すべてのエンジンへ電動化技術を採用
電動化への過渡期でも、W206型Cクラスはメルセデス・ベンツにとって重要な存在だ。もちろん、電動化技術は採用されている。マイルド・ハイブリッド化されたガソリンとディーゼルの内燃エンジンが主役だが、プラグイン・ハイブリッドも用意されている。
【画像】最新の技術と快適性を堪能 メルセデス・ベンツCクラス 競合クラスのサルーンと比較 全153枚
このクラスの主流はSUVへ交代し、サルーンが少々古びて見えることは事実。それでも、BMW 3シリーズやアウディA4、ジャガーXEなどが出揃い、エグゼクティブのハートを奪い合う、熱い戦いが繰り広げられている。
プラットフォームは、同社によるモジュラー・リアII アーキテクチャの最新版。2020年に交代した先代Sクラスが採用していたものだが、W205型のCクラスもベースとしていた。次世代は、恐らくバッテリーEVとして設計されるだろう。
フロントにエンジンを縦置きし、後輪を駆動するドライブトレイン・レイアウトは踏襲。四輪駆動も選択できる。エンジンはすべて4気筒へ絞られた。
欧州仕様の場合、170psのC 180と203psのC 200には、1.5Lガソリンターボを搭載。258psのC 300と312psのC 300eには、2.0Lターボが載る。ディーゼルターボも選べ、199psのC 220dか264psのC 300dが用意される。
トランスミッションは9速ATが共通。プラグイン・ハイブリッドのC 300eでは、128psの駆動用モーターが内蔵され、エンジンを回さずに209km/hまでの速度で走行も可能。荷室のフロア下に積まれる駆動用バッテリーの容量は、25.4kWhある。
上級サルーンに求められる装備は網羅
バッテリーが大きいだけに、今回試乗したC 300eは重い。車重は2005kgがうたわれ、BMW 330eより235kgもかさむ。C 300eでは、サスペンションとステアリングが専用設定で、リアにセルフレベリング機能付きのエアスプリングが備わる。
Cクラス全体で、AMGラインを指定すればエアサスを選択できるが、C 300eにローダウン・スポーツサスの設定はない。同じく、プログレッシブ・パワーステアリングも装備されない。
アルミホイールは、空気抵抗へ配慮されたデザインの18インチ。タイヤは、転がり抵抗の少ないミシュラン・プライマシー4を履く。
試乗車のC 300eは、珍しくオプションが控えめ。メタリック塗装以外、シンプルな素のCクラスだったといっていい。とはいえ、このクラスの上級サルーンに求められる装備は、初めから一式付いている。
インテリアは、贅沢な雰囲気。シートの調整域は広く、ステアリングが理想的な位置に据えられ、空間も広い。フロントピラーが太めながら、運転席からの視界は広い。人間工学的な位置関係も好ましい。
だが快適性や製造品質の水準は、シュツットガルトのブランドとして期待値には届いていないだろう。スポーツシートは、特に座り心地に優れるわけではない。肩周りと太もものサポート性は、改善できるはず。運転席の足元空間は、若干狭めでもある。
内装のフィッティングは好印象ながら、品質が伴わない部分も。プラスティックには、厚みが足りない領域がある。コスト削減を感じずにはいられない。
6気筒は必要ないという主張へうなずける
メーター用モニターは、12.3インチ。デフォルトの画面は情報過多ながら、表示内容はカスタマイズできる。ダッシュボード中央には、11.9インチのインフォテインメント用タッチモニター。画面の下端に、エアコンの操作アイコンが常時表示される。
リアシートの広さは、このクラスの平均。一般的な身長の大人なら、特に不満は感じないだろう。
荷室はやや狭めだが、幅が広く使いやすそう。リアシートの背もたれを倒せば、長い荷物も載せられる。ただし、駆動用バッテリーが床下部分に位置するため、高さ方向には制限がある。利便性を重視するなら、ステーションワゴンを選びたい。
2t以上の車重を持つC 300eながら、動力性能は充分。312psあるだけあって、余裕綽々のようだ。試乗日は雨だったが、カタログ値を超える6.0秒以下で0-100km/h加速をこなしてみせた。
トラクションに優れ、アクセルペダルの加減が必要だったのは発進時のみ。理想的な条件なら、5.5秒は狙えそうだ。
