新型アクティブツアラー発売 競合は?
執筆:Wataru Shimizudani(清水谷 渉)
【画像】BMW 2シリーズ・アクティブツアラー【Tクラス/Bクラスと比較】 全91枚
6月14日。BMWの日本法人(BMWジャパン)は、コンパクトMPVの「2シリーズ・アクティブツアラー」をフルモデルチェンジして発売した。
BMWジャパンではSAT(スポーツ・アクティビティ・ツアラー)と称しているが、いわゆるMPV(マルチパーパス・ビークル)にあたる。ミニバンとは異なり2列シートで、車高を少し高めて居住スペース・荷室に余裕を持たせた2ボックス・モデルだ。
今回、フルモデルチェンジされた2代目の外寸は、全長4385×全幅1825×全高1565~1580mm、ホイールベースは2670mm。従来型よりわずかに大きくなったが、ホイールベースは変わらない。
スタイリングも従来型を踏襲しているが、最近登場した他のBMW車同様、伝統のキドニーグリルは八角形をイメージして大型化。
後席は3分割可倒式で、座面は最大130mmのスライドが可能。ラゲッジスペースは、リアシート使用時で415~470L、シートを倒せば1405~1455Lの広さを誇る。
日本仕様のパワートレインは、156ps/23.5kg-mを発生する1.5L直3ターボ(218 i)と、150ps/36.7kg-mを発生する2.0Lの直4ディーゼルターボ(218 d)の2種。トランスミッションは、いずれも7速DCTで前輪を駆動する。
その価格帯は、418万円~476万円。なお、従来型でラインナップされている、3列シートのミニバンタイプ「グランツアラー」は、現段階では新型の登場はアナウンスされていない。
では、日本において2シリーズ・アクティブツアラーのライバルとなり得るクルマを挙げながら、今後のコンパクトMPVというマーケットについても考えてみたい。
1. メルセデス・ベンツBクラス
BMW 2シリーズ・アクティブツアラーの最大のライバルといえば、やはりメルセデス・ベンツのBクラスであろう。
というよりは、Bクラスがヨーロッパでも日本でもそれなりの成功をおさめて、このマーケットが存在すると認識したBMWが、対抗モデルとしてアクティブツアラーを登場させたといったほうが正しいのだろう。
さて、Bクラスは2005年に初代が登場し、現行型は3代目。外寸は、全長4425×全幅1795×全高1565mm、ホイールベースは2730mm。新型2シリーズ・アクティブツアラーより全長とホイールベースは少し長いが全幅はわずかに狭いというサイズ感だ。ラゲッジスペースは370~1210L。
Bクラスは、ワイドスクリーンのインテリアや対話型インフォテインメントのMBUXを採用するなど、安全&快適装備はプレミアムブランドらしく充実させている。
現在、日本仕様のパワートレインは、1.4L直4ガソリンターボと2.0L直4ディーゼルターボを設定。価格帯は、467万円~499万円。
ところで、メルセデス・ベンツでは拡大しすぎたAクラス姉妹車のラインナップを、次期型では整理しようという動きがある。販売台数の拡大から車種を絞った「量より質」へ再転換を目指すようだが、そうなると、Bクラスの後継モデルは先日発表されたTクラス(これについては後述)にバトンタッチされ、フェードアウトする可能性も少なくはないと思われる。
2. ルノー・カングー
ヨーロッパでは、2シリーズ・アクティブツアラーの直接的なライバルにはならないかもしれないが、日本市場では比較検討される対象となりうるのが、ルノー・カングーだ。
カングーの初代は1997年に登場(日本では2002年に発売)し、現行型は2007年に発表(日本では2009年に発売)された2代目にあたる。ヨーロッパでは商用車がメインだが、日本ではコンパクトMPVとして高い人気を集めている。
サイズは、全長4215×全幅1830×全高1830mm、ホイールベースは2700mm。初代は日本でも5ナンバーにおさまるサイズだったが、現行型は全幅が拡大して3ナンバーに。
それでも、日本の街中でも扱いやすい適度なサイズと、初代から引き継がれる可愛らしいスタイリングに、リアのスライドドアや観音開きのテールゲートなど、使い勝手の高さもあって日本では人気車となっている。
現行型の日本仕様のパワートレインは、1.2L直4ガソリンターボがメインだが、トランスミッションは6速DCTと6速MTが選べた。価格帯は、254万6000円~264万7000円。
