ベントレー史上最強のW12エンジン搭載
ベントレーは、将来のEVモデルの姿を予見させる、超少量生産の新型クーペ「バトゥール(Batur)」を発表した。
【画像】ベントレーの未来を予見する少量生産車【マリナー・バトゥールをバカラルやコンチネンタルGTと写真で比較】 全94枚
この限定車の発売は、20年にわたりベントレーのモデルに搭載されてきた6.0L W12エンジンの終幕を告げるものでもある。
モントレー・カー・ウィークにおいて、500人のベントレーオーナーの前で公開されたバトゥール。2023年半ばに納車が開始される予定だ。
ロングホイールベースのコンチネンタルGTをベースにした2ドア・クーペで、まだ開発中だが少なくとも最高出力740ps、最大トルク102kg-mを発揮するとされるW12を搭載している。これにより、ベントレーの公道モデルとしてはこれまでで最も強力なモデルとなる。
その力強いエンジンに合わせて、3チャンバー式エアサスペンション、48V電動アンチロールコントロール、電子リミテッドスリップデフ(トルクベクタリング付き)、後輪操舵システムなど、ベントレー最新のシステムを採用した。
ベントレーのコーチビルド部門であるマリナーによって、英クルーで手作業で製造される予定。昨年12台の限定生産モデルとして登場したバカラルの後継となる。
2億円超の限定車 すでに完売
インドネシアのバリ島にある火山湖にちなんで名付けられたバトゥールは、18台が生産される予定で、オプションと税抜きで165万ポンド(約2億6600万円)となっているが、すでに完売している。購入者の中には、バカラルを納車したばかり、あるいは現在も納車を待っている人もいるという。バカラルは現在、12台のうち8台が製造・納車されている。
新型バトゥールは、昨年初めに入社したデザインディレクター、アンドレアス・ミントが率いる新しいデザインチームによる最初の作品である。ミントは、バトゥールのデザインについて、2025年に登場予定のベントレー初のEVを示唆するものだとしている。
ミントは、ジュニアデザイナーとしてフォルクスワーゲン・グループに入社して間もない2003年、ベントレーのコンセプトカー「ユーノディエール」を担当した経験がある。バトゥールを担当するにあたり、ベントレーというブランドのデザインを改めて見直し、なぜこの会社が存在し、何が得意なのかといった根本的な部分に立ち戻って研究を行ったという。
この地道なリサーチにより、「力強い」「インスピレーション」「調和」という3つのワードを特定。バトゥールのシンプルで飾り気のない、彫刻的なフォルムを作り出した。
彼はこう言っている。
「装飾は必要ありません。わたし達は、高級車に対するお客様の優先順位が変化していると考えています。彼らは、クルマに派手さではなく、静かな感動を求めるのです。2次元のグラフィックから、光と影を多用した表面のデザインへと移行しているのです」
デザイナーが語る新デザインの肝
ミントによると、ベントレーの将来のデザインにふさわしいのは、多くの高級車メーカーが掲げる「強く、筋肉質」な特性ではなく、次の3つの要素だという。
1つ目は、「休んでいる獣の姿勢」と呼ばれるものだ。バトゥールにはくさび状のデザインがなく、後ろ足の上に座り、いつでも動き出せるように見える。
2つ目は「アップライト・エレガンス」。フロントグリルを現代風にアレンジし、直立させることで、クルマに頼もしい表情と力強いスタンスを与えることができるという。
3つ目の要素は「エンドレス・ボンネット」だ。ミントはこう語っている。「長いボンネットは、高級車において権力と名声の証となります。バトゥールのクリーンなフォルムの中で、唯一のアクセントとなる要素です。また、視覚的な質量をリアに移動させ、リアアクスルに乗っているような印象を強め、ハンチに力強さを与えています」
バトゥールは、究極のパーソナライゼーションと、贅沢な長距離高速グランドツーリングを実現するために設計された2シーターである。エクステリアと同様、インテリアもあらゆる面を顧客の好みに合わせてカラーリング、カバーリングすることが可能だ。シートトリムはスコットランド産のレザーで、イタリア産に比べて遠距離輸送の必要がないため、低炭素と言われている。また、耐久性に優れたスエード調の素材「ダイナミカ」も用意されている。
内装材には天然繊維複合材など幅広い種類の複合材が用意され、ダッシュボードのパネルにはW12エンジンの音の周波数が描かれる。フロアマットはリサイクル糸を使用したもので、ベントレー初の試みだ。
バトゥールの製造は、バカラルの作業が終了次第、開始される。1台1台のパーソナライズのレベルが高いため、製造には「数か月」かかるだろうと述べている。
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