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【小粒でピリリと辛い人参?】ロームに聞いた、半導体がEV進化のためにしてくれること

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【小粒でピリリと辛い人参?】ロームに聞いた、半導体がEV進化のためにしてくれること

2012年にはすでに車載向け使用を開始

ジーカーと言えば、ボルボやロータスを有し、今や世界トップ10規模となったブランドであるジーリーが、現在力を入れている電気自動車専用のブランドだ。ここにきて日本への展開についても漏れ聞こえてきているジーカーの3車種に、日本最大手半導体メーカーであるロームの半導体が採用された。

【画像】フランス・ヴァレオ社とパワートレインを共同開発 画像はこちら 全2枚

ロームとジーリーの両社は2018年からすでに技術交流を開始しており、2021年にはSiC(シリコン・カーバイド)パワーデバイスを中心に戦略的パートナーシップを締結している。

ちなみにロームは、2010年に世界で初めてSiC SBD(ショットキー・バリア・ダイオード)とSiC MOSFET(メタル・オキサイド・セミコンダクター・フィールド・エフェクト・トランジスタ) の量産に成功し、2012年には車載向けの使用を始めたトップランナー。現在の『SiC MOSFET』は第4世代となる。

EVの駆動部は、誕生から数十年の間にさまざまな進化を遂げてきた。xEVと呼ばれる次世代電動車では、『3in1』と呼ばれる駆動用モーター、減速機、そしてモーターに回るタイミングを指示するトラクションインバータが一体になっているものが一般的だ。ジーカーにおいては、このトラクションインバータに、ロームの第4世代SiC MOSFETベアチップが使用されている。

MOSFETとは、電界効果トランジスタ (FET) の一種で、トラクションインバータ内部においてスイッチのような役割を果たすもの。つまり『SiCでできた、とても小さい電流制御装置』がSiC MOSFETだ。

硬くて扱いにくいけれど高性能、それがSiC

そもそもSiCとは素材の名前で、正しくはシリコン・カーバイドという。Si(ケイ素)とC(炭素)で構成される化合物半導体だ。これまで使用されてきたSi(シリコン)に比べると、SiCは絶縁破壊電界強度が10倍、バンドギャップが3倍という性質を持つ。熱に強くて、高温動作、低損失などが求められるEVのトラクションインバータには最適な素材だ。

一方、とても硬い素材となるので、磨いたり切ったり、加工するのが難しい。硬さの指標となる新モース硬度でいうと、ダイヤモンドが15のところ、13という数値だ。加工が難しければ、その分コストもかかる。

それでもSiCのMOSFETを採用したトラクションインバータを搭載すれば、高効率化により電費にして3~7%の改善が見込めるという。しかも、高温耐性を生かして、インバータの冷却器の重量、サイズを小さくすることも可能。つまり、システムコストで考えると、費用削減につながる。

さらに、リチウムイオン電池の容量を小型化すれば、車重は軽くなるし、デザインの自由度も広がって、より空気抵抗を考慮したデザインにすることもできる。そうすればさらに電費はよくなる、という相乗効果が見込めるというわけだ。

『小さくて軽くて性能のいい駆動部を作る』ということが、ロームの半導体がEVの進化において大いに役立つ部分だと言えるだろう 。

様々な形態で市場に提供。その理由とは

今後、トラクションインバータ向けの市場が大きくなっていくことを見越し、ロームではすでに生産拠点を整えている。また、第5世代のSiC MOSFETを2025年に市場投入するとともに、第6、第7世代の投入計画を当初から前倒しする計画だという。

なお、ロームは同社の半導体を、薄い板状の『ウエハ』と呼ばれる大元のものから『ベアチップ』、『ディスクリート』、『モジュール』といった様々な形態で提供する。SiCにおいてこれらの様々な形態で提供ができる企業は世界でも数社しかないという。

例えるならば、人参を畑ごとでも、生でも、皮をむいて下茹でした状態でも、そのままお皿に乗せられるようにグラッセでも販売できる、ということ。しかも、SiCの普及を推進するため、いわゆる同業他社にも販売しているという。この分野のリーディングカンパニーである矜持だろう。

さらに、メーカーが自社でこれらの人参を使って調理をする際には、 これまで積み上げてきたノウハウと独自技術であらゆるリクエストに応えてくれる。つまりグラッセにする際に、「うちはもっと歯ごたえを残して」とか「バターの風味を強く」みたいな相談に乗ってくれる上、「歯ごたえを残すなら、ゆで加減だけでなく面取りの角度を変えてみては」、「ただバターを増やすのではなく、下茹での際の塩の分量を」といった提案をしてくれるというわけだ。

そして、これらの提案をしてくれる営業やエンジニアによるサポート体制を世界各地の拠点に構築しているというから、グローバルで採用が加速している点にも納得だ。実際、フランスのTier 1であるヴァレオ社に対してもSiCモジュールを提供し、パワートレインを共同開発していくという。

今後、様々なメーカーが試行錯誤し、それぞれが目指すクルマ作りを実現するために、半導体の力で寄り添う存在、それが『ローム』。小さな小さな半導体がxEV、ひいては自動車業界の発展に寄与していることに、クルマの中身のそのまた中身を覗いてみて、気付かされた。

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