今から20年ほど前、新しい世紀に変わる頃。クルマに対する考え方も変わり始めていた。そんな時代の輸入車ニューモデルのインプレッションを当時の写真と記事で振り返ってみよう。今回は「メルセデス・ベンツ SL500」だ。
メルセデス・ベンツ SL500(2002年)
去年(編集部註・2001年)のフランクフルト モーターショーでワールドプレミアされ、東京モーターショーで日本初お披露目されたメルセデス・ベンツの新型SL。今回のモデルで5代目にあたるわけだが、その新型SLが、いよいよ日本にやって来た。今回は高速を中心とした短時間の試乗だったが、そのパフォーマンスの一端は十分に堪能することができた。
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いまのところ日本仕様はSL500のみで、ハンドル位置も左のみとなっている。昨年のフランクフルト モーターショーに出展されていたSL55 AMG(5.5LのV8 3バルブSOHCにスーパーチャージャーを装着して最高出力は476ps/最大トルクは71.4kgm!)や、右ハンドル仕様の導入は、もう少し先になりそうだ。
真冬とはいえ、SLはオープンで乗らねば、とヴァリオルーフのスイッチをONにする。開閉に要する時間は約16秒だから、信号待ちの間にも簡単にできる。SLKをはじめ最近のオープンモデルには電動開閉トップが採用されるようになったが、クローズドで乗る機会の多い日本ではやはり便利な装備といえるだろう。
5LのV8は基本的に従来型と変わらない3バルブのSOHCで、最高出力は306ps/最大トルクは46.9kgmというパワースペックも変わっていない。だが、車両重量1840kgのボディには十分なパワーだ。高速をそれなりのペースで飛ばすと、まさに水を得た魚のごとく軽快に走ってくれる。その走りっぷりは実にソフィスティケイトされており、きわめてリラックスして楽しむことができる。
メッシュ素材のドラフトストップはオープン走行時にはきわめて有効で、キャビンへの風の巻き込みを防いでくれる。だが後方視界は今ひとつだ。クローズドにすれば、フィクスドトップのクーペと変わらないほど剛性はしっかりしている。
また、前255/40R18、後285/35R18という、かつてのノーマル メルセデスでは考えられないようなワイドなタイヤを履いているにもかかわらず、ハーシュはまったく気にならない。バネ下の重さは一切感じさせず、ドタバタした印象はないのはさすがだ。ESP(エレクトロニック スタビリティ プログラム)をはじめとした、さまざまな電子デバイスを多用している割りには、操縦フィールは自然だ。ただ、高速時のブレーキングのみ、効きはいいのだが人工的な感覚が少し気になった。
適度な包まれ感のあるコクピットにオープンでも視認性の高いメーター、わかりやすくて使いやすいスイッチ類など、インテリアもいい雰囲気だ。メルセデスは以前よりセンスが良くなり、高級感の出し方がうまくなったようだ。ドイツの工業製品的なデザインは、アウディTTなどの影響も受けているのかもしれない。
メルセデス・ベンツ SLは、経済的に余裕があってスペシャルティカーが欲しい人には最高の1台だ。スタイルに負けないパフォーマンスは、さすがのものだし、オープン走行時にはヒーターが良く効いたことも付け加えておこう。
■メルセデス・ベンツ SL500 主要諸元
●全長×全幅×全高:4535×1830×1300mm
●ホイールベース:2560mm
●車両重量:1840kg
●エンジン形式:・3バルブSOHC・FR
●排気量:4965cc
●最高出力:225kW(306ps)/5600rpm
●最大トルク:460Nm(46.9kgm)/2700-4250rpm
●トランスミッション:電子制御5速AT(ティップシフト付き)
●タイヤ:前255/40R18、後285/35R18
●車両価格(当時):1280万円
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