NTTインディカー・シリーズはおよそ1カ月の夏休みを終え、第11戦のナッシュビルのレースを迎えた。
本来であれば昨年1回目が開催されていたはずだが、新型コロナウイルス感染拡大を受けて中止となっていた。
イエロー多発のレースをエリクソンが逆転勝利。佐藤琢磨は多重クラッシュの餌食に/インディカー第11戦ナッシュビル
今年もカレンダーに組み込まれ、無事に開催される運びとなった。ミュージックシティグランプリと名付けられナッシュビル市の全面的なサポートで音楽の祭典と併催されるような形となって、週末のサーキットは大いに盛り上がった。
NFL日産スタジアムの駐車場に巨大なパドックとピットエリアを設け、隣接の橋を往復するというユニークなレイアウトを持つコースだったが、その橋を往復する度に発生するバンプと狭いコースが悩みの種で、金曜日のプラクティスからイエローコーションと赤旗が続出する形となった。
レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨は夏休みの間日本に帰ることもままならなかったが、シミュレーターでこのナッシュビルのコースを予習し、ナッシュビルへと向かった。
金曜日プラクティスはいつもより多めの75分のセッションが設けられる。コース初走行の感想は「思ったよりも橋を渡ったところのバンプがすごくてマシンの底打ちがひどいですね。フロアを擦るとかではなくて、モノコックまでダメージがありそうなくらい。デトロイトとかブラジルとかよりもさらに車高を上げていて、こんなに上げたことはないくらい。まだクルマと戦っているような状態です」と言う。
タイムは1分18秒2167で17番手。トップのコルトン・ハータは1分16秒5875をマークしている。
初日の走行の後、バンプのダメージが少なくなるよう路面の表面を削る作業が施される。
土曜日は45分のプラクティスがあったが、セッションの後半に予選を見据えてタイムアップを図ろうとするマシンがスピン、接触を続出。レッドタイヤを履いてタイムアップを狙っていた琢磨は、その機会を失って1分18秒台にとどまり25番手となっていた。
グループ2に振り分けられた予選では、レッドタイヤを最初から使い積極的に攻めたが、2度目のアタックの際にピットレーンスピード超過でピットスルーペナルティを命ぜられ、万事休す。グループ12番手、総合24番手となった。
Q1を終えてライバルの予選を見ていた琢磨はポールポジションを取ったハータの様子を見て「ステアリングを切るとマシンがスッと向きが変わって修正も少ない。いい動きですよね。1分13秒?信じらんない(笑)」とコメント。
今年の傾向として予選で苦戦し、決勝で追い上げるという展開が続いている琢磨だが、そのきっかけを日曜朝のウォームアップで掴むことも多かった。今回も例に漏れず「朝はグラハムが使っていていたアイテムを試めせなかったんですが、それを使えばもう少し良いペースで走れるはず‥‥」と期待をのぞかせた。
琢磨に限らずレースでの最大の懸念は、アクシデントだった。新コースでは未知の要素も多い。橋を折り返し戻ってくるポイントでグリーンフラッグとなり、ターン9の進入が注目だったが、先頭のハータから無難に通過。その後でダルトン・ケレット(AJフォイト)がストップし最初のイエローコーションが出される。琢磨は2つポジションを上げ22番手に。
その後グリーンとなると今度はマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ)がセバスチャン・ブルデー(AJフォイト)に追突するという波乱。琢磨はここでもポジションを上げて18番手となる。
再度グリーンとなった時にスコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー)とのバトルを制して17番手に浮上。序盤から追い抜きモードだった。13周目にベストラップをマークすると次の標的エリオ・カストロネベス(メイヤー・シャンク・レーシング)をターン4の進入で攻略16番手まで上がった。
3度目のイエローコーションとなった時には早めにピット入るマシンもあり琢磨は一時13番手となる。
その後のグリーンで悲劇が襲う。琢磨の目前を走るウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)とターン12で接触。琢磨はそこに追突して止まった。ここで赤旗となり琢磨はなんとかダメージを負ったマシンでピットに戻ったが、マシンはステアリングコラムにダメージを負っており、マシンを降りた。今年初のリタイアだった。
「マシンもだいぶ良くなっていたし、ダウンフォースをトリムしていたから、前のマシンも抜けていけた。接触の時は用心していたんだけど、いき場所がなくてどうしようもなかったですね」
「ピットに戻って直るかなと思ったんだけど。今日は最後まで走りたかったですね。レースでわかることも多いし、データも残したかった。ナッシュビルは町中で盛り上がっていたし、30のシャツを着たファンも多くてうれしかったですね。もうコロナなんかどっかへ行っちゃった感じ(笑)。レースは大荒れだったけどレース見に来てくれた人も喜んでくれたと思います」と振り返る。
レースは序盤に宙を舞ったマーカス・エリクソンが追い上げて優勝という波乱の展開。琢磨も完走していれば上位入賞は間違いなかっただけに、運の無さが悔やまれる。
来週のインディGPではその運に見放されないように願うばかりだ。
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