サファリラリー・マシンに迫る走破性
第2世代へモデルチェンジしたフォード・レンジャー・ラプターが、グレートブリテン島にもやってきた。島国のなかにも、この登場を喜ぶ人は少なくないはずだ。
【画像】フォード・レンジャー・ラプター ワイルドな北米のピックアップ ハイラックスとDマックスも 全136枚
実用的なダブルキャブを備えた、ただのピックアップトラックではない。荒野を高速で疾走する、サファリラリー・マシンに迫るような走破性を備えている。
新しくなった2代目は、ディーゼルターボを搭載していた先代よりひと回り大きくなった。ボンネットに収まるエンジンは、3.0L V6ガソリンターボへ交代している。アクティブ・エグゾーストシステムも搭載し、静かに走ることも可能だ。
新しいレンジャー・ラプターで興味深い点が、走行中にサスペンションが鳴らすカチカチという小さなノイズ。ジャンプなどでタイヤが一瞬浮いた状態になると、明らかにキャビンへ届く。
高性能とはいえ、公道走行可能なピックアップトラックがグレートブリテン島で頻繁に宙を舞うとは考えにくい。レンジャー・ラプターが開発された、真っ赤な大地が広がるオーストラリアなら、さほど珍しくないのかもしれないが。
このカチカチ音は、サスペンションのコントロールアームに取り付けられた、ポジションセンサーが発している。サスペンションが大きく伸縮した時に、シャシーの頭脳となるビークル・ダイナミクス・コントローラー(VDC)へ制御信号を送っているのだ。
本気の電子制御四輪駆動システムを搭載
例えばジャンブした場合、VDCは信号を受けてフォックス社製ライブバルブ・アダプティブダンパーの減衰力を調整。強い負荷へ備える。車重2454kg、全長5381mmもある大きなピックアップトラックを、しなやかに着地させるために。
タイヤが再び地面を掴んだ瞬間、アダプティブダンパーには相当な力が掛かる。しかし、その重量や慣性が生む急速なエネルギー変化を見事に吸収。ボディは何事もなかったかのように前進を続ける。
着地で姿勢が傾いたり、リバウンドすることは殆どない。サスペンションのトラベル量が限界に達していたとしても、それを感じさせることはない。オーストラリア人も驚くに違いない。
それ以外にも、オフロードでの能力には唸らされる。2代目レンジャー・ラプターには、前後アクスルへロッキングデフが組まれ、トランスファーギアも備わる、本気の電子制御四輪駆動システムが搭載されている。
シャシー構造は、従来的なボディ別体のラダーフレーム。最低地上高は265mmもある。タイヤは扁平率70のBFグッドリッジを履く。ほぼ、向かうところ敵なしだ。
ホイールベースは長いものの、タイヤを大きく上下に動かしながら、岩山を難なく登る。アルプス山脈を軽快に歩く、野生のヤギのように。
厳しい排出ガス規制へ対応した292ps
高められた速度域を前提に、コイルスプリングは適度に硬くなっている。それでも充分にしなやかで、過酷な悪路にも対応する長いサスペンション・トラベルを叶えている。
電子制御のトラクション・コントロールも有能。思わず怯んでしまう急勾配にも、呆気にとられるほど簡単に対処してみせた。
もちろん、フォードらしい手頃な価格の小柄なドライバーズカーとは一線を画す。ラリーも楽しめる、フォーカスやフィエスタを置き換えるようなモデルではない。
3.0L V6ツインターボを搭載していても、エキサイティングなオンロードモデルにもなるとは期待しない方がいい。加えて英国仕様では、厳しい排出ガス規制へ対応させるため最高出力が292psへ制限されている。欧州以外の市場では400馬力近いのだが。
フルスロットルを与えると、レンジャー・ラプターは豪快なサウンドを放つ。ところが、実際の加速感はそのボリュームに見合っていない。マッスルカー風にダッシュはしない。
10速ATも、システム任せの状態では印象がいまひとつ。加速時には、不必要にシフトダウンしたがる傾向があるようだ。マニュアルモードを選べば、ドライバーが望んだギアへ素早く繋いでくれるが。
もっとも、広くない道路環境を考えれば、これ以上のエネルギッシュさはいらないかもしれない。5m超えの全長だけでなく全幅は2028mmあるため、平均的な英国の一般道では、小型トラックのように慎重に運転する必要がある。
理想的な場所で本性を解き放ちたい
アダプティブダンパーはオンロードでも有能で、凹凸を見事になだめる。リジッドアクスルを備える一般的なピックアップトラックのように、細かい揺れが続くことはない。
初期の減衰力が漸進的で滑らかに立ち上がり、乗り心地は落ち着いていると表現していい。期待以上の処理能力だ。
ステアリングは、見た目から想像する以上に正確。適度な重み付けと感触が伴う。スポーツワゴンのようなシャシーバランスやグリップ力、軽快な反応などは得られないけれど。
直進安定性は、車高の低いモデルへ迫る。車内へ響くノイズは抑えられており、長めのギア比を活かし、高速道路のクルージングを2000rpm以下でこなせる。長距離の自動車旅行にも構えることなく使えるだろう。燃費は褒めにくいとしても。
ちなみに、新世代にもディーゼルターボは残された。ただし、こちらにはフロントデフからロック機能が省かれ、アダプティブダンパーも装備されない。走破性や操縦性で劣ると考えて良いだろう。
新しいレンジャー・ラプターは、サーキットへ焦点が向けられた高性能モデルのように、一般道では少し肩身が狭く感じられる。理想的な場所で本性を解き放ちたいと、クルマ自体が訴えているような感覚がある。
ドライバーズカーの素地としての可能性
フォードの高性能部門、フォード・パフォーマンスは、バッテリーEV(BEV)のマスタング・マッハE GTのチューニングで忙しいようだ。そのプロジェクトが一段落したら、会議でレンジャー・ラプターの可能性についても議論を交わして欲しいと思う。
新しいフォーカス RSは、英国ではCO2排出量対策のため商用車として登録される。フォードは小さくない315g/kmを相殺するため、何台ものBEVを販売する必要性はなくなる。しかし最大積載量が652kgと小さく、ユーザーは税制上のメリットを得にくい。
レンジャー・ラプターなら、そのまま商用車としても活躍できる。ドライバーズカーの素地として疑わしく思われるかもしれないが、秘めた実力は間違いなく高い。充分な余地はあると考える。
使われなくなった採石場など、適切な環境へアクセスすることは簡単ではないかもしれない。それでも、サーキットへ向かうのとハードルは同程度だろう。筆者でも条件は変わらない。
実際に働くクルマとしても活躍できるレンジャー・ラプターなら、趣味と実益を両立できる。多少高い価格も、元を取れるのではないだろうか。ドライバーを選ぶモデルではあるが、その能力は偽りなく素晴らしい。
フォード・レンジャー・ラプター(英国仕様)のスペック
英国価格:5万8900ポンド(約948万円)
全長:5381mm
全幅:2028mm
全高:1922mm
最高速度:178km/h
0-100km/h加速:7.9秒
燃費:7.2km/L
CO2排出量:315g/km
車両重量:2454kg
パワートレイン:V型6気筒2956ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:292ps/5500rpm
最大トルク:49.9kg-m/2300rpm
ギアボックス:10速オートマティック
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