NTTインディカー・シリーズは8月に夏の3連戦を迎えたが、その最後がワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイ。通称ゲートウェイと呼ばれるこのトラックは、今年最後のオーバルレースでもある。
レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨は、このショートオーバルと最も相性の良いドライバーと言っていいだろう。
荒れたレースをニューガーデンが制す。パロウのリタイアで王者争いは混戦模様/インディカー第13戦ゲートウェイ
2019年は優勝し、2020年はダブルヘッダーのレースでポールポジションを獲得した上に、2位の表彰台にも上がった。琢磨のインディカーのリザルトを振り返ってみても、2年連続で表彰台に上がっているのは、このゲートウェイだけだ。
今年のゲートウェイは、NASCARと併催でもあったが、プラクティス、予選、決勝までを1日で行う1デイスケジュールで、悪天候でのタイムスケジュール変更以外では、珍しいスケジュールでもある。
だがプラクティス、予選では大きなクラッシュすれば決勝に出場は叶わなくなるし、また予選で走った状態から、フロントウイング以外の調整は出来ないルールとなるので、予選アテンプトに向けて、どのようなセッティングを施すか悩ましいところである。
日中に行われたプラクティスは90分といつもより長かったが、琢磨は13番手のタイムをマークしたものの、満足した様子ではなかった。
「昨年のセッティングをベースにしてましたけど、全然フィーリングは良くなかった。ゲートウェイは一昨年路面を張り替えてから、どんどん悪くなっているようで全然グリップしなかったですね……」と琢磨。予選では4番手2列目以内に行きたいと目標にしていただけに、浮かない表情だ。
予選ではチームメイトのグラハム・レイホールのセッティングも参考にしながらのぞんだが、アベレージが177.875mphで17番手にとどまってしまう。
「プラクティスからセッティングを変えて、いきなり予選だったし、今回はこのセッティングのままで決勝を走らないといけないルールなので、レースを考えておかないといけない。昨年は日中のレースで、ウインドスクリーンが着いたナイトレースは初めてだし、夜になるとダウンフォースや路面の状況も変わるので、これでレースにのぞんでどうなるかですね……」
日沈みライトが灯って260周のレースが始まろうとしていた。
ポールポジションのウィル・パワーがホールショットを決めてターン1になだれ込む。琢磨はリスクも大きい中団の中にいたが、接触することなく順位を上げて1ラップ目を終えた。
2ラップ目からチームメイトのグラハムと、エド・ジョーンズ(デイル・コイン)がターン1で接触。すぐさまイエローコーションとなってレースは序盤から荒れ模様だった。
このコーション明けもシモン・パジェノー、エド・カーペンターらがクラッシュするなどすぐにイエローとなっていた。
そんな中でも琢磨は着実にポジションを上げていた。一度は13番手まで上がっていたが、グリーンのタイミングでロマン・グロージャン(デイル・コイン)を抜くのが早かったとして、ポジションを戻される。
序盤はオーバルデビューのグロージャンを抑えるなど元F1ドライバーの先輩の意地も見せた。
琢磨はコーションをうまく利用して65周目を過ぎた時には8番手まで浮上していた。
ただこの頃にピットでは別の問題が発生していた。給油リグのトラブルで燃料が満タンまで入らないトラブルが分かり、計算上4度のピットインをするしかなく、ペースを上げて周回する。
琢磨は中盤しばらく7番手を走行していたが、127周目に早めの2度目のピットとなった。結果的にこれが早めのアンダーカットのような状態となり、141周目には4番手に上がる事になる。
前を行くのはコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)、ジョゼフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)、パト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)の3人。
彼らにぴったりついた琢磨は、表彰台も見えてきた。185周目にまたもや早目のピットとなるが、199周目には2番手まで戻していた。
そしてアレクサンダー・ロッシがウォールに接触し、201周目からイエローコーションとなると、最後のピットインへ。給油リグのトラブルさえなければ、このピットインが必要なく琢磨は、ニューガーデンやオワードと一緒にコースにとどまって勝負することが出来ただろうが、それはならなかった。
ピットアウトし6番手で隊列に戻ると、グリーンになった直後に前を行くセバスチャン・ブルデー(AJフォイト)を猛追した。だがブルデーもベテランらしい走りで琢磨を封じたのだった。
琢磨は6番手のままチェッカーを受けることに。
「今日は本当に残念でしたね。最初はイエローに助けられたけど、自分で何台もパスできたし力強い走りはできたと思います。給油リグのトラブルがなければ、ニューガーデンたちとトップ争いしてたでしょう」
「こういうトラブルがある時でも、粘り強く走り続けることしかできないですね。今日のレースで流れを大きく変えたいと思っていましたけど……。残りの3レースのうち、ふたつのサーキットは勝ったことのあるサーキットですし、思いっきり戦うしかないですね」
8月の3連戦最後を中身の濃いレースで終えた琢磨。9月の3連戦もこの勢いを期待したいところだ。
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