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新型レクサスLSは本当に敵ナシか? 世界最高峰のサルーンを公道で試す

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新型レクサスLSは本当に敵ナシか? 世界最高峰のサルーンを公道で試す

10月の下旬には日本でも発売になる新型レスサスLS。レクサスのグローバルモデルのフラッグシップとして5代目(日本発売のLSとしては2代目)となる新型は、どんな乗り味なのだろうか? 世界に衝撃を与えた初代LS(日本名:セルシオ)から30年近くの歳月を経て、ふたたびLSが世界に衝撃を与える予感がしてきた。レーシングドライバーであり、トヨタ GAZOOレーシングではレクサスと共にニュルブルクリンクで戦った木下隆之氏が、アメリカで行われた試乗会での様子をレポートする。

文:木下隆之/写真:LEXUS

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■社長からの命令に開発陣は奮起した

「初代LSを超える衝撃を……」

豊田章男社長から、そんなリクエストが発信されたという。それは希望ではなく命令だと開発陣は解釈したという。1989年に米国でデビューした初代は、圧倒的な静粛性を武器に、瞬く間にドイツ御三家と並ぶ高級車に成長した。

あれから28年。4代目となる新型LSは、豊田社長の要求に応えることができたのだろうか!? 新型は前後に長く、幅広く、それでいて全高は低く抑えられている。その体躯は威風堂々としている。巨大なモデルが闊歩するアメリカの大地で確認しても、迫力で負けをすることはなかった。むしろ艶やかな印象が強く存在感は際立っているようにみえた。

特に、4ドアクーペとも思える、なだらかに傾斜するルーフや6ライトキャビンは新鮮であり、人の目を引く。新型LSは大きく変わろうとしている息吹を感じたのである。

搭載されるエンジンは2タイプ。V型6気筒3.5リッターを基準に、「ツインターボ+10速AT」と「10速変速のマルチハイブリッド」である。そのどちらも、静粛性はたしかに高い。ハイブリッドのモーター加速状態が静かなのは想像の通りだが、エンジン仕様であっても静粛性は想像を超える。初代で世間を驚かせたエンジンの静けさは完全に上回っている。回転を上げた時にはあえてサウンドを残すという細工が必要なほど、静粛性は高かったのだ。

ただし、新型が初代を超える衝撃のひとつにすえたのは静粛性だけではない。レクサスの超高級セダンとしては驚くことに、ハンドリングも磨き込んでいたのだ。「初代を超える衝撃を」の回答は、走りなのかと思う。自動運転支援は世界トップレベルである。数々の世界一と名乗れるシステムが投入されている。

内装の豪華さも、ドイツ御三家を凌駕したと確信する。建築や衣装の伝統技術を取り入れるなどした和の世界観は、もはやクルマというより茶室かリビングにいるかのような趣である。だが、それよりもむしろ僕は、走りに強い衝撃を受けたのだ。

■レーシングドライバー木下隆之が感じた「走り」のよさ

LC500で高い評価を得た新プラットフォーム「GA-L」により、新型LSはエンジンを低く後退させることに成功しており、それによって前後重量配分が理想的になった。ドライバーの着座点も低い。ドライバーズカーとしての意思を感じる。

走り出した瞬間に、LSのフットワークが優れていることがわかる。もちろんけっして足回りがゴツゴツしているわけではない。電子制御エアサスは、硬いわけではまったくなく、巧みに路面の凹凸をいなす。それでもプラットフォームの恩恵により、心地いい旋回性能が滲み出るのである。

ドイツ御三家のように、硬いボディと足回りで強引に旋回を引き出すような素振りはない。ステアリングを切り込めば、素直にヨーが現れる。そう、滲み出るような感覚なのである。それはライバルにはない味である。特にLDH(後輪操舵)が組み込まれているモデルのハンドリングは絶品だ。個人的には後輪操舵否定派だったけれど、この完成度を知ったいま、考えを改めなければならないかもしれない。

ところで編集部からの原稿依頼はこうだった。ドイツ勢に「勝る」と「もう一息」を伝えろと。

そのリクエストに答えるのは簡単だ。凌駕しているのは高度運転支援でありインテリアのしつらえである。エクステリアデザインは個人の主観だからここではあえて断言しない。

走りに関しても際立っている。圧倒的な乗り心地と、それでいて滲み出るハンドリングはライバルと並ぶ。あえて言うならば、あきらかにドイツ御三家とは異なるテイストで走りを追い求めている。どこにも真似はないし劣等感もない。まさに威風堂々と自らが思う走りの世界を追い求めている。だからここには優劣がつかないのである。好みの世界だと思う。

あえて言うならば、誰にでも直感的にわかる走りの荒々しさは欠如している。走りを際立たせた仕様の「Fスポーツ」でさえ、乗り心地は「エクスクルーシブ」と遜色ないし、それでいて走りは洗練されている。これが悪いとはまったく思えないが、あえて想いを伝えるのならば、もっとドキドキする仕様があってもいい。奥ゆかしさが心地いいとはいえ、あからさまなスポーツ仕様があってもいいのかと思う。

ともあれ、新型LSは、世界のフラッグシップと堂々と対峙する。

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