、欲をいえばもう少し音質が良くなるとフィーリングも更に良くなると思います。
発進ギアを持つダイレクトシフトCVTとの組み合わせによりスポーティに走れるものの、個人的にはエンジンの実力をダイレクトに味わうことができるMTの組み合わせも気になる所です。
気になるのは、この2リッターエンジンはスポーツのみの設定でツーリングをはじめとするほかのモデルの設定がないことです。
限定500台があっという間に売り切れた「2000リミテッド」を待つ人も多いと聞いています。手頃なサイズのスポーティなワゴン、需要はあると思います。
フットワークはカローラスポーツに見合った走りへとアップデート。
2018年のデビュー時は曲がりたがる性格で直進性の甘さと街乗り領域の粗さが指摘され、2019年にセダン/ツーリングの登場に合わせて少し甘口(=直進性と快適性に振ったセット)にアップデートされましたが、市場からは「スポーツなのに、スポーツっぽくない」という指摘が多く寄せられたそうです。
そこで新型は2018年モデルと2019年モデルのいい所取りのセットアップです。具体的には街中では硬めながらも決して不快に感じさせない入力を抑えた優しい乗り味。
高速では一クラス上のモデルだと錯覚する重厚かつ直進性の高さ、そしてワインディングでは安定感を持ちながらも「お前はヤリスか?」と思わせる軽快なクルマの動きを実感。
個人的にはGRスポーツと呼びたくなる“大人スポーツ”な走りで、GRカローラとの懸け橋になってくれる存在なのかなと。
ちなみに運転支援デバイスも一部改良にも関わらず機能・性能共に最新スペックの “第3世代”トヨタセーフティセンスへと変更されています。
これらの進化は非常に嬉しいことですが、一つ気になったのがステアリングを握っているかどうかを検知するセンサーがタッチ式ではなくトルク感応式のままであること。
基本性能の向上で直進安定性がかなり良くなり修正舵が減ったことで、システム作動中に何度も「ステアリングを握ってください」と注意されました。
コストとの兼ね合いがあるのは重々承知していますが、ステアリングに手を添えるだけでビシーッと走ってくれるクルマになった以上は、早急に対応したほうがいいと思います。
※ ※ ※
このように、今回の進化は基本性能の更なるレベルアップだけでなく、各バリエーションの“個性”もより際立ったように感じました。
つまり「味が濃くなった」というわけです。そういう意味では、今回のカローラの進化は単なる一部改良ではなく、トヨタの「もっといいクルマづくり」が次のフェイズに入った証なのかもしれません。
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