最近の日本車メーカーの最新技術、発想に感心することが多い。しかもあっと驚くほどのこだわりがある。そんな技術たちをご紹介! ※こだわり度……100は平均点、150は「タマげるほどの驚き」、200は「もう参りました」と尊敬するほどのこだわり度を示す(本稿は「ベストカー」2013年9月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:編集部
MT、塗装、ステアリング、エンジン、GT-R…… もの作り王国日本・日本車のこだわり15選(2013年版)【10年前の再録記事プレイバック】
【画像ギャラリー】MT、塗装、ステアリング、エンジン、GT-R…… もの作り王国日本・日本車のこだわり(2013年版)(13枚)
■MTが売れている陰にはこんなこだわりが!
シンクロも強力なので入りもよく、操作も楽な上に燃費までいいのだから、想定外に売れるのも当然か
MTのシフトフィールは、シフトレバーの長さやストロークが短ければ「カチカチ」としたスポーティなものとなる半面、操作性が重くなるという矛盾する面を持つ。
アテンザのディーゼルに設定されたMTは、シフトストロークを従来より5mm! 短縮しながら、構造の最適化により軽い操作感を両立。
この「5mm」が効き、シフトフィールも最初は適度な重さがあり、その後「スコン」と軽く入るフィーリングを実現している。
さらに、シフトレバーの長さも50mm短くし、シフトノブの倒れ角を大きくしたことで、シフトポジションを認知もしやすくしている点も見逃せない。そもそもアテンザのディーゼルMT自体がこだわりまくりのグレードだ!
ちなみにディーゼルの約1割がMTなんだとか!!
●こだわり度=120
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■日本の技術力の高さは塗装にも表われている
ここまで丁寧に塗装されているクルマは稀だ。バンパーも色の精度を高めるため、1台に3本用意されるという
日産のフラッグシップセダンとして栃木工場で生産されるシーマは、各部の高いクォリティを日本の技術力の高さとしてアピールしているが、なかでも塗装へのこだわりは凄い。
塗装自体が一般的なクルマの1.5倍近い厚さなのに加え、中塗りが終わった後の磨き工程は熟練した職人がなんとミクロン単位の手作業で行ない、時間も1時間ほどかかるという。
日産でシーマの磨き工程ができる職人は4人しかいないので、この4人が集団インフルエンザにでもなったら大変だ。もの作りの資本が人であるのを痛感する技術だ。
●こだわり度=120
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■珠玉のスポーツエンジンとエコSCは紙一重?
4気筒から3気筒にしたことでも各部のフリクションは大幅に減少している。日本最先端の小排気量過給エンジンだ
直噴+スーパーチャージャーであるのに加え、実際に吸入した空気より少ない空気を燃焼させるミラーサイクルの採用による、ガソリンエンジンの大きな抵抗であるポンピングロスの低減などにより、高い動力性能と低燃費を両立しているノートのスーパーチャージャー。
このHR12DDR型エンジン(98ps/14.5kgmでJC08モード燃費=25.2km/L)は発熱によるエネルギー損失を抑えるため、ピストン自体からもオイルを噴射してシリンダー内の冷却性能を高めるピストンクーリングチャンネルや、排気バルブを過熱しにくいナトリウム封入型とすることで、燃料噴射による冷却を促進するといった技術も採用している。
これらの技術は第二世代のスカイラインGT-Rに搭載されたRB26DETTにも使われたもので、燃費向上にも究極の技術が使われているのだ。
●こだわり度=110
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■GT-Rのセッティングは市販車の領域を超越!
クルマの左右の重量バランス(特にフロント)は、1人乗車だとドライバーが乗る位置が左右のどちらかになることや、構造的な問題などもあり、左右で差があることがほとんどだ。
それは各部の精度が桁違いに高いGT-Rでも例外ではなく、「それならば」ということで、GT-Rは2012年モデルから左右非対称のサスペンションセッティングを採用している。
具体的には左フロントのスプリングを右フロントよりハードにするなどの手が施され、走行中のコーナーウエイトを均等化している。
体感するのはなかなか難しいといわれているが、ここまでこだわった水野さんにはアッパレだ。
●こだわり度=180
■GT-Rの押しやすさは台車並み?
