長引くコロナ禍の中、アウトドアレジャーが大人気。そのなかでも、老若男女楽しめる趣味として人気なのが釣りだ。そして釣りに出かけるうえで欠かせない相棒がクルマだ。
しかし、一言で「釣り」と言っても、川や湖での釣りと海釣りでは、持ち物や目的地周辺の環境がまったく違う。狙う魚やフィールドによってクルマに求められる性能や装備が異なってくるので、簡単に「釣りに最適」と一括りにすることはできない。
フィッシングメディア関係者が「マジ、これはいい!!」と実感! 本当にお薦めの「釣り車」 とは?
そこで今回は、さまざまな釣りを経験してきたフィッシングメディア関係者の意見を踏まえた、釣りのシチュエーションごとにお薦めのクルマを紹介する。もちろん、ここで紹介したクルマ以外でも釣りを楽しむことはできるが、釣りの業界でも実際に使用されているため信頼性が高く、釣り人に特にお薦めできるクルマとなっているので参考にしてほしい。
文/入江 凱、写真/トヨタ、日産、ホンダ、スズキ、ダイハツ、ステランティスジャパン、写真AC
渓流での釣りは小回りが利き、悪路走破性の高いコンパクトSUVや軽バン
山の中を流れる渓流での釣りは、細く曲がりくねった山道や未舗装路を走ることになり、駐車できるスペースも限られているので小回りのよさと、悪路走破性の高さが求められる。釣れる場所を求めて上流に向かい、クルマを置いたまま山の中を歩き回るようなシーンも多く、荷物は持ち歩けるだけの最低限にする傾向があるため、他の釣りほどの積載力は求められない。
一方で、魚が活動的になる早朝に釣りをするために日の出とともに山中に入るという人も多く、ボディサイズは控えめながらも車中泊や仮眠はしやすいというのも大事な要素となる。
■渓流での釣りには「スズキ ジムニー」が一押し
本格的なオフロード性能と軽自動車のボディサイズを持つジムニーは、渓流をメインフィールドにする釣り人に人気だ
渓流での釣りにマッチするクルマとしてお薦めできるのがスズキ ジムニーだ。ラダーフレーム構造によるオフロード性能の高さはもちろん、リアシートの背面と荷室は汚れや傷に強い樹脂の防汚タイプラゲッジフロアを採用している。
あくまで軽自動車サイズなので快適とはいかないまでも、フロントシートを倒せばフルフラットにもなり車中泊も可能だ。
さらにロッドホルダーだけでなく、フルフラット時のシートの凹凸を軽減するリラックスマットといった釣りや車中泊で重宝する純正アクセサリーも用意されている点もお薦めしたい理由だ。
湖や野池、ダム湖でのブラックバスフィッシングでは悪路走破性に優れ、トルクのある大型SUV
スポーツフィッシングとして人気を博しているブラックバスフィッシングでは竿を数本持ち歩くユーザーも多い。これは数多くのルアー(疑似餌)と呼ばれる仕掛けをそれぞれの竿にセットしておき、その時の魚の状況に応じて竿を瞬時に持ち替えるためだ。
また、ワンピースロッドという分割して小さくすることのできない竿を使用する釣り人が多いため、ロッドホルダーと呼ばれるクルマの天井に竿を収納するための器具を設置することが推奨される。
こういった理由から竿の本数に比例して道具が増えてしまうので、他の淡水での釣りに比べると荷物が多くなりがちで積載性の高さも求められる。仲間と一緒に野池やその周辺の未舗装路を回るといった遊び方をする人も多いのでボディサイズは大きくそれなりの悪路走破性が求められる。
いつかは自前のボートを牽引して釣りをしたいと憧れている釣り人には高トルクを持つ大型SUVなどがお薦めだ。
■湖や野池、ダム湖でのバス釣りには、「トヨタ ランドクルーザー」が一押し
悪路走破性は折り紙付きのランドクルーザーは車体が大きいため積載力にも優れ、馬力も十分。国産車のなかでは珍しくトレーラーを牽引するためのヒッチメンバーもオプションで用意されているところが人気の理由だ
バス釣りを嗜む人にお薦めなのがランドクルーザーだ。ラリーで磨き上げた悪路走破性と耐久性は世界でもトップクラスで申し分ない。都市部では少々持て余し気味となる大きなボディサイズもバス釣りでは郊外がメインとなるため問題になることは少ない。
何よりもバス釣りをする人にとって魅力的なのが、ボートを載せたトレーラーを牽引するために必要なヒッチメンバーがメーカーオプションで用意されていること。実際にボートを載せたトレーラーを牽引するにはトレーラーヒッチなど、さらに他のパーツも必要になるが、こちらも販売店装着オプションとして用意されており、「いつかは自分のボートでバスを釣りたい」と憧れを抱く人にはお薦めの一台だ。
堤防や磯など、岸からの海釣りにはSUVやステーションワゴン、ミニバン
