■カローラクロスが500万円という「異常事態」
新車の長納期化に伴い、全体的に相場が高騰している昨今の中古車市場ですが、人気のモデルでは新車価格を大きく超えるプレミア価格となっています。
「中古車は安い」というのは、もはや過去の話となってしまったのでしょうか。
半導体をはじめとしたさまざまな部品の供給が進まないことなどを理由に新車の長納期化が顕著な昨今、新車を検討していたユーザーが中古車も視野に入れるようなったことで需要が増えた結果、中古車市場の相場は全体的に高騰しています。
希少な限定生産モデルや、特殊な装備やヒストリーがある個体をのぞけば、中古車が新車価格を超えることはまずありませんでした。しかし、現在ではそうした事例も増えつつあります。
トヨタ「カローラクロス」はそんなモデルのひとつです。7月22日現在、大手中古車販売店では、489万9000円という値札が付けられています。
このカローラクロスは、最上級グレードの「ハイブリッド Z」の2WD仕様であり、オプションのパノラマルーフや9インチのディスプレイオーディオも備わっているなど、オプションも充実しています。
2022年式の個体であり内外装のコンディションは全体的に良好ではあるものの、走行距離は約1万2000kmとなっており、「新車同様」とはいえません。
カローラクロスの「ハイブリッド Z」の2WD仕様の新車価格は299万円であり、パノラマルーフなどのオプションを含めた乗り出し費用は350万円程度です。
中古車販売店の担当者によれば、このカローラクロスに特殊な装備やヒストリーはなく、あくまで一般的な「中古車」であるとのことです。
にもかかわらず、この個体は、新車価格に対しておよそ150万円ほどのプレミアが上乗せされた価格となっています。
大手中古車販売店の場合、基本的に各個体の価格は、業者向けオークションでの仕入れ費用によってほとんど自動的に決まるため、話題作りなどを目的にして恣意的に設定された価格でもないようです。
実際、別の大手中古車販売店でも、400万円台後半で販売されているカローラクロスが複数台販売されており、相場全体が高騰していることがうかがえます。
■中古車のメリットは「安く買える」から「早く手に入る」に
中古車の価格を大きく左右するのは需要と供給のバランスです。
カローラクロスは世界的に人気の高いコンパクトSUVであり、日本でも発売直後から好調な販売を記録しています。
とくにハイブリッド車はクラストップレベルの燃費性能を誇っていることなどから、日本の販売の多くはハイブリッド車が占めています。
一方、世界的に半導体や部品が不足していることで、新車の生産が予定通り進まないことが昨今の自動車業界を悩ませており、世界トップクラスの新車販売台数を誇るトヨタは、そうした影響を最も受けている自動車メーカーのひとつです。
とくに、半導体を多く必要とするハイブリッド車はガソリン車などに比べて納期がさらに長くなる傾向があり、トヨタの場合、ハイブリッド車のほとんどが6か月以上の納期となっているか、そもそもオーダーを停止しているという状況です。
このような状況のなかで、カローラクロスのハイブリッド車をできるだけ早く手に入れるためには、やはり中古車市場に頼るしかありません。
しかし、カローラクロスのような比較的新しいモデルはそもそも中古車自体が少ないため、市場に出るものは文字通り争奪戦となります。その結果、新車価格を大きく超えるプレミア価格となってしまうようです。
ある中古車業界関係者は、昨今の中古車市場について次のように話します。
「これまでの常識では、中古車は基本的にコストを優先するユーザーが選択するものでした。
言葉を選ばずいえば、『新車を買う予算がない』ということが、中古車を選ぶ大きなモチベーションとなっていました。
しかし、最近では、『早く手に入れられること』を理由に、中古車を選ぶユーザーが増えています。
そうしたユーザーは『安く買うこと』を優先しているわけではないため、新車に近い個体は必然的に相場が上がることになります。こうした状況は、新車の供給が回復するまで続くことが予想されます」
※ ※ ※
残念ながら、半導体を始めとする部品の不足が解消する目処が立っておらず、当面はこうした状況が続きそうです。
そのため、新車価格を大きく超えるプレミア価格で販売されるモデルがカローラクロス以外にも登場する可能性は大いにありそうです。
これまでの常識から考えれば、まさに「異常事態」といえる昨今の中古車市場ですが、その一方で、社会には「追加料金を支払う代わりに、早く手に入れられる(優先してサービスを受けられる)」というものは少なくありません。
新車の供給が回復するまでは、中古車に対してもそうした考え方を持つようにするのが、もっとも有効な対策なのかもしれません。
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