ところで、カングーはフランス本国では2021年に新型が発表され、間もなく日本にも導入が開始される予定だ。一新されたスタイルは、現行型ほどの可愛さはなく、サイズも全長は約4.5m、全幅は約1.9mと大きくなった。また、新型カングーの姉妹車としてメルセデス・ベンツから「Tクラス」も発表された。
これらのモデルが日本市場でどう動くのかは、新型2シリーズ・アクティブツアラーの販売動向とも少なからず影響があることは間違いなさそうだ。
3. ミニ・クラブマン
プレミアム・ブランドのコンパクトMPVとして考えれば、ミニのクラブマンも日本市場では比較検討される対象となるだろう。
BMW傘下となったミニは、初代が2001年に発表され、現行型は2013年に発表された第3世代にあたる。
ミニ・クラブマンはミニのステーションワゴン版であり、サイズは全長4275×全幅1800×全高1470mm、ホイールベースは2670mm。
もはや3ナンバーとなったミニは「ミニ」とは呼びがたいが、サイズ的には全高以外は新型2シリーズ・アクティブツアラーと大きく変わらない。
それもそのはず、ミニ(クロスオーバーを除くクラブマン以外のモデルも)と2シリーズ・アクティブツアラーはプラットフォームの基本的な部分は共通であり、パワートレインも共有している。日本仕様のパワートレインは、1.5L直3ガソリンターボ、2.0L直4ガソリンターボと同ディーゼルターボが設定されている。
ミニ・クラブマンはコンパクトMPVというよりはワゴンだが、360~1250Lという荷室や、ジョン・クーパー・ワークスのようなホットバージョンもラインナップさせるなど、適度なサイズと使い勝手の高さで、ミニの中でも人気は高い。価格帯は373万円~470万円。
独特のスタイリングやインテリアはミニならではの世界をつくり出しており、カングーとは微妙にオーナー層は違うがファンは多い。コンパクトMPVブームが下火になっても、ミニファンによってクラブマンの人気は継続していくだろう。
4. ゴルフ・ヴァリアント
ドイツのブランドからライバルとなり得るもう1台として、VWゴルフ・ヴァリアントをリストアップしておこう。
2021年に8代目になった、Cセグメントの世界的なベンチマークであるゴルフ。そのワゴン版「ヴァリアント」は、1993年に3代目ゴルフから追加設定された。
現行型ヴァリアントの外寸は、全長4640×全幅1790×全高1485mm、ホイールベースは2670mm。全長はハッチバックのゴルフより34cmほど、ホイールベースも5cm長い。サイズアップ分は後席・荷室の拡大に充てられている。
現行型はルーフラインを後方に向かって下げたり、リアウインドウの傾斜角を強めるなど、スタイリッシュ。それでも、荷室は611~1642Lと先代より拡大されている。
日本仕様のパワートレインは、1.0L直3と1.5L直4のガソリンターボ2種で、いずれも48Vマイルドハイブリッドを組み合わせている。価格帯は316万2000円~403万3000円。
日本市場におけるVWは、良くも悪くもゴルフ(ハッチバック)の出来が良すぎるため、他車との比較などせずに指名買いする人が多いという。それでも最近はポロのユーザーも増えてきたが、ゴルフからダウンサイジングしたり、またゴルフから上のモデルに買い換える人は少ない。
また、VWではティグアンなどのMPVやコンパクト・ミニバンのトゥーランといったRV系の選択肢も増え、ゴルフ・ヴァリアントはそれなりの需要はあるものの、ハッチバックほどの人気は集めていない。
SUVブームの陰で MPVの今後は?
かつて、メルセデス・ベンツの初代Bクラスが登場した2000年代前半、5代目ゴルフに車高を高めたコンパクトMPV「ゴルフプラス」を設定し、これがゴルフの新たなスタンダードになるかと思われた。
しかし、あまり人気を集めずにフェードアウトしている。
地域・国を問わずSUVブームが続く今、コンパクトMPVというマーケットは世界的に縮小傾向にある。
ヨーロッパではより実用的な商用車にシフトし、日本ではコンパクトクラスでもミニバンという独自のマーケットが確立している。
今後は、SUVやミニバンのテイストを組み込んだ、クロスオーバー的なモデルへの進化が、生き残りの方策かもしれない。
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みんなのコメント
4人家族で嫁も運転しやすいサイズ感で遠出もこなせるオールラウンダーと考えると興味はあるが、国産の似たクラスと比べて100万以上高価でハイオクだと言われるとやはり躊躇してしまうな。
まあ、コスパなんか気にするやつが外車なんか興味持つなって話なんだがね。。