商品力や販売店の数も影響を与えた
かつて売れ筋だったクルマが、モデルチェンジした途端に売れなくなるということが結構ある。理由はデザインを含めた商品力が市場のニーズにあっていなかったり、グローバル戦略などメーカー側の都合で販売チャンネルが変わったことなど様々。ここでは、そんな“残念過ぎる”車種の中で、現在も売られているモデル3車種について紹介する。
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【トヨタ・プリウス】デザインが個性的すぎ?
プリウスは1997年に世界初の量産ハイブリッド車として発売。2003年に2代目が登場して3ナンバーサイズになり、2009年5月に発売した3代目の先代型は爆発的に売れた。ハイブリッドの刷新で動力性能と燃費を向上させ、安全装備もしっかりと充実させたからだ。
しかも同じ2009年2月にホンダはインサイトを低価格で発表。3代目プリウスも価格を割安に抑えたうえ、販売系列についても初代はトヨタ店、2代目はトヨタ店とトヨペット店だったが、そして3代目はトヨタカローラ店とネッツトヨタ店も加えて全国4900店舗で扱われた。
これらの相乗効果に加えて、販売店では発売の2か月近く前から予約受注を行なったので、発売後1か月の受注台数は18万台を達成(メーカー発表)。納期が最長で約10か月も遅延するなど、爆発的な人気と引き換えに大きな問題となった。この後、納車が進み発売翌年の2010年には約32万台を登録。1か月平均で2万7000台というのは、今日の最多販売車種のN-BOXを上まわる数字だ。
ところが2015年に発売された現行プリウスは、発売の翌年に当たる2016年の登録台数は約25万台。1か月平均で2万台少々と健闘したものの、2018年度は1か月平均で1万台を下まわった。
現行型が先代ほど売れていない原因として、外観と内装のデザインが個性的に過ぎたことが挙げられる。プリウスは法人が営業車として使ったり、中高年齢層が購入することも多い。デザインが過度に個性的だと、敬遠されている面もあるのも事実。2018年のマイナーチェンジでコンサバ路線に修正したが、本質は変わっていない。
逆にTNGAの考え方に基づく新しいプラットフォームの採用などは、安全性を考えればとても重要だが、市場ではなかなか理解されにくい。このほか先代型が絶好調に売れた影響で、現行型が落ち込んだ面もある。2011年に発売されたアクアの好調な売れ行きも影響を与えているとはいえ、2019年度上半期の新車販売台数1位(普通車)をみると今でも人気車であることに変わりはない。
【レクサスLS】ブランド変更と大型化が仇に
現在の日本を代表する高級車といえばレクサスLS。レクサスは、北米ではトヨタの高級車ブランドとして1989年に発足したが、日本は2005年にスタート。そのために北米版レクサスLSは、日本では約16年間にわたり”セルシオ”という車名で売られていたのは周知の通りだ。
セルシオとして最終型になる3代目(30系)は、2000年に発売。発売の翌年にあたる2001年には、1か月に1800~2000台と高額車の割りに販売台数は好調を推移していた。500万円以上のクルマとしては堅調な売れ行きであった。
ところが2006年にレクサスLSに切り替わると、販売台数は低下気味。発売の翌年となる2007年の登録台数は、1か月に1500台前後となった。
さらに2017年に発売された現行型は、2018年の登録台数は1か月に400~500台と激減。売れ行きが下がった背景には、まず販売店舗数がある。セルシオの時代は、トヨタ店とトヨペット店の合計約2000店舗が扱ったが、レクサスは約170店舗だから販売網は10%以下に縮小されたのだ。
しかもレクサスの出店は都市部が中心なので、1県に1店舗しかない地域も多い。どこでも、誰でも公平に購入できるトヨタ車の素晴らしさが、レクサスでは失われている。
そして、商品力は先代LSは満足できたが、現行型は全長5235mm、全幅1900mmと大柄。先代LSのユーザーからは「自宅の車庫に入らない」といった不満の声も挙がっている。そこで車内の広さが同等でボディが少し小さなESに乗り替えるユーザーもいるが、LSからESではグレードダウンになるというジレンマがあるのも事実。これを嫌ってメルセデスベンツEクラスに乗り替えるユーザーも少なくない。
メルセデスベンツはブランド力が高く、レクサスLSからEクラスに移っても吊り合うわけだ。つまりLSのサイズアップで、レクサスが顧客を失った面もあるといえよう。
このほか現行LSは価格も高く、大半のグレードが1000万円オーバー。不利な条件が重なって売れ行きを下げた。ユーザーも販売会社も、セルシオを売っていた時代の方が幸せだったと思うのだ。
【スズキ・ワゴンR】ハイト軽ワゴン人気が影響
ワゴンRは軽自動車の人気車種だ。1993年に発売された初代モデルは大ヒットしたことから、各メーカーが背の高い軽自動車(軽ハイトワゴン)を扱うようになった。
ちなみに初代ワゴンRは1か月の販売目標を5000台に設定して発売。年を経るごとに売れ行きを伸ばし、1996年には1か月平均で1万7000台に達したのだ。通常は時間が経過すると売れ行きを下げるが、初代ワゴンRは逆で、着実に浸透していった様子が分かる。
直近では2012年に発売された5代目の先代型が、2013年には18万6000台を販売。1か月平均にすると1万5500台と好調キープ。
ところが2017年に発売された現行型は、翌年の2018年に10万8000台、1か月平均では9000台しか売れていない(それでも売れている部類)。
理由は大きく分けて2つある。まずはワゴンRスティングレーなどのフロントマスクが、いまひとつ人気を得ていないこと。商品力は相応に高く、軽量化とマイルドハイブリッドの併用に伴う優れた燃費性能、進化した緊急自動ブレーキなどが魅力だ。ただし、これらは常識になりつつあり、インパクトは乏しい。
2つ目の理由は同じスズキのスペーシアが好調に売れていること。今はN-BOXがヒットした影響もあり、軽自動車では全高が1700mmを超えるスライドドアを備えた車種の人気が高い。売れ筋がワゴンRからスペーシアに移り、販売台数に変化が生じた。
2013年の軽自動車市場における販売順位は、1位はN-BOXだが、2位以下はムーヴ、ワゴンR、ミラ&ミライース、タントと続く。2018年はN-BOX、スペーシア、デイズ&デイズルークス、タント、ムーヴ&ムーヴキャンバスだから、顔ぶれがかなり違っている。
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