当時のBMW M3を軽く凌駕したパワー
2000年代後半にアウディとBMW、メルセデス・ベンツのドイツ御三家は、スーパーカー級の走行性能と日常的な実用性を、サルーンで叶えてみせた。その極めつきといえたのが、今回振り返るW204のC 63 AMGだろう。
【画像】魅力は衰えない メルセデス・ベンツC 63 AMG(W204) 同時期のE92 M3 現行モデルも 全125枚
ドイツ・アファルターバッハの技術者は、BMW M3と大きく差が開いていたCクラスの現状を打開しようと考えた。徹底的に。
W204型C 63 AMGの発売は、2008年。大きくはないボンネットの内側には、6.2L V型8気筒エンジンが押し込まれていた。自然吸気で457psと58.3kg-mを発揮し、0-100km/h加速は4.5秒。マッスルカー的な図太いサウンドを、豪快に放った。
果たして、C 63 AMGは当時のBMW M3を軽く凌駕。何しろ、約40psと約20kg-mも上回っていたのだ。
ところが、AMGはさらに上を用意していた。オプションのパフォーマンスパック・プラスを指定すると、最高出力は486psへ上昇。当時の997型ポルシェ911 カレラやシボレー・コルベット C6を上回るパワーを叶えていた。
アグレッシブなスタイリングも、しっかりAMGしていた。サルーン(W204)にクーペ(C204)、ステーションワゴン(S204)と、3種類から選択できたことも強みだ。
普段使いの実用性では、同時期のアウディRS4アバントより、C 63 AMG ステーションワゴンの方が優秀。荷室の容量は、前者が460Lだったのに対し、後者は495Lと広かったのだから。
操縦性に優れたオールラウンダー
AUTOCARでは、2007年に初試乗。パワートレインの素晴らしさだけでなく、動的能力の優秀ぶりにも舌を巻いている。操縦性に優れ、M3以上のオールラウンダーだと表現したほど。
インテリアの高級感も高く、穏やかに運転していても特別感を伴う。ただし、特に市街地では乗り心地が硬い。AMGサスペンション・パッケージと19インチ・ホイールを組むと、その傾向は一層強まった。
燃費は考えない方が良いかも。多くのオーナーが、6.0km/L前後なことを認めている。もしV8エンジンを思い切り回せば、その半分近くヘ悪化するはず。
特別仕様は複数あるが、AUTOCARで取り上げたいのは、英国ブルックランズに拠点を置くメルセデス・ベンツのスペシャル・プロダクツ部門で作られた、DR520だろう。最高出力は520psまで強化され、英国での販売数は20台のみだ。
W204型は2011年にマイナーチェンジを受け、7速マルチクラッチATとアルミ製ボンネットを獲得。インフォテインメント・システムも更新された。
モデル末期には、スーパーカーのメルセデス・ベンツ SLS AMGの影響を受けた、C 63 ブラックシリーズが登場。0-100km/h加速を4.2秒へ短縮している。
ボディスタイルを問わず、W204型C 63 AMGの魅力は衰えていない。今の中古車市場で検討できる、万能選手的な最高の高性能モデルの1台だといっていい。英国では、嬉しいことに1万5000ポンド(約291万円)程度から探せてしまう。
新車時代のAUTOCARの評価は?