海には出ず、堤防や磯など、岸で行う海釣りメインの場合、川や湖での釣りと比べるとクーラーボックスをはじめとする道具も大きくなる傾向があることと、堤防や砂浜でキャンプ、バーベキューなどの釣り+αのアクティビティを楽しむ人が多いことを考えると、小回りや悪路走破性よりも積載力や快適性を重視したSUV、ステーションワゴンやミニバン、大型バンが適している。
一方、目的地までに悪路を走る機会はほぼないため、悪路走破性はさほど重要ではない。むしろ、長距離を走るようなシチュエーションが多いため、運転のしやすさや快適性のほうが優先度が高い。
■堤防や磯など、岸からの海釣りには「日産 エクストレイル」が一押し
エクストレイルは排気量、ボディサイズ、悪路走破性のバランスの良さに加えて防水性能の高さが魅力。釣り+αのアクティビティを楽しみたいという釣り人に人気だ
人気のSUVのラインナップは飽和状態だが、そのなかでも釣りに海釣りにお薦めなのが日産のエクストレイルだ。
その魅力は防水性を高める装備の豊富さ。ガソリン仕様のみの設定ではあるが、荷室、リアシート背面は標準で傷や汚れに強い樹脂製になっているのに加え、防水性の高いシート生地(一部ハイブリット仕様にも採用)や、濡れたブーツで乗り込んでも滑らない防水加工フロアも設定されている。濡れたり汚れたりすることの多い釣りの場合、気を遣わずに荷物を積むことができるのは大きい!
エクストレイルのガソリン仕様車には2列シートと3列シート仕様の2種類が用意されているが、3列シートの場合は荷室も狭くなるので、大人数で出かけることが少ない場合は2列シート仕様のほうがお薦めだ。
船で海に出るなら大容量のハイエースかミニバン
船で海に出る海釣りの場合も、船が出る港までの道のりは一般道がメインのため、悪路走破性よりも、運転のしやすさや快適性を優先したほうがいい。
一方、出船前や、帰港後の時間が早朝や夜になってしまうことが多く、仮眠をとることもままあることから、車内空間の快適性は非常に重要となる。
加えて、魚自体も他の釣りに比べ大物になりやすく、それに比例して必要な道具も大型になるうえ、出船時間が早朝のため足りない道具を買いに行くこともできないので、万一に備えて多めに道具を積載する必要が生じる。そのため、より高い積載力が求められる。
■海釣り(船釣り)には「トヨタ ハイエース」が一押し
ハイエースの人気の理由はとにかく物をたくさん積み込めること。人気車種だけに純正オプションだけでなくサードパーティ製のパーツも多く、好みに応じて内装をカスタムする人も多い
船釣りを嗜む人に一番人気なのは、収納力と快適性のどちらも犠牲にせず両立できるハイエース。船釣りは道具も大きいうえに量もかさばるが、ハイエースなら必要な道具が積めないなどという事態はまず起きないからだ。
複数人が同乗し、それぞれの荷物を載せても荷室には余裕があるため、大人数で釣りに出かけることが多いという人でも、居住性に不満を感じることはない。
ハイエースは、車中泊用のベッドなども用意されているなど、釣り人には嬉しい純正オプションも用意されているが、純正以外にもさまざまなパーツがサードパーティから発売されており、自分好みにカスタマイズできる点もお薦めしたい理由だ。
釣りから帰ったらこれだけはやっておくべきチェック&メンテナンス
釣りに使った道具は水分や汚れが付着しているので積みっぱなしはNG。道具も傷むし、クルマにも臭いが移ってしまう。疲れていても荷物だけは下ろすのを忘れずに!
■釣りの荷物はすべて下ろす
釣った魚、エサなどの腐るものはもちろん、竿などの道具も水分や汚れが付着している場合が多いため、釣りで使用したものは帰宅したらすぐにクルマから下ろし、水洗いしたうえで乾燥させよう。特に、撒き餌などの臭いが強いものを車内に放置すると車内に臭いがつき、とれなくなってしまう可能性がある。
■念入りな洗車と清掃をしよう
悪路を走行した後の泥汚れは見栄えが悪いだけではなく、放置すると乾燥して頑固な汚れとなり、ボディに傷が付いたり、サビが進行する一因になってしまう。特に海の近くにクルマを停めていた場合は、潮風や海水に含まれる塩分が車体の金属部を急速に劣化させてしまうため、釣りから帰ったら、できるだけ早く洗車をすることが必要だ。
さらに釣り場は、砂浜やぬかるみが多かったり、時にはエサが落ちていたりと、足元の条件が悪いことが多く、フロアマットは非常に汚れやすい。また、エサなど釣り道具の汚れが荷室に付いてしまうため、外側だけでなく、車内の清掃も通常よりも念入りに行うことが必要だ。
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