2023年のNASCARカップシリーズ第3戦『ペンズオイル400』が、3月3~5日にラスベガス・モータースピードウェイで開催され、予定されていた267周から271周勝負となった決勝で、実に176周のリードラップを刻んだウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が今季初優勝。
その背後では、最後の瞬間まで勝利に最も近い位置を走ったカイル・ラーソンとアレックス・ボウマンが続き、ヘンドリック・モータースポーツ(HMS)がカップシリーズで3回目の1-2-3フィニッシュを達成することに。HMS陣営にとっては、この週末を前に急きょ欠場を余儀なくされたチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)に捧ぐリザルトとなった。
シボレー移籍わずか2戦目で“宿願”達成。RCRのカイル・ブッシュが今季初優勝/NASCAR第2戦
レースウイーク金曜に飛び込んできたまさかの一報は「2020年のカップ王者が大怪我を負い、緊急手術を実施した」という衝撃的なニュースだった。現地入りを前にコロラド州でスノーボードを楽しんでいたエリオットは、事故の際に左足を負傷。そのまま夜に3時間の脛骨骨折の回復手術を受け、今季の見通しが完全に不透明な状況に追い込まれてしまった。
「現時点で明らかに数週間は掛かると予想している」と明かしたHMS社長兼ゼネラルマネージャーであるジェフ・アンドリュース。「これ以上、提供できるタイムラインはない。将来、チェイスや彼の医師と協力して意思決定を助けることは明らかだが、これも繰り返しではあるものの、リック・ヘンドリック(会長)とHMSにとって最も重要なことは、チェイスの健康と幸福だ。我々はそのタイムラインでのみ彼と協力する」と続けたアンドリュース。
「我々はチェイス・エリオットと一緒に長いあいだレースをするつもりだし、一緒にもっと多くのレースで勝つつもりだ。確かにこれは少しの後退であり、チェイスは明らかに失望している。非常に厳しい現実だが……彼が健康でレースカーに戻る準備ができたら、彼のためにシートを用意する」
こうしてシボレー・カマロZL1の9号車には、急遽の代役としてNASCARエクスフィニティ・シリーズを戦うジョシュ・バリーが招聘され、自身にとってはこれが“Next-Gen”車両での初レースに。プラクティスでは失意のチーム全員を鼓舞するかのように2021年王者のラーソンが最速タイムを刻むも、予選ポールポジションはディフェンディングチャンピオンのジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)がさらっていく。
■日曜ファイナルでは4度のコーションが発生
日曜ファイナルでも前戦勝者のカイル・ブッシュ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)や、ポールシッターのロガーノ、そしてエリオットのクルマを預かるバリーらがウォールに“ブラッシュ”する瞬間があったものの、序盤のコーション発生はなくバイロンの24号車がステージ1、2を連続で制していく。
そんなラスベガスに最初のイエローが発生したのは、最終ステージ開始9周目のラップ183。ターン4のボトムにブッシュ、ミドルにブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)の並ぶ最上段で、曲がらないマシンと格闘していたロガーノがケセロウスキーと接触した後、ウォールにヒットしてスピンを喫し、インサイドのグラスエリアを滑走。
そのまま“ペンズオイル”バナーの上でストップしたロガーノのマスタングは、今季より7分間とされたリペアタイム内での修復も叶わず。ここで終戦となる。「ケセロウスキーが僕を隅に押しやったかって? ああ、彼はそうした。でも彼自身、そうするつもりではなかったことも理解している。それが現実さ。どうすれば良かったかって? 僕らは柵で囲われていたんだ」と状況を振り返った王者ロガーノ。
190周目に迎えたリスタートで、この日は終始トップ5圏内を争ったデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)や、僚友ボウマンに次ぐ3番手で勝負を再開したラーソンは、直後の196周目にトップの座を奪っていく。
そのまま残り5周を切り、背後の2番手バイロンに一時5秒近いマージンを築いたラーソンだったが、そのギャップも2秒前後に縮まった263周目に、アリック・アルミローラ(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)がターン4でスピンアウト。ここで4回目にして最後のコーションが発生する。
上位勢では今季開幕前エキシビジョン勝者のマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)のみが“ステイアウト”を選択し最後の勝負に出たものの、ラーソンやバイロンを含む後続は2本交換のためピットへ。
■ラスベガス初勝利のバイロンはクルーの努力を強調
ここでわずかな作業速度で上回ったバイロンがラーソンの前に出ると、残り2周のオーバータイムで明暗がくっきり。すぐさまトゥルーエクスJr.を仕留めたアウト側のバイロンに対し、カムリの背後で前方を塞がれたラーソンは勝負権を失い、ホワイトフラッグでようやくトヨタの前に出たふたりを従え、HMSの陣営内対決を制したバイロンが、ラスベガスでの初勝利を手にする結果となった。
「彼らクルーは非常に懸命に働いており、僕らはオフシーズンに多くの時間をシボレーと一緒に過ごしたんだ。そこでSim(シミュレーター)を活用し、iRacingで練習したりして、僕自身もドライバーとして良くなろうとしているし、彼らもチームとしてより良くなろうとしているだけなんだ」と、クルーの努力が実ったことを強調するバイロン。
「でも今は家に帰ったチェイスのことを考えている。彼が僕らと一緒にこの場にいてくれたらいいのに(すでにHMSの拠点ノースカロライナ州に帰還)。彼は素晴らしいレーシングドライバーであり、素晴らしいチームメイトだ。本当に彼がここにいたらいいのに……」
併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第3戦『アルスコ・ユニフォーム300』は、開幕戦勝者オースティン・ヒル(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)が早くも今季2勝目を挙げ、ラスベガスでの通算4勝目をマーク。
同じく併催となったNASCARクラフツマン・トラック・シリーズ第2戦は、カップ戦同様に今季からシボレー陣営へと変化したカイル・ブッシュ・モータースポーツの盟主カイル・ブッシュが、こちらもわずか2戦目にしてシボレー・シルバラードRSTで勝利。服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライズ(HRE)は、16号車タイラー・アンクラム(トヨタ・タンドラTRDプロ)がパンクも喫して15位に終わっている。
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