中間加速は、6気筒ディーゼルターボ並みにたくましい。むしろ、駆動用モーターの素早い立ち上がりで、アクセルレスポンスはそれ以上。機械的な上質感も高い。メルセデス・ベンツが、Cクラスへ6気筒は必要なくなったと主張することにもうなずける。
ちなみに、258psのC 300も充分速い。高回転域では若干息苦しそうに感じられるものの、追い越しで気を揉むようなことはないはず。
不満ない姿勢制御と好バランスなグリップ力
Cクラスは、以前からスポーツサルーンとはいえなかった。運転姿勢も、それを物語る。だとしても、操縦性は好ましい。滑りやすい路面状態でも、不満ない姿勢制御と好バランスなグリップ力を発揮していた。軽くない車重の影響も、巧みに抑えられている。
回頭性が鋭いわけではないものの、線形的で滑らかに向きを変える。きついカーブでは、後輪駆動らしい身のこなしをほのかに感じる。ステアリングは正確で、路面を問わずボディは落ち着き、キビキビと郊外の道を駆けていく。
サスペンションは快適性重視といえるが、浮遊感を伴うほどではない。高速で旋回してもロールは小さく、グリップへの影響も抑えられている。加減速時のピッチも、抑えられていた。
グリップ力の限界を迎えると、フロントタイヤが先に外へ流れる。C 300eの場合、リアに重い駆動用バッテリーが載るため、適した挙動といえる。路面の凹凸に対する処理も上々。巧みに上下動を吸収し、ボディが揺さぶられる場面は少ない。
だが、ステアリングホイールは軽く回せるものの、手のひらへの感触は希薄。ブレーキペダルにも、もう少しフィードバックが欲しいところではある。
走行中の車内は静か。風切り音やロードノイズは、充分遮断されている。4気筒エンジンが高回転で仕事を始めたり、路面が荒れてくると、ノイズが車内へ届くようになるが、全般的には平穏に移動できるサルーンだ。
メルセデス最新の技術と快適性を堪能できる
一部の運転支援システムは、英国仕様ではオプション。アダプティブ・クルーズコントロールや、歩行者にも対応した衝突被害軽減ブレーキを指定するには、AMGラインプレミアムに、ドライビングアシスタンス・パッケージ・プラスを追加する必要がある。
ベーシックなブラインドスポット・モニターや車線維持支援システム、衝突被害軽減ブレーキなどは標準。効果的に機能するように思えた。
C 300eが電気の力だけで走れる距離は、市街地で80km前後。高速道路では、70km程度へ縮まると予想できるが、ライバルと比べれば競争力は高い。燃費は、110km/hの巡航で平均17.3km/Lが表示されていた。
高速道路での移動が多いなら、ディーゼルターボの方が有力。C 220dを試したところ、ほぼ同じ条件で21.0km/Lを超えていた。
5代目Cクラスは、メルセデス・ベンツ最新の技術と快適性を享受している。ただし、内装やドライビング体験の魅力では、BMW 3シリーズが勝ることも否定はできないが。
C 300eのハイブリッド・システムは、洗練性が高く燃費も優秀。主なライバルよりエンジンを回さず走れる距離も長い。高速道路でも充分たくましく、ターゲット層の期待へ応える内容だといえるだろう。
◯:電気だけで80km近く走れる 力強く扱いやすいパワートレイン 快適で洗練されたクルージング性能
△:荷室はやや狭め 改善の余地があるインテリアの質感 ライバルへ届かない運転の楽しさ
執筆:マレー・スカリオン
メルセデス・ベンツ C 300e AMGライン(英国仕様)のスペック
英国価格:4万6995ポンド(約869万円)
全長:4751mm
全幅:1820mm
全高:1438mm
最高速度:244km/h
0-100km/h加速:6.1秒
燃費:166.7km/L
CO2排出量:13g/km
車両重量:2005kg
パワートレイン:直列4気筒1999cc ターボチャージャー+電気モーター+ISG
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:25.4kWh
最高出力:312ps(システム総合)
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:9速オートマティック(後輪駆動)
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みんなのコメント
海外の評論家はダメなところもしっかりとした指摘するね
壊れますからね。