いよいよそのハンドルを握る時が巡ってきた。いったい、どのようなパフォーマンスを体感させてくれるのだろうか。従来型のM4でも、十分な実力を備えていたはずだ。挑戦的な表情を得た新型M4の進化を確認した。(Motor Magazine2021年6月号より)
サーキット連続走行を見据えた大型キドニーグリル
いやが応でも「誰もの視線を集めるに違いない」−2019年秋に開催されたフランクフルトモーターショーで出展されたBMWの「コンセプト4」を目にした多くの人は、「でも、さすがにこんな顔つきはコンセプトカーだけでしょ!」という思いを抱いたのではないだろうか? しかしそんな予想と期待(?)を裏切り、あっさりと世に出た市販型モデル。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
すなわち、コンセプトモデルとほとんど変わらないド迫力で驚愕の「バーチカル(垂直的な)フロントグリル」を採用して登場となったのが、最新型のM4とM3である。ともにそのグリルは、オールブラック仕様。それゆえ、ボディカラーの選択が印象を大きく左右する。
今回のテスト車であるM4クーペ コンペティションがまとう「サンパウロイエロー」は、ボディとグリル部分とで強烈なコントラストを生み出しており、いわば「もっともグリルの存在を目立たせる配色」の持ち主でもあった。
顕示性の強さばかりが話題とされがちな巨大なキドニーグリルではあるものの、その両サイド下部に口を開いた「ドライブトレーンとブレーキシステムの冷却を最適化」と効能が謳われる大型インテークとともに、その造形にはハイバフォーマンスモデルゆえ大きな冷却能力が必要という機能面からの要求も含まれているという。
サーキットでの連続走行も見据えたタフネスぶりが求められるとなれば、大開口グリルが必要なのも道理であるには違いない。
最新技術が投入された純粋なガソリンエンジン
2基のターボチャージャーを備えた3L直列6気筒エンジン・・・と、ここまでのスペックは従来型と同様。ところが、実際にフロントフード下に収まるこのエンジンは、どこのメーカーも電動化真っ盛りという今の時代にあって、開発陣から「とにかく、従来型を上回るパフォーマンスを発揮することを第一に考えて開発した」というコメントを聞くことができる、新開発ユニットでもあるのだ。
まずはX3 M/X4 Mに搭載されて2019年にデビュー済みという点に、SUV全盛の時代の空気を感じさせられる。だが、最新テクノロジーを余すところなく採り入れて開発されたコンペティティブなその内容は「やはりいかにもMの作品」という印象だ。ちなみに、現時点で登場した2種類の仕様のうち、より高出力を発するコンペティションモデル向けユニットには「排気系やソフトウェアによるチューニング」が施されているとアナウンスされている。
新型エンジンに組み合わされるトランスミッションも特徴的だ。日本仕様では、M4の標準仕様モデルには、セグメントで唯一と謳われる6速MTを設定。さらに、M4とM3の両コンペティションモデルには「ドライブロジック付き8速MステップトロニックAT」が用意されている。
後者は通常の8速ATをベースとした構造だが、オートマチックモード時にもマニュアルモード時にも「快適性重視」「スポーツ性重視」「サーキット走行向け」という3種類から好みのシフトワーク特性が選択可能。セレクターノブに設けられたスイッチ操作で、瞬時に特性の変更を行うことができるのだ。
従来型に比べると全長は120mm、全幅は15mm、そしてホイールベースは45mmとわずかながらも確実に成長した新型M4。M3、そしてM4と聞くと、いまでも「軽量コンパクト」というフレーズを使いたくなる人がいるかも知れないが、もはやそれも「今は昔の話」なのである。
実際、すべてのモデルにカーボンファイバー強化樹脂(CFRP)ルーフが標準装備されるなど各所で軽量化に対する腐心も認められるものの、それでも車両重量は1.7トンをオーバーする。遅れて登場予定の4WD仕様では1.8トンを超えるのは確実で、いつの間にやら「重量級」のスーパースポーツモデルへリーチをかけたという雰囲気も感じられるのが、このシリーズということになる。
良い面に満ちたAT仕様。エンジンの感触は常に緻密
センターコンソールに配された真っ赤なボタンのプッシュ操作で迫力のサウンドとともに瞬時に目覚めたユニットは、予想どおりにあらゆるシーンですこぶるパワフルだ。1Lあたりの出力が170psオーバーに達するハイチューンユニットながら、街乗りシーンではアクセルペダルに「触れる程度」でも十分に周囲の流れをリードすることが可能。そこには、神経質さなど微塵も感じられない。
そうした常用場面での走りの好印象に貢献しているのが、前述のトランスミッションでもある。走り始めや変速の滑らかさは、いかにもトルクコンバータ式ATならではの美点という印象。同時に、アクセルペダル操作に伴う遅れのないタイトな加速感はDCTばり。それはまさに「両方式の良いとこどり」のごときテイストの持ち主で、「これならば、2速多いこちらの方が変速時のステップ比も小さく、あえてMTを選ぶ気にはならないかも」と、思わずそんな印象を述べたくもなる仕上がりだ。
一方、このモデルのパワーパックにとってのハイライトは、もちろんアクセルペダルを深く踏み込んだ場面にこそあるのも、言うまでもないことだ。最高出力を発生する6250rpmというポイントはおろか、それを飛び越えレッドラインの引かれた7200rpmまで一切の頭打ち感など認められない緻密な回転フィールは、スポーツ派ドライバーの琴線に触れるゴキゲンそのものの仕上がり。調律が行き届き、ホットな走りへの高揚感を誘う直6ユニットならではのサウンドも、もちろん価値ある逸品と実感できる。
標準モデルが用意されるM4は1298万円から。日本仕様ではコンペティションモデルのみとなるM3は1324万円からと、新型のプライスタグはさすがに高価だ。しかしそのうちの半分の価値は、絶妙なコンビネーションを味わわせてくれるこのエンジンとトランスミッションで構成されるパワーパックにある・・・と、思わずそう納得しそうにもなる。
