没個性の新時代に、憧れの的となるのでは?
クルマの世界で水平対向エンジンといえば、日本ではスバル、海外ではドイツのポルシェということになるのでしょう。
スバルは古くから水平対向エンジンにこだわり続け、水平対向ユニットを搭載しています。さすがにリッターカーのジャスティや軽自動車は3気筒ですから、ピストンを対向で動かすにはバランスが悪い。奇数ユニットでは無理があるようなので例外なのですが、スポーツカーのBRZにも水平対向なのです。
ポルシェも同様で、主力モデルの911は水平対向6気筒、コンパクトスポーツも水平対向を搭載しています。
水平対向の最大の特徴は、重心が低いことです。ピストンは互いに向かい合うようにして水平にレイアウトしています。上下にピストン運動する直列やV型よりも、ムービングパーツを低い位置に組み込めるからです。スバルやポルシェが走りのメーカーとして高く評価されてきたのは、水平対向ユニットを持っているからかもしれません。
バイクの世界でも同様に、水平対向ユニットは走りの性能を高めることから高く評価されています。とくにこだわりを持って開発を続けているのはドイツのBMW Motorradです。
航空機メーカーから発展したBMWは、メカニズムに対するこだわりが強いメーカーです。クルマの分野で水平対向をラインナップしていないのは最大のライバルであるポルシェへの対抗心かもしれませんが、バイクでは水平対向のメーカーとして認知されています。
水平対向(ボクサー)エンジンを搭載しているのは、ツーリングスポーツの「R 1250 RS」、ツアラー色の強い「R 1250 RT」、アドペンチャー系の「R 1250 GS」シリーズとその新型「R 1300 GS」です。ヘリテージ系の「R nineT」シリーズや「R 18」シリーズもボクサーエンジンです。
ちなみに、水平対向エンジンが「ボクサー」と呼ばれるのは、左右に伸びるピストンが格闘家のポクサーが繰り出すパンチの動きに似ているからだそうです。なかなか素敵な語源ですね。
というわけで、BMWのボクサーユニット搭載車は、低重心ゆえの安定感が人気です。同時に、ピストンが左右に動くことで、独特の振動が得られます。振動を嫌うクルマの世界ではあまり歓迎されるものではありませんが、バイブレーションも魅力と歓迎されるバイクの世界では、その個性的な振動が多くのライダーのハートを惹きつけているようです。
サイドスタンドを立てた状態でエンジンを吹かすと、その場でコケてしまいそうになるような振動が得られます。慣れないライダーは不安に思うかもしれません。そんな振動が個性であり魅力なのですから、バイクという乗りものは楽しいですね。
パワーユニットの多様化が叫ばれている時代ですが、水平対向ユニットは少数派ではありながら、これからも人気であり続けそうです。没個性が叫ばれている新時代ですから、僕(筆者:木下隆之)はこれまで以上に憧れの的になるような気がしています。
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