■コンセプトカーを忠実に再現したクールなデザインの新型「レヴォーグ」
1989年にスバル初代「レガシィ」が誕生してから25周年となる2014年に、「25年目のフルモデルチェンジ」をキーワードに初代「レヴォーグ」が登場しました。
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北米に主軸を置くようになったレガシィに代わる日本ジャストサイズのスポーツツアラーとして、4代目レガシィ(BP型)並みの扱いやすいボディサイズや2種類のターボエンジン、「WRX」譲りのフットワーク、アイサイト・ツーリングアシストなども相まって、モデル末期となった現在も高い評価と人気を博しています。
スバルの日本市場を支える重要なモデルであるレヴォーグが2代目へとフルモデルチェンジするにあたり、東京モーターショー2019でプロトタイプモデルが世界初公開されました。
開発の陣頭指揮を取るPGM(プロジェクト・ゼネラル・マネージャー)は、初代レヴォーグの生みの親である熊谷泰典氏からバトンを受け継いだ五島賢氏です。
新型レヴォーグについて、五島氏は次のように説明します。
「今回は世界初公開となりますが、『何とかお客さまにご覧いただける所まで来たな』というのが正直な感想です。
スバルが持てる技術をすべて盛り込んだので、ここから2020年後半の発売に向け、総力を挙げて作り込みをおこなっていく予定です」
新型レヴォーグの外観は、アグレッシブなフロントセクションやスバルのターボ車の特徴であるボンネットエアスクープ、フェンダー形状とリア周りのブリスター形状が特徴のサイド、そしてリア周りはスバル車にしては角度が寝かされたスポーティで伸びやかなデザインとなっており、現行モデルよりもクールで艶やかさが増しています。
2019年3月におこなわれたジュネーブショー2019で世界初公開されたコンセプトカー「ヴィジヴ・ツアラー・コンセプト」のイメージを、上手に量産モデルに落とし込んだデザインです。
これまでスバル車の多くは、コンセプトモデルから量産車になるとガッカリするケースが多く、「コンセプトカー詐欺」といわれることもありましたが、新型レヴォーグはコンセプトモデルをかなり忠実に再現していると感じました。
現行モデルよりも攻めたデザインに仕上がっている一方で、少々気になるのはボディサイズと視界性能です。
「今回、諸元は公開していませんが、いまの時代の『日本ジャスト』を目指しました。極端に大きくしたらレヴォーグの存在意義がなくなってしまうので。
また、視界性能はスバルのDNAのひとつで絶対譲れない部分です。デザインと設計の腕の見せ所で、すべての部分で現行モデルと同じ性能を持たせていますので、ご安心ください」(五島氏)
今回は外観のみのお披露目で内装は未公開ですが、新型レヴォーグでは新開発の高精度マップ&ロケーターを組み合わせると発表されていることから予想すると、内装は、2019年4月にニューヨークショーで世界初公開された7代目「レガシィ/アウトバック(日本では未発表)」の縦型ディスプレイのインパネセンターをベースに、外観に見合ったスポーティなイメージに仕上がっていると思われます。
居住性は外観からもわかるように、現行モデルよりもホイールベースが伸びているのが明らかで、リアシート周りのスペースは向上しているはずです。
■動力性能と低燃費を両立する新開発の1.8リッター直噴ターボエンジン
スバルは、2021年までに世界生産の約8割をダウンサイジングターボにすると発表していますが、新型レヴォーグのパワートレインは、北米向け3列シートSUVの「アセント」に搭載される2.4リッター直噴ターボに続くダウンサイジング第2弾となる1.8リッター直噴ターボを搭載します。
性格的には現行の1.6リッター直噴ターボの後継ですが、いままでのエンジンとは関連性のない新開発のユニットで、動力性能と燃費を高次元でバランスさせるために、リーンバーン(希薄燃焼)をはじめとするさまざまな技術が投入されているそうです。
トランスミッションについてはリニアトロニックを継続採用するようですが、新エンジンに合わせて大きく改良。AWDシステムも詳細は明らかになっていませんが、新たに面白い仕掛けを仕込んでいるそうです。
現行モデルには300馬力/400Nmを誇る2リッター直噴ターボエンジンもありますが、この後継ユニットについて、五島氏は次のようにコメントしています。
「将来のことはいえませんが、ひとつだけいえるのは『スバルのスポーツモデルにはターボは外せない』ということです」
プラットフォームは「SIシャシー」に別れを告げ、「インプレッサ」から採用されている「SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)」になりますが、新型レガシィから採用のフルインナーフレーム構造となる「進化版」になります。
フルインナーフレーム構造を採用することで、リアの大きな開口部で、剛性的に不利なワゴンボディながらボディ剛性を更に向上。土台がシッカリしたことでサスペンションのチューニングもしやすくなり、操安性と乗り心地のバランスは現行モデルよりも各段に良くなっているそうです。
「実際に乗ると、『スポーツ』の領域を超え、『パフォーマンス』の領域のレベルに来ています。この辺りは低重心、低い車高という基本素性の良さも活きており、SUVとは違うレヴォーグ独自の走りを構築できたと自負しています」(五島氏)
注目の安全支援システムは「新世代アイサイト」へと進化しています。現行モデルよりも広角化された新型のステレオカメラ(車内からガラス貼り付けタイプに変更)に加えて、前後合わせて4つレーダーを用いたセンサーフュージョン式を採用。
360度センシングよる見通しの悪い交差点での出合いがしらや右左折時までプリクラッシュブレーキの作動範囲が拡大されています。
さらに、新開発の高精度マップ&ロケーターを組み合わせることで道路形状をクルマがリアルタイムで把握し、高速道路でのカーブ前減速や渋滞時のハンズオフといった高度運転支援も可能になっています。
さらにスバルがもっとも遅れていた分野である「繋がる技術」に関しても抜かりはなく、万が一の大きな事故ではクルマから自動で警察や消防へ通報や緊急時にボタンひとつでコールセンターに繋がるコネクテッドサービスをスバルとして国内初採用しました。
今回の進化を見ていくと、現行モデルのレヴォーグが初代レガシィから数えて「25年目のフルモデルチェンジ」としたのに対し、新型レヴォーグは「30年目の全面刷新」と呼んでもいいのかもしれません。
「新型レヴォーグは、スバルが提唱し続けるグランドツーリング(GT)思想である、『より遠くまで、より早く、より快適に、より安全に』を継承するのはもちろん、先進安全や1.8リッター直噴ターボ、進化したSGPなどにより革新させています。
今回お披露目した内容は、全体の3割程度です。新型レヴォーグには、まだ多くのことを仕込んでいますので、それは追ってお知らせしたいと思っています」(五島氏)
※ ※ ※
新型レヴォーグは、2020年後半に発売されるとアナウンスされましたが、このタイミングで世界初公開された理由について、五島氏はこのように説明します。
「スバルが現在持つ技術の全てを盛り込んだので、造り込みは総力を挙げて慎重におこなっています。さまざまなシステムは試験車で確認しているものの、スバルの強みはリアルワールドでの走り込みによる『信頼性』と『人間の感覚』を大事にしています。最後はこのクルマでテストをおこなう必要があるので、今回はお披露目したことでやりやすくなるかもしれません」
これまで世代交代のタイミングもあり、他社に対して、コネクティッド領域でやや乗り遅れていた感があったスバルですが、筆者(山本シンヤ)は新型レヴォーグの登場により「新世代スバル」の方向性が明確になったような気がしました。それを実感するためにも、早くステアリングを握ってみたいです。
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