この記事をまとめると
■日産のスカイラインGT-RとフェアレディZは日本を代表するスポーツカーだ
スポーツカーの王道と言われる「ロングノーズ・ショートデッキ」! 一体どういう意味?
■4代目のZ32型はバブル期に生まれた豪華なモデルだった
■280馬力規制のキッカケとなったモデルでもあった
日本が誇るスポーツクーペの一角
1969年に初代が誕生した日産フェアレディZは、北米ではDATSUN Z-CAR(DATSUNの呼び方は2代目まで)の愛称で親しまれてきた、日産のスカイラインGT-Rと並ぶ、日本を代表するスペシャリティスポーツカーだ。
そんなフェアレディの歴史のなかで、今やネオクラシックカーとして注目を浴びているのが、フェアレディZが大革新を遂げたZ32型と呼ばれる4代目である。そのデビューはバブル真っ盛りの1989年(~2000年)。このころはバブルの勢いもあって、国産スポーツカーが続々と登場。同年、日産スカイライン(R32型)にGT-Rが復活し、マツダからはあのユーノスロードスターが誕生。
翌90年にはホンダNSX、三菱GTO、91年にもスズキ・カプチーノ、アンフィニRX-7、ホンダ・ビートがスポーツカー市場を大いに盛り上げたのである。そう、Z32型フェアレディZ 300ZXが生きた時代は、まさに国産スポーツカー祭りのハシリでもあったのだ。
さて、Z32型フェアレディZ 300ZXの大革新の理由はまず、そのスタイリングにある。初代から続く、「これぞスポーツカー!」のシルエットといえる古典的ロングノーズ&ショートデッキスタイルを踏襲するものの、ボディのシルエットはグッと洗練され、先進的なものとなったのだ。なお、Z32型フェアレディZ 300ZXのエクステリアデザインは、当時の日産デザイン部に所属していた、のちに自動車評論家、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員としても活躍した前澤義雄さんらであった。
とくにヘッドライトは3代目のパラレルライズアップヘッドライトを廃し、ボンネットとの段差のないクリアガラスレンズによる空力的にも優れたデザインを採用。さらに、ゆるやかに弧を描くCピラーも、初代から3代目に至るデザインと決別した感がある大きな特徴となった。
フェアレディZは北米市場がメインでもあり、ボディの軽量化(アルミと樹脂パーツの多用)、高剛性化とともにサイズも拡大した。ボディタイプはS130型の2代目からの2シーターと4シーターの2by2、そのTバールーフを用意していたが(2by2は人気のTバールーフのみとなった)、2シーターは全長4310×全幅1790×全高1250mm(Tバールーフ)、2by2が全長4525×全幅1800×1255mmとなり、3代目のZ31型と比べ、全長は短く、全幅は広がり、全高は低くまっている。逆にホイールベースは先代2シーターの2320mm、2by2の2520mmから、それぞれ2450mm、2570mmとなり、130mm延長されている。
また、サスペンションは3代目Z31型のFストラット、RセミトレーリングアームからF/Rともにマルチリンクに換装。前後オーバーハングの短縮化や、ワイドトレッド化(Z31型比較でF+40mm、R+20mm)もあって、一段とワイド&ローのスポーツカーフォルムを、2シーターと2by2のエクステリアの”見た目の違い”を最小限にして完成させたことになる。筆者も所有していた2代目S130型、3代目Z31型では、2シーターと2by2のスタイリングはパッと見でわかるほどの違いがあったのだが、Z32型ではそうではなくなったということだ。
さらにボディの軽量化とともに、ボディ骨格の溶接方法やボディ骨格に剛性補強材を使うことで、Z31型に対して曲げ剛性35%UP、ねじり剛性20%UPを果たしている。
280馬力規制のきっかけにも
インテリアは先代Z31型とは別物の運転席、助手席が完全に分断されたスポーツカーコクピットとなり、高級感も一気にレベルアップ。
肝心のパワーユニットは、VG30DE型の3リッターV6(230馬力)、VG30DETT型の3リッターV6ツインターボ(280馬力)、39.6kg-mを5MT/4ATとともに搭載(先代Z31型のVG30ETはシングルターボで240馬力、34.0kg-m)。
注目すべきは、日本の自動車メーカーの日本向け仕様として初の280馬力を達成したのが、このZ32型フェアレディZ 300ZXだったということだ。じつは、北米仕様は300馬力であり、それも可能だったのだが、当時の運輸省の指導によって280馬力に抑えられたのだった。同時に、日本の自動車メーカーの280馬力自主規制もここから始まったことになる。
Zフリーク(S130時代に280Z Tバールーフを所有)でもあった筆者も仕事でZ32 ツインターボに何度となく試乗したものだが、ズバリ、ツインターボパワーはいわゆる「ドッカンターボ」であり、アクセルを踏み始めたときのレスポンスは、ちょっとタメたあと、バキューンと強烈な加速を開始するタイプだった。派手に加速するとリヤタイヤのグリップが失われるほどのスリリングな体験を何度かしたことがある(怖!!)。
しかし、意外にも乗り心地はよく、なるほど、この世代は北米でウケそうなスポーツカーとグランドツーリングカーの中間的走りのキャラクターのもち主でもあったようだ。
細かい点では、イグニッションキーはチタン製、ジャッキはアルミ製。4輪のホイールはもちろん、スペアタイヤまでアルミ製という贅沢さもバブル期の新型車ならではと言えるだろう。
そしてTバールーフに加え、1992年8月の一部改良時に、2シーターモデルのみにフェアレディ初のコンバーチブルを追加(1998年10月の一部改良時まで)。1994年の一部改良では全車にバージョンSを追加するとともに、レカロシートやBBS鍛造アルミホイールなどを奢ったバージョンSレカロを設定。ただし、ターボのブースト計やアルミ製ブレーキキャリパー、チタン製キーは廃止。これもバブル崩壊の影響だろうか……。
そんなフェアレディZを大革新したZ32型フェアレディZ 300Xは、バブルの終焉とともにミレニアムの2000年9月に販売終了。あろうことか、フェアレディZの歴史はここでいったん途絶えることになる(泣)。
そして2002年、現代的なフェアレディZ第1弾といっていいZ33型が登場し、6代目Z34型(2008年~2021年)、その改良版、初代S30型のアイデンティティを強く継承したの6代目(2022年~)へと、フェアレディZの系譜は再びつながっていくことになる(祝)。※4シーターはスカイラインクーペにお任せとなる。
なお、Z32型フェアレディZの中古車は、海外に多くが流れていったのだろうか、国内ではかなり台数が限られる。ただし価格は200~350万円と、ネオクラシックカーとしてはそれほど高騰していないのが幸いだ。
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