1955年のスズキ・スズライトから始まる本格的軽自動車の歴史。
もはや伝統といってもいい素晴らしきカテゴリーなのだが、海外にはない日本独自のカテゴリーゆえか、その独特の進化の過程で多くのユニークなクルマが誕生してきたのも事実。
改良でターボ車消滅!! スイフト「RSt」 なぜひっそり廃止に?
そんなユニーク=ひとクセある=曲者、な軽自動車を古今から集めて紹介するのが本企画。いずれも妙に魅力的だったりするから困ったものである。
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※本稿は2020年4月のものです
車両解説:伊達軍曹/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年5月10日号
■ダイハツ フェローバギィ(1970年)
軽商用車の車台にFRPのオープン2座ボディを載せ、1970年に100台限定で発売。排気量356ccはフェラーリ12気筒の1気筒ぶん以下だが、インパクトはフェラーリ以上?
●曲者度…★★★★★
■三菱 ミニカスキッパー(1971年)
ミニカ70ベースのクーペとして1971年に発売。ギャランGTOの縦横比をフォトショでいじった感じのフォルムは意外とカッコいい!
●曲者度…★★★★☆
■ホンダ ライフピックアップ(1973年)
1973年に発売されたライフステップバンがベースの350kg積みピックアップ。……デザインこのままで中身だけ変えて売れば、今の若い人に売れるんじゃない?
●曲者度…★★★☆☆
■スズキ マイティボーイ(1983年)
2代目セルボの後ろ側ルーフをぶった切ったピックアップで、登場は1983年。CMで「マー坊とでも呼んでくれ」と自分で言うなど、すべてにおいてクセが強かった。
●曲者度…★★★★★
■ホンダ 初代トゥデイ(1985年)
1988年のマイナーチェンジで、軽のくせになぜか8000回転まで回るE05A型エンジンを採用。ホンダがいい意味で“暴走”していた時代の曲者だ。
●曲者度…★★★☆☆
■ダイハツ 2代目ミラ ウォークスルーバン(1988年)
クルマから降りずに運転席と荷室を行き来できる、ミラベースのウォークスルーバン。写真は1988年登場の2代目だが、初代は「軽規格内でコレをやったか!」と喝采を浴びた。※1988年は自動車型式指定取得時
●曲者度…★★★★★
■三菱 6代目ミニカDANGAN ZZ(1989年)
アルトワークスに対抗すべく、クラス初の5バルブ直3DOHCターボを搭載して1989年に登場。1980年代末期は皆“暴走”する時代だった。
●曲者度…★★★★☆
■ホンダ ビート(1991年)
女子からすると「カワイイ軽」かもしれないが、軽初のオープンモノコックミドシップで、四輪独立懸架に4輪ディスクブレーキ等々と、男の情念のすべてが詰まっていた。
●曲者度…★★★★☆
■スズキ カプチーノ(1991年)
これまた女子からすると「カワイイ」だが、「ターボエンジンを縦置き!」「フロントミドシップで前後重量配分51対49!」などなど、男の夢がこれでもかと詰まっている。
●曲者度…★★★★☆
■スズキ アルトハッスル(1991年)
直也さん、出番です
3代目アルトのBピラー以降の全高を1600mmまで高め、ちょいフランス車っぽいおしゃれな“フルゴネット”にした軽。だが「ハッスル」というダサめな車名ですべてが台無しに。
●曲者度…★★★★☆
■ダイハツ リーザスパイダー(1991年)
何を思ったかリーザの屋根を切って幌を(とりあえず)付け、なぜか2名乗車に変更した。ボディ剛性はユルユルでトランクもなく、当然ながらぜんぜん売れず。
●曲者度…★★★★★
■ダイハツ ミラX4R(1991年)
モータースポーツ用ベース車として1991年に登場。ミラX4にクロスミッションとボールベアリング式ターボをブチ込み、内外装も簡素化。まさに“男のクルマ”。
●曲者度…★★★★★
【閑話休題】軽の世界の革命児たち
65年におよぶ軽自動車の歴史において、「革命的」といえるほど軽自動車界隈に衝撃を与えたモデルを紹介する。
まずは1987年登場の初代アルトワークス。搭載する550ccの3気筒DOHCターボは64psを発生。現在まで続く出力規制の発端となった。
初代アルトワークス(1987年)
次は1993年デビューの初代ワゴンR。軽の弱点である車内の狭さを室内高を稼ぐ方向で突破。これも現在まで続くトールワゴンの流れを作ったエポックメイキング車だ。
初代ワゴンR(1993年)
2003年デビューの初代タントも革命的軽自動車といえる。トールワゴンをさらに上回る室内高を与えたことで、軽=狭いの常識を完全に過去のものにした。エライ!
