Nシリーズ初の商用車として、2018年7月にデビューしたホンダN-VAN。
先進の運転支援システムや助手席側ピラーレス構造がもたらす1580mmという巨大な開口幅、運転席を除いた車内全体がフラットな荷室になる画期的なシートレイアウトなど、これまでの軽商用バンの常識を打ち破る魅力を備えた次世代の働くクルマだ。
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そのN-VANが発売してから早くも2年が経とうとしている。はたして、順調に売れているのか? 発売当初からの評価は変わっていないのか? ここで改めて、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏がN-VANを再評価!
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部 ベストカーWeb編集部 Honda
【画像ギャラリー】規格外の軽商用バン、N-VAN人気の理由がわかる詳細写真
軽乗用車N-BOXベースの革新的軽商用バン!
エンジンをボンネットに収めるN-VAN(左)と、エンジンを床下に収め、後輪を駆動する典型的な軽バンのアクティ(右)
2019年に販売された新車のうち、軽自動車は37%を占めている。特にバンやトラックなどの「商用車」では、軽自動車比率が49%に達する。商用車では、軽自動車が乗用車以上に普及しているのだ。
そして軽商用車のなかで、最も注目されている車種がホンダN-VANだ。2019年には4万5230台(1ヵ月平均で3769台)を販売し、当時モデル末期だった先代スズキハスラーと同程度になる。これはダイハツキャストよりも多く、商用車とは思えない販売台数だ。
また2019年におけるライバル車の売れ行きは、スズキエブリイバンが7万3424台(1ヵ月平均で6119台)、ダイハツハイゼットカーゴは6万9487台(5791台)であった。N-VANの売れ行きは、これらのライバル車に比べると少ないが、十分に健闘している。
N-VANが健闘したと考えられる理由は、ライバル車に比べて、従来型からの乗り替え需要が乏しいからだ。N-VANは2018年7月に発売されたが、その前身はアクティバンだった。
アクティバンの発売は1999年と古く、2017年の販売台数は、同じボディを使う商用車のバモスホビオプロを含めて8769台(1ヵ月平均で731台)。
アクティバンは保有台数も減っており、乗り替え需要の多いエブリイバンやハイゼットカーゴに比べると、売れ行きが伸び悩んで当然だ。
N-VANは、アクティバンやライバル車に比べると荷室長が短い。ほかの背の高い軽商用バンは、エンジンを床下や前席の下に搭載して後輪を駆動するから、ボンネットに相当する部分が短い。
そのためにアクティバンの荷室長は1725mm、ライバル車のエブリイバンジョインは1820mm、ハイゼットカーゴクルーズは1755mmに達する。
一方、N-VANのエンジンは、N-BOXと同じくボンネットの内部に搭載するから荷室長は1510mmだ。したがって長さが1.6m、幅が1mの荷物は、アクティバンやエブリイバンの荷室には収まるが、荷室長が200mm以上短いN-VANには積載できない。
助手席ダイブダウン時は2635mmという荷室長を誇るN-VAN
それならどうして、荷室長の長い独自のボディを備えるアクティバンをあえて廃止して、N-BOXベースのN-VANに変更したのか。
その理由は、軽商用車は薄利多売の傾向が強く、大量に売らないと採算がとれないためだ。
2019年におけるエブリイバンの販売台数は7万3424台だが、他メーカーにOEM車も供給されている。
日産NV100クリッパー(2019年の販売台数は2万8828台)、三菱ミニキャブバン(6112台)、マツダスクラムバン(5364台)も加わり、エブリイバンと合計すれば11万3728台だ。
さらにエブリイには同じボディを使うワゴンもあり、この販売台数は、OEM車も含めると2万3207台になる。
バンと合計した2019年の総生産台数は13万6935台(1ヵ月平均で1万1411台)だ。2019年のスズキスペーシアが16万6389台だから、エブリイもワゴンやOEM車を含めると、膨大な台数を生産している。
つまり独自の軽商用車を成立させるには、OEM車も含めて、これほどの台数を生産せねばならない。
ホンダはOEM関係を持たないから、アクティバンを終了させて、N-BOXと基本部分を共通化するN-VANを開発したわけだ。N-BOXは国内販売NO.1車で2019年に25万3500台を販売しているから、量産効果も見込める。
左がN-VANプラススタイルクール(唯一のロールーフ仕様)、右がN-VANプラススタイルファン
荷室長は短いがそれを補う魅力が満載
後席+ラゲッジの荷室長では1510mmは、アクティバンの1725mmと比べて200mm以上も短くなる
その代わりにN-VANは、前述のように荷室長が短い。軽商用車では重大な欠点だから、これを補うために、N-VANはエブリイバンやハイゼットカーゴには備わらない機能を盛り込んでいる。
まず後席に加えて助手席も床面へ落とし込むように折り畳める。すべて畳んだ状態では、運転席以外は平らな荷室になる。
大きな荷物は積めないが、L字型の荷室面積は広いから、38cm×31cmの段ボール箱をたくさん積むような用途にはピッタリだ。
この機能をさらに高めるため、スライドドアも工夫した。左側はダイハツタントのように、ピラー(柱)をスライドドアに埋め込んでいる。
前後のドアを両方ともに開くと、開口幅は1580mmに広がり、タントの1490mmを上まわる。段ボールをたくさん積み降ろしする時など、左側のワイドな開口部とリアゲートを併用すると、作業効率が大幅に向上する。
軽バン初となるセンターピラーレスドアを採用したN-VAN。この構造を採用したことにより、助手席側開口部幅は1580mmを実現し、荷物を積み降ろす際の効率が圧倒的に高められた
安全装備と運転支援機能が充実することも特徴だ。歩行者や車両を検知できる衝突被害軽減ブレーキに加えて、車間距離を自動制御できるクルーズコントロール、車線の中央を走れるようにパワーステアリングを制御する機能も備わる。
衝突被害軽減ブレーキは、エブリイバンやハイゼットカーゴも用意するが、運転支援機能は軽商用車ではN-VANならではだ。
見た目はN-BOXに近いが中身はどう違う?
