2023年のF1エミリア・ロマーニャGPは、舞台であるイモラ・サーキット周辺が豪雨に見舞われ、洪水被害が多発したことを受け、開催が中止されることになった。グランプリ開催よりも、人道的支援を優先するべきというのがその最大の理由であり、F1チームなど正しい判断だったと支持している。
このエミリア・ロマーニャGPからモナコ、スペインと、3週連続でグランプリ開催が予定されていた。過酷なトリプルヘッダーがダブルヘッダーになったことで、いくつかのチームはひと息つくことができる……そう考えるのは、大きな間違いだ。
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エミリア・ロマーニャGPが開催されなくなったことで、スケジュールは突然変更。この変更は全チームにかなりの影響と複雑さをもたらすだろう。その対策として、今週末にファクトリーで様々な議論が行なわれることだろう。
では、どんな影響が考えられるのか? 本稿ではそのいくつかを見ていく。
■アップデートへの影響
今シーズンのF1は、イモラが欧州ラウンドの初戦だった。各チームはファクトリーが近いということもあり、ここでアップデートを投入すべく準備を進めてきた。
しかし開催が中止されたことで、欧州ラウンド初戦はモナコということになる。モナコは狭く曲がりくねった特殊な市街地サーキットであり、新パッケージの評価をするには不向きなコースと言える。またクラッシュのリスクも高いため、せっかくの新パーツを壊してしまう可能性もある。そのため、チームはモナコにアップデートパーツを持ち込むのか、それともスペインまで先送りするのか、判断を迫られることになる。
メルセデスは、エミリア・ロマーニャGPにサイドポンツーンやフロア、そしてフロントサスペンションを投入する予定にしていた。彼らはこの新パッケージの投入を、スペインに先送りするのではなく、モナコで投入するようだ。
一方、新しいリヤサスペンションを投入する予定だったフェラーリは、この投入をスペインに先送りすることに決めたようだ。しかも彼らは、エミリア・ロマーニャGPの開催中止が決まる前の段階で、荒天になるとの予報を踏まえて、早々に判断を下していた。
また、アルファタウリは新しいフロア投入を予定しており、アルファロメオもパフォーマンス向上のためにマシンに複数のアップデートを施すことを決めていたが、彼らの判断にも注目が集まる。他のチームのエンジニアも、モナコで新パーツを投入するか、あるいはスペインまで待つことにするか……その検討をしていくことになろう。
■新しい予選方式はどうなる?
エミリア・ロマーニャGPは、新しい予選方式が試されることになっていた。これは各ドライバーに割り当てられるタイヤのセット数が11セット(通常は13セット)に削減され、予選のQ1ではハード、Q2ではミディアム、Q3ではソフトを使うことが義務付けられることになっていた。これにより、決勝での戦略に多様性が生まれることが期待されていたのだ。
今シーズンはこの新しい予選方式を最大2グランプリで実施することになっていた。エミリア・ロマーニャGPと、ハンガリーGPである。つまり今週末のグランプリが開催されなくなったことで、今季のF1が夏休みに入る直前まで、新しい予選方式の試用は待たなければいけない。
ただエミリア・ロマーニャGPで新予選方式の試用が1戦のみに削減されたというわけではない。今後別のグランプリで実施するかどうか、ピレリ、チーム、FIAも含めた話し合いが行なわれることになるだろう。
■F1の収入に対する影響
■パワーユニットやギヤボックスの年間使用基数に影響は?
今のF1では、シーズン中に使えるパワーユニット(PU)やギヤボックスの上限数が定められている。
そのうちPUに関しては、以前はシーズン中のレース数に応じて、使える基数の上限が定められていた。しかし、レースが追加されることで、全ドライバーが追加のPUを必要とするということになった場合、PUメーカーやカスタマーチームには経済的負担が嵩むということになるため、現在では廃止されている。
現在のレギュレーションでは、PUの各コンポーネントの基数はシーズン全体に対して設定されているため、エミリア・ロマーニャGPが中止されたことによって何らかの影響が及ぶことはないだろう。
ギヤボックスの使用制限数については、レースの開催数によって変動する形になっている。しかし2023年に関しては、24戦を超えた場合には5セットまでと規定されているため、当初23戦だったことを考えれば、影響が及ぶことはないだろう。
■コスト上限への影響
現在のF1では、年間予算の上限額が定められている。その規定額以下で運営することに、各チームは頭を抱えており、誤って上限を超えることにないよう、絶えず気を遣わなければならない。
メルセデスのチーム代表であるトト・ウルフは以前「オーバーランするごとに10000ポンド(約172万円)の費用がかかる」と言っていたこともある。
この予算上限額は、年間のレース開催数に応じて増減する。各チームは、1年に21戦開催される場合には1億3500万ドル(約186億5000万円)を1年間に使えることになっており、1戦増えるごとに120万ドル(約1億6000万円)が追加で使えるようになる。
つまりエミリア・ロマーニャGPが中止される前の時点、23戦のシーズンならば、1億3740万ドル(約190億円)が予算上限額だった。しかし22戦では、1億3620万ドル(約188億2000万円)に制限される。
しかしF1のレギュレーションでは、開催カレンダーの変更がかなり遅い段階で決まる場合を考慮している。競技開始予定日の3ヵ月前より後に開催中止が決まった場合、そのレースは開催されたと同意味とみなされる。
つまり今回の場合は、エミリア・ロマーニャGPが中止されたのが開催直前だったということもあり、予算上限額は23戦がスケジュールされていた時と同様、1億3740万ドルということになる。
■F1の収入に対する影響
F1に予算上限額が設定されたことにより、各チームは生き残りを賭けて財政面に頭を悩ませる必要がなくなった。しかしその結果、チームが利益のことを気にしていないというわけではない。
その面では、F1チームに影響が及ぶ可能性がある。
F1の収益において、レースの開催権料はかなり大きな部分を占める。そのため、グランプリの開催が中止されることになれば、各チームが受け取る分配金に影響が及ぶ可能性がある。
エミリア・ロマーニャGPは、不可抗力での開催中止であるため、主催者は開催権料の支払いを免除されるはずだ。この額は約2000万ドル(約27億6000万円)であると考えられる。
おそらく今回のグランプリ中止により、受け取る分配金はおそらく当初の予定よりも少なくなるはずだ。しかしそれは、全体からすれば比較的少額であるはず。エミリア・ロマーニャGPが開催されないことで走行距離が節約されたことを考えれば、ある程度相殺されるはずだ。
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