「Kトラワールドシリーズ」に150馬力フルチューンの「キャリイ」で参戦
昔からレーシングカート遊びが大好きで、最高峰のスーパーカートに乗り、全日本選手権への参戦経験を持つ“アポロ”さん。その後、ステップアップしてFJ1600や耐久レースを含めたさまざまなレースに参戦。そんな彼が今、一番ハマッているレースが異色の軽トラのレースということで、スズキ「キャリイ」で参戦しているそうです。レース専用にフルチューンされた軽トラの中身とは?
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軽トラレースの世界は甘くはなかった
はじめは2010年に静岡県の「GTカー・プロデュース」が「走り好きの軽トラ乗りのためのスポーツ走行会」として開催した、サーキット体験スポーツ走行イベントだったが、次第に盛り上がりを見せ、レース形式にした方が面白いという意見から、2015年からイベント名を「Kトラワールドシリーズ」に改めて中部地区のサーキットを転戦し、年間4戦のシリーズポイントを競い合うイベントとして開催。今ではすっかり定着して、このレースに出るための専用マシンを製作して挑むオーナーも多い。
“アポロ”さんもまさにそのひとりで、インターネットでこのレースのことを知り、その珍しさから興味本位で参加。本格的なレースカーを作るのは大変だが、軽トラならばやれることが限られる。だから、費用負担も少なくて楽しめるかも……なんて安易な考えで自宅にあったスバル「サンバー」のタイヤとホイールだけ変えてレースに参加。おそらく自分の腕なら10位以内に入れるだろうなんて思っていた……が、これが大きな勘違い。軽トラレースの参加者は、腕利きが多く、また、軽トラをサーキットで速く走らせることが、思っていた以上に苦労することが身にしみてわかったという。
勝利のためにサンバーを手放してキャリイで再始動
もともとが働くクルマの軽トラ、中でもサンバーはトルクも細くてエンジンパワーは非力そのもの。そしてギア比にも問題を抱えていて、1速、2速がローギヤードで3速以降が極端にハイギヤード構造になっている。当然だが、パワーバンドなんてあって無いようなものだった。
そんなポテンシャルの低いクルマを速く走らせるには、それ相応のテクニックが要求される。そして、ドライビングはワンミスがタイムやスピードに大きく影響するため、走りもシビア! クルマの挙動を繊細に体で感じ、タイムロスをなくして、集中力を切らさずに走りに没頭しなければ軽トラを速く走らせることはできない。そんな点にあらためて気づかされた“アポロ”さんは、このレースにすっかりハマってしまったと話す。
そして、甘く考えていた最初のレースは完全なる惨敗! 後ろから数えた方が早いくらいのポジションという悔しさに終わり、その自信は完全に打ち砕かれてしまったそうだ。
そこからアポロさんは、上位入賞を目標に、デビュー戦で使った遅すぎるサンバーを手放してクルマ替えを決意。たまたま知り合いのクルマ屋さんに置いてあったDA63T型スズキ「キャリイ」を譲ってもらい、これをベースに勝利を掴むためのチューニング計画を開始した。
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エブリィワゴンのターボエンジンに換装してメカチューンを施す
レース経験者が本気を出すとチューニングの内容もマニアックである。友人たちの協力もあり、やれることはすべてやり尽くす考えのレース専用マシンとしてフルチューン化。非力では上位争いどころか、戦いにすらならない現状を考え、キャリイのエンジンを、よりパワーアップが見込める「エブリィワゴン」のターボエンジンに換装。しかも、このエンジンは普通のユニットではなく、本体もきっちり仕上げ、メタルガスケット、鍛造ピストン、ハイカム、ポート研磨等のメカチューンを施し、タービンもオーストラリアGCG製ギャレットタービンに交換。耐久性とともにハイブーストに耐えられるエンジンを完成させた。ちなみにブースト圧の設定は2段階調整式で、ローブースト時に1.2kg/cm2、ハイブースト時1.6kg/cm2をかけるというから驚き。そのMAXパワーは150馬力オーバーになるという。
また、補器類についてはインタークーラーを前置きしているが、これはたまたまあった「スイフト」用がフロントバンパーサイズにぴったりだったという理由で装着。前置きにしたことで配管が長くなりレスポンス面で不利になるが、吸気効率は断然よくなり、パワーダウンも防げるので、現在はパワー重視の前置きインタークーラーとしたそうだ。
サスペンションについては、フロントは驚くことにS13「シルビア」用のストラット式サスペンションがケース長もそのまま使えたので採用。装着しているのはストリート向けのTEIN車高調だが、直巻きバネのみ13kg/mmレートのものに交換している。また、リアについてはGTカー・プロデュース製の強化リーフ仕様になっているとのことだった。
軽トラ改造無制限クラスの頂点を目指す
このクルマを“アポロ”さんは軽トラレース専用車両として作り込んでいる。そのため、レース以外では使わず、サーキットにはユニック付きのトラックに載せて持ってくる。さらに、キャリイの荷台ににはロールバーを装着。本来は室内にセットするべきものだが、アポロさんの場合はユニックで車体を持ち上げ、吊るためのアイテムとしてロールバーをセットしていたのもユニークだった。
このパワーを手に入れたDA63Tキャリイの走りっぷりについて聞くと、以前のサンバーとは比べ物にならないほど凄まじい加速を発揮。まさに軽トラレーシングトラックといった感じでかっ飛ばせる。だけど、ちょっとパワーを出しすぎているかも……とも思うことがあるらしいが、それくらいの方が逆にクルマとしては面白くて好みかなとも“アポロ”さんは語る。
まだクルマは完成したばかりなので、これから細かく煮詰めていき、軽トラ改造無制限クラスの頂点を目指して突っ走る予定だという。
「きっと走らせることでいろいろと気になる点も出てくるので、そういった部分を少しずつ潰していき、自分が操りやすい仕様に仕上げていく。その結果、きっと目標へはどんどん近づいていけるハズなのです」
と“アポロ”さんは今後の意気込みも話してくれた。それにしても、こうしていろいろな話を聞くと、軽トラのサーキット仕様とはマニアックで奥深いことが今回の取材でよくわかった。
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みんなのコメント
整備力が無いと話しにならないヤバイ世界…
お金も掛かるんでしょうねぇ…