この記事をまとめると
■ターボチャージャーと並ぶ過給機にスーパーチャージャーがある
ターボに比べて日陰の存在! ほぼ絶滅したスーパーチャージャー搭載でヒットを飛ばしたクルマ5選
■スーパーチャージャーはエンジンの動力を利用して加圧した空気をエンジンに送り込む
■スーパーチャージャーは出力損失とコスト、重量などの問題で使われなくなってきた
CO2削減により再びスポットが当たる過給機
自動車の二酸化炭素排出削減が注視されるなか、現在めっきり目にすることのなくなった過給機がスーパーチャージャー(以下SC)だ。アクセルオン(エンジン回転上昇)と過給効果のタイミングが一致し、タイムラグのない過給作用によってリニアなエンジンレスポンス、リニアなパワー/トルクの立ち上がりが可能な過給装置である。
SCは、加圧(圧縮)した空気をシリンダー内に送り込む働きはターボチャージャー(以下TC)と同じだが、SCはエンジンの動力によって、TCは排気流によって過給作用を行う点が異なっている。
両者のメリット/デメリットは、SCはエンジン動力によって過給機が駆動されるため、エンジン回転の上昇と一致した過給作用が得られる反面、エンジン動力で駆動するため出力損失があること、容積過給なので高回転域で過給が追い付かなくなるケースが生じる可能性(設定次第だが)があることだ。
一方、TCはこの逆で、排気管から捨てられる排気ガスのエネルギーを使って過給機を駆動するため、エンジンでの出力損失が生じない反面、タービンの回転立ち上がりにわずかな時間を要すること、合わせてタービン(コンプレッサー)からシリンダー内まで圧縮空気の移動距離があるため、アクセルオン(ドライバーがパワー上昇を望んだタイミング)から実際に増強されたパワーが発生するまで時間的なズレ(ラグタイム)が生じることだ。
コストや重量などの面でターボに劣るスーパーチャージャー
市販車への過給機装着は、1970年代前半から始まったが、使われたのはTCで、採用が本格化するのは1980年代に入ってからだった。過給特性の改善が図られ、アクセル操作に対して精度の高いリニアリティが伴うようになるのは1990年代に入ってからだった。
こうした状況背景で、TCに対してコスト高であり、過給の回転ゾーンが限定されがちなSCは、もともと市販車の過給機として少数派だったが、TCの過給特性が洗練されることでさらに数を減らしていくことになる。
国産車では、先代の日産ノートがSCを装着したが、現在のパワーユニットはe-POWERのみ。マツダがSKYACTIV-Xと名付け、MAZDA3で低中速過給を補助する目的で使われている例が目に出来る程度だ。外国車ではポルシェカイエンやジャガーFタイプ、ロータス・エリーゼ(エンジンは異なるがエキシージ、エボーラも装着)などで搭載例を目にできるくらいである。
低公害性を重視する現在の車両作りでは、ハイブリッド方式で内燃機関の効率向上を目的に過給機を装着する例が大半だが、そこで使われる過給機のほとんどはTCである。SCはその過給特性(出力損失)とコスト、ユニット重量などの問題で使われなくなってきたのが現状で、将来的にも活用される可能性は低いと見てよいだろう。
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