一方、そうした圧倒的な動力性能を堪能しているうちに、遅れての登場が予告されている4WDバージョンに対する理解と期待を示したくなったのが、そのトラクション能力であったことも事実。たとえドライ状態の舗装路面上でも、ラフなアクセルペダル操作では2速に入ってからも容易に空転しようとする気配を感じさせるパワフルさには、率直にいって「2輪駆動の限界」を意識させられるものでもあった。
もちろん、これがウエット路面にでもなれば、そんな思いをさらに強くすることは確実。今後もこのモデルが走りのパフォーマンスを高めていこうとする限り、そろそろ「M3/M4はFRレイアウト」という固定観念に終止符を打つタイミングが近付いているのかもしれない。
足まわりは3段階の可変式快適なコンフォートの設定
サスペンションは、電子制御による可変減衰力ダンパーを用いた「アダプティブMサスペンション」が標準装備。もちろん、本格的なサーキット走行までを視野に入れているだけに、そのセットアップはなかなかに硬派だ。
とはいえ、ボディ各部に微に入り細を穿つさまざまな補強策が施されたことで、不快な振動は瞬時に減衰。この種のモデルを選ぼうというユーザーにとっては、十分に「普段使い」にも耐えうる快適性の持ち主であることも確認できた。
もちろん、サスペンションの構造そのものも、ボールジョイント付きアルミ製コントロールアームを用いた専用スペックのフロントストラットや、新開発のハブキャリアやコントロールアームを用いたリアサスペンションなど、新しいアイテムを潤沢に採用した専用設計。フットワークのポテンシャルも、一般道のみのテスト走行ではその限界を見極めようもない、さらなる高みへと引き上げられていることは確実だ。
電子制御されるダンパーのセッティングは「コンフォート」「スポーツ」「スポーツプラス」の3段階。ボディの動き量はやや大きくなるものの、今回のテストドライブではやはり大半の区間をコンフォートのポジションで過ごすことになった。一方、前述したボディの動き量を抑え込むには、スポーツが好適。ちなみに、この各ポジションのセッティングは、路面の荒れた部分も多い「ニュルブルクリンク北コースでのテスト走行で煮詰められた」とされている。
今回のような公道上では、どうしても「跳ね気味」の挙動を示しがちだったのがスポーツプラス。実際、開発陣からも「路面状態の良いサーキットにおいて最大限のパフォーマンスを発揮する」というコメントが付いている。状況によっては「最速セッティング」となり得る一方、同時に道を選ぶのもこのポジションと言えそうだ。
こうして、歴代モデルへのオマージュを踏まえつつ、改めて「BMW車でもっともサーキットの香りが強く漂うモデル」という立ち位置を明確にしたこのモデル。次回は、是非ともサーキットを走ってみたい! と、改めて思いを新たにしたのは当然のことである。(文:河村康彦/写真:永元秀和)
BMW M4クーペ コンペティション<M3コンペティション> 主要諸元
●全長×全幅×全高:4805×1885×1395mm<4805×1905×1435mm>
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:1730kg<1740kg>
●エンジン:直6 DOHCツインターボ
●総排気量:2992cc
●最高出力:375kW(510ps)/6250rpm
●最大トルク:650Nm/2750-5500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・59L
●WLTCモード燃費:10.1km/L
●タイヤサイズ:前275/35R19、後285/30R20
●車両価格(税込):1348万円<1324万円>
[ アルバム : BMW M4クーペ コンペティション はオリジナルサイトでご覧ください ]
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
“生産版”「“R36”GT-R」公開に反響絶大! 日産の「旧車デザイン」採用&4.1リッター「V6」搭載で「借金しても欲しい」の声! 1000馬力超えもあるArtisan「“和製”なスーパーカー」が話題に
トヨタ新型「ミニアルファード」登場は? 「手頃なアルファードが欲しい」期待する声も!? 過去に"1代で"姿消した「ミドル高級ミニバン」があった!? 今後、復活はあるのか
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
「中古車を買いに来たら『支払総額表示』で売ってくれませんでした、詐欺ですよね?」 「別途費用が必要」と言われることも…! 苦情絶えないトラブル、どんな内容?
「黄信号だ。止まろう」ドカーーーン!!! 追突されて「運転ヘタクソが!」と怒鳴られた…投稿に大反響!?「黄信号は止まるの当たり前だろ」の声も…実際の「黄信号の意味」ってどうなの?
「とりあえず増税ね」で50年!? 「世界一高い」自動車諸税&ガソリン税“見直し”正念場 “年収の壁”の向こうの璧
「緊急車両が来て道を譲らないとどうなりますか」 理由に「『聞こえんかった』は通用するのですか」 譲るのはマナー?義務? 具体的にどう譲ればいいのですか。
「黄信号だ。止まろう」ドカーーーン!!! 追突されて「運転ヘタクソが!」と怒鳴られた…投稿に大反響!?「黄信号は止まるの当たり前だろ」の声も…実際の「黄信号の意味」ってどうなの?
“生産版”「“R36”GT-R」公開に反響絶大! 日産の「旧車デザイン」採用&4.1リッター「V6」搭載で「借金しても欲しい」の声! 1000馬力超えもあるArtisan「“和製”なスーパーカー」が話題に
「クルマの左寄せ」苦手な人が多い!? よく見えない「左側の車両感覚」をつかむ“カンタンな方法”がスゴい! JAFが推奨する“コツ”ってどんなもの?
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
だからといって黒で我慢できる範囲では到底ない