高付加価値のコンパクトといえば
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
コンパクトEVの登場が相次いでいるが、新しいモデルが追加となる。英国で製造される、ミニ・エレクトリックだ。
まだ乗り換え候補を決めかねていたり、ソーラーパネルを屋根に乗せている自動車ユーザーにとって、2020年は節目となるだろう。英国でのセカンドカーは、環境負荷の小さいモデルを選ぶ時がやって来た。
純EVモデルが英国市場へも次々に上陸する。フォルクスワーゲンにホンダ、プジョー、ボクソール(オペル)などが、ゼロ・エミッションを掲げたモデルをリリースする。ルノーやスマート、ヒュンダイ、キアなどは、矢継ぎ早に既存モデルの刷新に動いている。
いずれのモデルも価格的に近似しており、クルマとしての位置づけも近いところにある。一気に増えた感のあるコンパクトEVだが、われわれの長期的な要求を満たしてくれるのだろうか。業界関係者だけでなく、多くの人が注視している。
そんな電動化を進める自動車メーカーが興味を示す、高付加価値を掲げたコンパクトカーとしての、確かな血統を築いたメーカーがある。価格が高めになるコンパクトEVとして、相応しいポジションを既に確立しているブランド。それがミニだ。
BMWに属するブランドで、最も有名なミニ。これまで20年にわたって、ミニ・エレクトリック以上の価格を、コンパクトカーへ支払うユーザーがいることを証明してきた。その嗜好は、新しいミニ・エレクトリックとなっても同様に受け継がれるだろう。
航続距離はWLTP値で231km
ミニ・エレクトリックの場合、環境意識や高めの価格が課題ではない。現代のEVとして使い勝手が良いのか、待ち望んでいた内容かどうか、そこにありそうだ。
ミニ・エレクトリックは、基本的には3ドアのミニ。リチウムイオン電池を搭載し、リアシートの座面が僅かに持ち上げられている以外、車内空間への影響はほとんどない。とはいっても、車内の利便性がライバルのEVより優れているとは呼べないだろう。
ボンネット内には、BMW i3Sと共通の電気モーターが収まる。最高出力は183psで、最大トルクは27.4kg-m。このモーターはBMWが特許を持つハイブリッド同期と呼ばれる仕様で、多くの電気モーターより優れた効率を備えている。ネオジムなど、レアアースの使用量を削減できる点もメリットだ。
同時にモーターの内部、パワーを生むローターを軽量に仕上げることで、許容する回転数も高い。その結果、より幅広い回転域で高いパワーを発揮できるという。
EVのもう1つの大切な部品、リチウムイオン・バッテリーはリアシートの下と、車両中央のトランスミッション・トンネルに相当する部分へT型状に搭載。ミニに収まる限り大きいバッテリーとのことだが、容量は28.9kWhだ。
コンパクトEVでも、欧州市場中心のルノー・ゾエやプジョーe-208などは50kWh前後のバッテリーを搭載しているから、競争力のある容量ではない。ミニの技術者によれば、世界規模での認証と安全基準を満たすため、これ以上のバッテリーの搭載は難しかったとしている。
航続距離はWLTP値で231km。多くのユーザーの日常利用をカバーできる数字だと、ミニは判断している。
パワーウエイトレシオは131ps/t以上
しかし客観的に見て、クルマの価格と比較すると、航続距離は不安要素でもある。プジョーやボクソール(オペル)、キアやルノーなどは安価に、それ以上の航続距離を叶えている。ミニにとって、あまり触れられたくない部分だろう。
試乗コースとなったのは北米のマイアミ。天気の良い、交通量の多い条件での航続距離は200kmほどだった。より平均スピードが高く、寒い英国の道路環境では160kmほどの航続距離になるのではないだろうか。
もし同等のサイズと価格を持つ、ライバルのコンパクトEVを選んだのなら、航続距離は50%ほど長いはず。また、400kmから480kmほどの航続距離を持つEVも、ミニ・エレクトリック並みの価格で手に入る。合理的に考えると、悩む部分となるだろう。
一部のユーザーにとっては、クルマのドライビング体験が、航続距離の短さを越える魅力とならなくもない。比較的小型のバッテリーのおかげで重量も軽く、ミニ・エレクトリックのパワーウエイトレシオは、131ps/t以上。
ルノー・ゾエの最も速いグレードやプジョーe-208でも、90ps/tといった辺り。かなり機敏に走るキア・ソウルEVですら、120ps/tは超えない。
今回の試乗ルートは混雑も多く、100km/hに届くスピードも出せなかったから、ライバルモデル以上の力強いパフォーマンスを備えているとは感じにくかった。だが、少なくとも気張る必要はまったくなかった。
ミニらしいフラットで鋭いハンドリング
多くのEVと同様に、静止状態からの加速は鋭く、80km/hまでが最も活発に走る速度域。とっさの加速で深くアクセルペダルを踏み込めば、トルク感はほどほどだが、不満のないレスポンスを得られている。
小さ目の慣性で速い流れへの合流も簡単にこなせ、アクセルペダルを踏み込むほどに鋭く後続車を引き離していく感覚は楽しい。そのかわり、80km/hを超えてくるとモーターが頑張るノイズが聞こえてくる。
聴覚での魅力として、モーターのメカニカルノイズを調律しなかったことは少々残念。現状では、クルマが発する明確なサウンドといえば、歩行者へクルマの接近を知らせるための、静かに響く近接音だけだ。むしろその音も、ミニならデザインできたのではないだろうか。
車重はクーパーSの3ドアと比べると150kgほどの追加となっているが、重心はライバルモデルと比べれば30mmほど低い。おかげで、フラットで機敏な、ミニらしい鋭いハンドリングは損なわれていない。もっとも、それを楽しめるのは航続距離内に限られるのだけれど。
横方向のグリップ力は高く、ハンドリングの応答性は他のミニと並ぶほど良好。より適した道なら、もっと楽しめるはず。
垂直方向の姿勢制御はかなりタイト。多くのライバルと同様に、特に重さは感じさせない。むしろ増えた車重は、低速域での乗り心地をフラットにし、一般的なミニの水準より快適に感じられた。とても納得のいく仕上がりとなっているようだ。
楽しいゼロ・エミッション
航続距離を伸ばすため、転がり抵抗の低いタイヤに依存していない点も評価できる。ミニらしいくエネルギッシュでダイナミックな走りは、ドライバーへの訴求力となるだろう。
一方で日常的な利便性の面では、航続距離という制限がつきまとう。英国の交通環境で、改めて確認したいところだ。
わたしの第一印象としては、ミニ・エレクトリックは、開発の進むEVという分野の明暗を感じさせるクルマだった。ただし、とても歓迎すべき完成度を持つ1台でもある。
EV化が進むコンパクトカーの中で、ミニ・エレクトリックは最も磨き込まれた、実用性の高い選択肢とはいいにくい。しかし、ちゃんとミニらしいドライビングを味わわせてくれる。ゼロ・エミッションというカテゴリーに、楽しさを加える準備は整っているようだ。
ミニ・エレクトリックのスペック
価格:2万4400ポンド(3487万円・政府補助金適用後)
全長:3821mm
全幅:1727mm
全高:1414mm
最高速度:149km/h(リミッター)
0-100km/h加速:7.3秒
航続距離:231km(WLTP複合)
CO2排出量:0g/km
乾燥重量:1365kg
パワートレイン:ハイブリッド同期モーター
バッテリー:28.9kWh
最高出力:183ps/7000rpm
最大トルク:27.4kg-m/100-1000rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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誰が買うんだ、そんなEVミニ。