登録車と軽自動車を合わせた新車販売台数が2018年、2019年と2年連続でNO.1、軽自動車販売5年連続NO.1を誇るN-BOX
全高1790mm、室内高1400mm、スライドドア開口幅640mm。N-BOXはセンターピラーレスドアを採用していない
ホンダカーズ(ホンダの販売店)の営業マンにN-VANの最近の状況を聞いてみると、本音を語ってくれた。
「大きな荷物を積むお客様は、N-VANをあまり検討されません。洋服や花など、軽くて小さな荷物を積むお客様が購入されています。
なかにはN-VANを検討したうえで、N-BOXを選び、後席を畳んで荷物を積むお客様もいらっしゃいます。
N-VANは商用車、N-BOXは乗用車ですが、お客様から見ると明確な線引きはないと思います」とコメント。
小型/普通商用車の車検は、毎年受けるが、軽商用車なら2年ごとだ。そうした違いはあるが、N-VANは軽乗用車に近い感覚で使える軽商用車という認識のユーザーが多いのだろう。ただし注意すべき点もある。
まずシートの座り心地だ。商用車の規格では、後席の面積よりも、荷室を広く確保する必要がある。
したがってN-VANの後席は、N-BOXに比べると前寄りに装着され、足元空間が極端に狭い。
後席の背もたれは直立しており、座面を含めて薄手だから、柔軟性が乏しく座り心地も悪い。ベーシックなグレードの後席には、ヘッドレストも備わらない。
プラススタイルファンホンダセンシングのインテリア
G、Lグレードの後席はヘッドレストが付かない
助手席も小さく畳める構造だから、N-BOXに比べて座り心地が悪い。硬めで柔軟性が乏しく、サポート性も不満だ。
つまりN-VANの場合、運転席以外はすべて補助席で、2名以上の乗車で長距離を移動する用途には適さない。
スライドドアは、N-BOXなどの軽乗用車では電動開閉式が多いが、N-VANはピラーをスライドドアに内蔵したこともあって手動式だ。
乗り心地にも注意したい。N-VANは最大積載量を350kg(2WD)に設定した軽商用車だから、軽乗用車のN-BOXに比べると足まわりが硬い。
指定空気圧も前輪が280kPa、後輪は350kPaと際立って高く、これも乗り心地に悪い影響を与えた。
軽乗用車のN-BOXは、14インチタイヤが240kPa、230kPa、15インチは前後輪ともに210kPaだから、N-VANはシートの座り心地とタイヤの設定が相まって、乗り心地が一層硬く感じる。
車両重量はN-BOX G・Lホンダセンシングが890kg、N-VAN Lホンダセンシングは930kgと重く、N-VANのNAエンジン車はパワー不足を感じる。
操舵感はすべてのグレードについて鈍めの設定だ。重く高重心のボディで走行安定性を確保するため、車両の動きを抑えた。
N-VANのお薦めグレードは?
とても商用バンとは思えないN-VANプラススタイルファンターボホンダセンシング
お薦めグレードは、一般ユーザーが購入するなら、フルLEDヘッドライトなどを標準装着して動力性能に余裕を持たせたプラススタイルファンターボホンダセンシング(169万9500円)がベストだ。
人気のグレードで、販売比率は20%を占めている。またこのグレードの価格は、N-BOXならG・Lターボホンダセンシング(173万8000円)と同等だ。快適装備はN-BOXが充実しており、N-VANは荷室の機能に重点を置いている。
まとめ
多人数乗車が多いならN-BOX、そうではなければN-VANをお薦めしたい。お薦めする理由はN-BOXにはないセンターピラーレスドアによる乗降性のよさ、完全にフラット化できるダイブダウン機能を備え、125ccのバイクも積める広大な室内スペース、さらには乗用車と同等の先進安全装備を備えるなど、とても商用バンとはいえない魅力を備えているからだ。
なかでも丸目のフルLEDライトを備え、愛嬌のあるマスクデザインの「プラススタイルファン」はオシャレで商用バンには見えないほどスタイリッシュだから、これが一番のお薦めグレードといえる。
ただし、商用バンならではの注意すべきポイントを見極めてから買う必要がある。運転席にはサイドサポートのしっかりとしたシートを搭載するが、可倒機構を内蔵する助手席は極めてシンプルな作りで、座面も硬い。収納することを前提としているため、リアシートの座面とシートバックも薄くて硬いのだ。
注意すべきポイントがあるが、商用バンとしての使い方だけでなく、日帰りキャンプや車中泊などのニーズが増えていくだろうから、趣味のクルマとしてのN-VAN人気はますます高まっていくだろう。
N-VANの車中泊仕様(ホンダアクセス)
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みんなのコメント
Nバンで日本中を旅してみたいな。武漢肺炎ウイルスのワクチンができたらね。
俺はコンパネ使う仕事じゃねぇんだ!(笑)
目的に合わせて好きな車買っているんだから!