初代タント(2003年)
■マツダ オートザムAZ-1(1992年)
ガルウイングドアとFRPの軽量ボディ、そしてミドシップレイアウトを伴って1992年に登場。スーパーカー消しゴムのような形だが、そのステアリングはスーパーカー以上にクイックで、クセが強かった。
●曲者度…★★★★★
■ダイハツ ミラRV-4(1992年)
ミラTR-XX X4の最低地上高を上げてバンパーガードとアンダーガードなどを付けた、日本における「SUV風乗用車」の元祖として1992年に発売。売れなかったが、先見の明はあった。
●曲者度…★★★★☆
■スバル ヴィヴィオ T-Top(1993年)
「軽規格の4座オープンクーペ」という、よくわからないがとにかく空前絶後のクセ強モデル。ルーフは外してトランクに収容するタルガトップ方式。
●曲者度…★★★★★
■スバル 5代目サンバーディアスクラシック(1993年)
長崎のハウステンボス内で使うために作られたが、東京モーターショーへ出展したところ大好評となり市販。“レトロカー”の元祖だ。
●曲者度…★★★★☆
■ダイハツ ミゼットII(1996年)
ハイゼットトラックの駆動系などを流用した超ミニマムな1人乗り軽商用車。途中から2人乗りも追加されたが、その狭さを見るにつけ、つくづく「男とは乗りたくない」と感じさせた逸品。
●曲者度…★★★★★
■三菱 7代目ミニカタウンビーII(1997年)
7代目ミニカのレトロ風バージョン。だがレトロというより前から見ると「出目金」で、後ろから見ると深海魚のよう。これを見ると金魚すくいまたは釣りがしたくなる。
●曲者度…★★★★☆
■ホンダ 2代目Z(1998年)
「4WDのエンジン縦置きミドシップ!」というのは、なんとあのランボルギーニなどと同じだが、実際は四駆の軽トラからの流用。
●曲者度…★★★★★
■スズキ ツインハイブリッド(2003年)
「軽初のハイブリッド」として登場。とはいえ重い鉛蓄電池16個をシート後部に搭載しただけ。なんかもうすごい。発売からしばらくは改造車扱いだった。
●曲者度…★★★★★
■ダイハツ 2代目オプティ(1998年)
軽史上唯一、独立したトランクを持つノッチバック4ドアハードトップセダン。カッコいいかどうかはさておき、その偉業は讃えたい。
●曲者度…★★★★★
■スズキ keiスペシャル(1999年)
スズキKeiのSタイプにスポーティな専用内外装を与えた特装車。シリーズ唯一の2穴エアダクトが素敵だが、片方の穴はダミーだった。
●曲者度…★★★☆☆
■ケーターハム SEVEN160(2014年)
スポーツカーの“原点”といえるケーターハム セブンに、スズキ製の660cc直3ターボを搭載。黄色いナンバープレートが付く、れっきとした軽自動車だが、0-100km/h加速はわずか6.9秒!
●曲者度…★★★★★
* * *
■まとめ
スポーツカーあり、SUVあり、ピックアップトラックあり、オープンカーあり。軽自動車界には宝石のごときキラメキを放っていた曲者が多く存在していたことが、おわかりいただけたことだろう。軽自動車は日本の宝。今後も多くの曲者が生まれる土壌を残すベく、愛し続けてほしい。
【番外コラム】そして時代は令和 現代に生きる曲者軽自動車たち
どこか冷めた空気の漂う令和の現代にも、実は特徴アリアリの曲者は存在している。ここでは4台のみを紹介するが、N-BOX、タントといったスーパートール軽をさらに上回る全高を持つウェイクも、曲者の資格充分といえるだろう。次期型はないかもしれないが。
●S660…ビートの再来。当時のライバルが軒並み消えたことを考えると立派
●ジムニー…丸目のキュートさとゴリマッチョな悪路走破性が曲者マッチング
●コペンGR SPORT…ダイハツと同じ名前のままトヨタでも販売される。曲者じゃ!
●ムーヴ キャンバス…初音ミクがらみのオプションを用意して二次元厨を悩殺。やるな
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