C 63 AMGが、同社の最高傑作であることに疑う余地はないだろう。他のAMGには備わらない、動的な能力の幅を高度に実現している。驚くほど速く、製造品質に優れ、運転していて胸がすくほど気持ちいい。(2007年12月12日)
オーナーの意見を聞いてみる
ジェームス・ロックスバーグ氏
「2011年にC 63 AMG ステーションワゴンを購入しました。走行距離は13万km近いですが、実用的で快適なクルマです。2023年に2000rpm前後での異常振動に気付き、トランスミッションを修理しています」
「ただ、完全には治っていません。ブッシュかエンジンマウントなどが原因の可能性があり、今も調査中です。タイヤは高価で燃費も良くないので、維持費はかかりますが、好きな気持ちは変わりませんよ」
「パワーとサウンド、ハンドリング、すべてが自分を笑顔にしてくれます。今でも、視界が霞むほど速いと感じます。手を加えたいと思う部分は、まったくありません!」
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
M156型V8ユニットは、吸気バルブにカーボンが蓄積することで、アイドリング不調やミスファイアを招くことがある。カーボン洗浄や内部のブラスト処理を受けた過去があるか、確認したい。これまでの整備記録も同時に調べたい。
初期型では、シリンダーヘッド・ボルトが破損しがち。頑丈な社外製ボルトへ交換するオーナーもいる。エンジンノイズが不自然に大きい場合は、タイミングチェーン・アジャスターの劣化か、可能性は低いがカムリフターの摩耗などが考えられる。
トランスミッション
スムーズに変速されるか、試乗で確かめる。フルードとフィルターは、6万4000km毎の交換が推奨されている。後期のマルチクラッチATは、オーバーヒートすることがある。
電気系統
比較的新しいメルセデス・ベンツが故に、インフォテインメント・システムの不調や各センサーのエラーなど、電気系統の不具合は珍しくない。その多くは、専門業者による修理が必要になる。予め、すべてが正常に機能するか試したい。
サスペンション
ブッシュ類とコントロールアーム、ダンパーは劣化する。走行時に異音が出たり、不安定な乗り心地の場合は、リフレッシュを考えたい。
ブレーキ
速いだけに、ブレーキの性能は重要。定期的な点検と、状態の維持が大切といえる。パフォーマンス・パッケージのブレーキは高価だ。
知っておくべきこと
V8エンジンをフロントに積むため、フロントヘビーでテールは振られやすい。タイヤは減りが早いため、状態はこまめに確認したいところ。交換する場合は、コンチネンタルかミシュランを選んだ方が無難だろう。
C 63 AMGは、英国でも道路税が高額。735ポンド(約14万円)が毎年請求される。しかし特別なV8エンジンは、それに見合う喜びを与えてくれる。3種類のボディの内、珍しいのはステーションワゴンだが、英国での価格はサルーンやクーペと変わりない。
英国ではいくら払うべき?
1万2000ポンド(約232万円)~1万6999ポンド(約329万円)
英国では、走行距離の長い複数オーナーのC 63 AMGが中心。サルーンだけでなく、ステーションワゴンも含まれる。
1万7000ポンド(約330万円)~2万4999ポンド(約484万円)
走行距離は長めだが、過去の整備記録が充実した例が増える。歴代のオーナーは少ない方が、全般的にコンディションは良くなる。
2万5000ポンド(約485万円)~3万4999ポンド(約678万円)
多くがマイナーチェンジ前だが、状態の良いワンオーナー車が増える。充実した整備記録が安心材料になる。
3万5000ポンド(約679万円)以上
マイナーチェンジ後のC 63 AMGで極上コンディションは、英国ではこの価格帯から。ブラックシリーズなどレアな仕様も探せば出てくる。
英国で掘り出し物を発見
メルセデス・ベンツC 63 AMG ステーションワゴン(S204/英国仕様) 登録:2008年 走行距離:5万6300km 価格:2万2995ポンド(約446万円)
状態の良いワンオーナー車。慣らし運転が終わったばかり、といってもいい短めの走行距離が魅力だろう。V8エンジンの寿命は長い。
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みんなのコメント
かるーく凌駕してるって自慢げに記事書くなら
同じ排気量で勝負しろよ
それに車重も重い上に燃費も最悪
現代じゃあとても通用せんわ
M3のケツをさんざんまくれるからって航続距離じゃあ話にもならんレベル
排気量が大けりゃあ速くても当たり前
またエコでもないしな
今じゃあクソみたいなクルマ