F1チームには多数の人々が関わり、さまざまな職種が存在する。この連載では、普段は注目を浴びる機会が少ないチームメンバーに焦点を当て、その人物の果たす役割と人となりを紹介していく。今回取り上げたのは、メルセデスのスポーティングディレクターを務めるロン・メドウズだ。
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F1のピットウォールでは、チームプリンシパルや上級スタッフが意思決定を行う。ここの席に座れる人々は、F1チームメンバーのなかで最も魅力的で重要な特権を持っているといえるだろう。
チームによって、誰がピットウォールに座るのか、何人座るのかは異なっているものの、一般的にメンバーとして選ばれる主な役職のひとつがスポーティングディレクターだ。メルセデスでそのポジションに就いているのはロン・メドウズで、彼は長年メルセデスで働き、舞台裏で重要な役割を果たしてきた。
メドウズはイングランド北西部で育った。F1のキャリアを追求するのに最も適した国にいたわけだが、彼自身は、レースには興味があったものの、最初はF1を目指しているわけではなかった。
幼いころからレースに魅了され、チェシャー州にあるオールトンパーク・サーキットのレースイベントに頻繁に足を運び、レースに接していたという。その関係で彼はメカニックとしての訓練を受け、さまざまなカテゴリーを経験しながらステップアップしていき、フォーミュラ3000に到達した。彼はそこで自分自身のチームを管理していた。
しかしF1が視野に入っていなかったメドウズは、アメリカに渡り、インディカーでの仕事を始めた。当時CART選手権と呼ばれていたシリーズで、ウォーカー・レーシングに職を得たのだ。
チームは何度か勝利を収め、インディ500での優勝にも近づいた。そして1990年代後半までに築いた経験をもとに、メドウズは、イギリス・ブラックリーに設立される新しいF1チーム、ブリティッシュ・アメリカン・レーシング(BAR)のファクトリーマネージャーとしてチームに招かれた。
メドウズは、F1チームに加わることについて、当初は懸念を抱いていたという。というのも、F1チームは規模が大きいため、自分が単なる『数字』に過ぎなくなるのではないか、大規模な組織内で影響力を発揮するのは難しいのではないか、と考えたからだ。1999年にチームを立ち上げて初のレース参戦を実現する手助けをしたメドウズは、ファクトリーでの役割に満足していたが、BARが思うような結果を出せないなかで、2000年初めにレースへの同行を依頼された。
当初は、フルタイムで転戦することを望むメンバーが見つかるまでの3戦だけ、チームマネージャーの役割を引き受けるつもりだったというが、結局メドウズはその役割から離れることはなかった。ホンダがBARを買収した後も、彼はチームマネージャーとしてとどまり、2008年にはスポーティングディレクターに昇進した。
そのわずか1年後、ホンダはF1から撤退したが、メドウズは2009年にドライバーズ選手権とコンストラクターズ選手権の両方を制覇したブラウンGPの奇跡に重要な役割を果たした。翌年、チームはメルセデスとなり、大規模な投資と拡張を始めるなか、メドウズはスポーティングディレクターとして、引き続きチームに貢献した。
長年メドウズがこの役職において担当しているのは、チームが常にスポーティングレギュレーションを順守するようにすること、FIAやレースコントロールとの話し合いにおいてメルセデスを代表すること、ピットストップの調整を支援すること、F1スポーティング・アドバイザリー・コミッティー(SAC)の一員としてスポーツ全体の将来の問題に取り組むことなどだ。
同じチームで4つの異なる名称での時代を経て、四半世紀以上を過ごしてきたメドウズは、ブラックリーの一番の功労者といえるだろう。そして彼の息子マットは現在メルセデスAMGペトロナスのパートナーシップ部門で働いている。つまり、『メドウズ』の名前がさらに25年、チームの一部に残り続ける可能性があるわけだ。
1990年代終盤にブラックリーを拠点とするF1チームが設立されて以来、『メドウズ』の名前がこのチームに存在しなかった時期は一度もない。ロンが最初はF1チームで働きたいとは思っていなかったことを思うと、ある意味、不思議なことでもある。
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