■先代に影に隠れた名車
お台場のレインボーブリッジが開通し、サッカーJリーグが開幕した1993年、6代目「シルビア(S14型)」はデビューしました。
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ボディサイズがアップして、シリーズ初の3ナンバーサイズ化された6代目「シルビア」は、先代(S13型)に比べ初動の人気はいまひとつでした。S13型はバブル時代だったこともあり、デザインも斬新でしたが、S14型は大きくなったことでスポーティな部分がスポイルされたように見えたのかもしれません。
シルビアが大型化された背景には、当時のクルマ業界全体が3ナンバー化に進んでいたことが関係しています。シルビア以外の車種でも、高級車クラスを除いて評判は良くなく“幅広にすると運転しにくい”というイメージがユーザーにはありました。
スタイルの点で横に膨らんだように見えたことも不評の原因だといわれています。
また、車体価格の上昇も初動の人気が出なかった原因のひとつです。5代目「シルビア」の価格は、100万円台後半(NA仕様の「Q’s」)だったことに対して、6代目「シルビア」は約200万円と価格が上がっています。「K’s」の場合300万円に近くなる価格設定は、若者が簡単に買えるクルマではなくなったといえます。
ただし、名機SR20型エンジンを搭載するハイパワーなFRという価値は揺るぎなく、走りに重きを置いているユーザーにとって6代目「シルビア」は、正統派のスポーティカーだったのです。
■時代は“走るクルマ”から“遊べるクルマ”へ
6代目「シルビア」は、1996年にマイナーチェンジを行ないました。しかも、マイナーチェンジとは思えないほど、大胆な変身でした。丸みを帯びたフロントマスクは直線的で精悍なものになりました。テレビCMも若者向けにPOPなものとして、販売の立て直しを図りました。
当時のクルマに対する流行りでは、『シティーユースの4WDブーム』があります。最近では、「SUV」や「クロスオーバー」とは少し傾向が違うものの、“遊べるクルマ”へと時代は進んでいきます。
トヨタ「RAV4」、ホンダ「CR-V」、日産「ミストラル」などRV車の登場が流行りの火付け役といえます。シルビアの『デート向け』や『走り向け』という需要は、多人数で楽しめるレジャーの流行りとともにSUVに移っていきました。
また、『走り向け』のクルマにも変化があり、三菱「ランサーエボリューション」やスバル「インプレッサ」といったラリーでも活躍するハイパワー4WD車に移行していきます。このような時代では、シルビアの需要は限られたものだったのかもしれません。
しかし、幅広いボディの6代目「シルビア」は安定した走りをみせ、中古車価格も安めなことからドリフト車のベースとして人気に火が付きました。当時のニーズには当てはまらなかったクルマでも、時代背景やユーザーニーズによって人気が復活することもあるようです。
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