世の中には、かくも文句をつけたがる人が多いのか……。スズキが新型カタナを発表した時、そのスタイリングに対する否定的な意見をあちらこちらで耳にするたび、そう驚かされた。「カタナとは似ても似つかない」、「あのダサいハンドルはなんだ」、「初代への冒涜だ」などなど…。さまざまな批判が飛び交っていたからだ。
とはいえ、たとえばオリジナルの成り立ちを踏襲し、フロントに19インチホイール、リアに2本ショックを備えて登場したとしたら、それはそれでやはりネガティブな意見に晒されただろう。マーケティングが先行し、もし開発過程で様々な声を聞かされたなら、エンジニアの気持ちは相当揺らいだことだろう。
スズキの開発陣が選んだのは、ごくシンプルな方法だった。オリジナルがそうだったように、既存のモデルをカスタマイズすることによって、新たな価値を与えるということだ。新型カタナのベースになっているのは、2015年に登場したGSX-S1000である。
GSX-S1000をカタナへと変身させるため、手が加えられた場所は意外なほど少ない。外装、シートレール、ナンバーステー、ハンドルといった部分が主で、ほかはサスペンションのリセッティングやスロットル内部のパーツに小変更が施されている程度。エンジン、フレーム、スイングアームといった主要コンポーネントはそのまま踏襲している。
ゆえに、エンジンのフィーリングもコーナーで見せる振る舞いもGSX-S1000と大きな違いはない……と書くと興醒めかもしれないが、元々が及第点を大きく超える秀作なのだ。998ccの水冷4気筒エンジンはその最たるもので、スズキの歴代スーパースポーツの中でも評価の高い2005年型GSX-R1000と同系である。
当時、このクラスのエンジンは高回転域でのパワーを求めたショートストローク化が進んでいたが、スズキはロングストロークがもたらすトルクを武器に対抗。その独自のアプローチによって、世界スーパーバイク選手権と世界耐久ロードレース選手権を制した名機として知られている。それをストリート向けにデチューンし、扱いやすく仕立て直したのがGSX-S1000および、新型カタナに積まれるエンジンなのだ。
トルク重視とはいえ、最高出力は148psに達する。車重は215kgに抑えられているため、スロットルを開けた時のダッシュ力と回転の上昇スピードはスーパースポーツ並みだ。ただしレスポンスが尖すぎないことと、コンパクトなライディングポジションのおかげで、そのパワーをライダーのコントロール下に置くことができる。
825mmのシートは見た目の印象より高いが、座面とハンドルバーの距離が近く、ステップもごく自然な位置にあるため、バイクを股下でヒラヒラと遊ばせるように操ることができる。この“手の内感”はGSX-S1000を明らかに上回っており、ゴー&ストップの繰り返しを強いられる街中でも緊張感はない。それに貢献しているのが発進や低速走行時に回転の落ち込みを防いでくれる「ローRPMアシスト」で、ライダーのスキルをフォローする“おもてなし機能”も充実している。
カタナ・ファンの間で最も物議をかもしたアップライトなハンドルは、開発時に15種類の形状が試されたというだけあってじつに機能的だ。軽く手を添えるようにリラックスして乗ることも、ストリートファイターのように体重を預けて積極的に操ることも許容する、高い自由度がある。
ハンドルをいっぱいに切ると、燃料タンクとのクリアランスはギリギリで、ハンドルを可能な限り低く、狭くセッティングしてことが分かる。タンク容量を12リットルに抑えコンパクトにしてまで(GSX-S1000は17リットルだ)、カタナらしいフォルムを追求していると考えれば、スポーツ性、実用性、安全性などを考え合わせ、スズキが導き出した最適解なのだろうと納得できる。
思えば40年前に登場した初代カタナも、最初から多くのユーザーに歓迎されたわけではなかった。空冷エンジンや2本ショックは当時すでにオールドスタイルになりつつあり、見た目だけのバイク、と捉える人も少なくなかった。ところがカスタム・ブームやカタナをフィーチャーした漫画『キリン』の影響により、いつしかカリスマ的な人気を誇るマシンとなったのである。
それになぞらえれば、新型カタナの本当の評価が生まれるのはこれからだろう。爽快なパワーフィールと手足のように扱える一体感は、長く愛されるだけの資質があると思えるからだ。
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