写真は初期モデルである2007モデルを水野元開発責任者が自ら押している姿。クルマが温まっていないと少し重いようだ
車重が1.7トン以上あるうえに、リアタイヤは285幅という極太なのにも関わらず、GT-Rの転がり抵抗はクルマが温まっていれば、片手で押せるほど小さい。
要因はタイヤの縦方向の接地面積が非常に小さいためだという。転がり抵抗の少なさは公表されるJC08モード燃費を含めた、GT-Rの意外な燃費のよさに直結している。
●こだわり度=150
【画像ギャラリー】MT、塗装、ステアリング、エンジン、GT-R…… もの作り王国日本・日本車のこだわり(2013年版)(13枚)
■手触り抜群のアルカンターラステアリング
上部のセンターにはハンドルの位置やカウンター量を把握するのに便利なマーキングも施される
競技車両によく使われる、表面がバックスキンやスエードで巻かれたステアリングはカッコいいし、滑りにくいため憧れる人も多い。
しかし、使い込んでいくうちに劣化が目立ち、最後はツルツルになってしまうという弱点もあり、市販車に使うことは非常に難しかった。
しかし、ジュークニスモのステアリングは革とアルカンターラのコンビを採用。これはこだわり以外の何物でもないだろう。市販車に使っているだけに、耐久性は保証つきなのだ!!
●こだわり度=140
【画像ギャラリー】MT、塗装、ステアリング、エンジン、GT-R…… もの作り王国日本・日本車のこだわり(2013年版)(13枚)
■MTの回転合わせはもう過去のドラテク?
シンクロレブコントロールは、疲労を少なくしたいモータースポーツベース車への搭載も期待したい
AT全盛の現在、ヒール&トゥーを含めたMTのシフトダウン時の回転合わせは高度な運転技術となりつつある。
「MT車に乗る敷居を低くしてあげたい」と考えた日産は回転合わせを自動でやってくれるシンクロレブコントロールを開発。
システム自体は意外に簡単で、大雑把に言えばシフトダウンされるギアとスピードに合わせて適切な回転数に電子スロットルで空吹かしをするだけ。
「シフトダウンの楽しさがなくなる」という意見もあるが、オフスイッチもあるし、シフトダウン練習マシンとしての意義も大きい。
わざとイジワルなシフト操作をしてみたのだが、それでも迷うことなくちゃんとシフトダウンに合わせて回転を合わせてくれるカシコイヤツなのだ。
●こだわり度=140
【画像ギャラリー】MT、塗装、ステアリング、エンジン、GT-R…… もの作り王国日本・日本車のこだわり(2013年版)(13枚)
■後方視界の確保に大きく貢献!
このタイプのルームミラーは機能性に加え、見た目も美しい。機能美とはこのことだ!
リアスポイラーが付くことが多いうえにリアウィンドウの面積が小さいスポーツカーは、後方視界が悪くなりがちだ。このことは安全面や、怪しいクルマの認識といった面からも好ましくない。
そこで86&BRZの上級グレードは後方視界を少しでも広くするために、黒い縁をなくしミラー部分全体がミラーの役割をするルームミラーを採用。
位置を調整する時にミラー面へ指紋が付きやすいというデメリットはあるが、「無意味な気遣いを少しでも減らして、スポーツカーを広めたい」という心意気には拍手を送りたい。なお、このタイプのルームミラーはボルボV40も採用している。
●こだわり度=120
■いい音を聞かせる手法もいまどきは大変だ
サウンドクリエーターがなかったら86のエンジン音はどんなものになるのだろう?
スポーツ系のクルマにとって、性能に関係なくてもサウンドは気分を盛り上げるための重要な要素だ。しかし、音量規制は年々厳しくなっており、マフラーから出る排気音でドライバーを楽しませることは非常に難しくなっている。
86&BRZは「排気音がダメなら吸気音でいい音、楽しい音を出そう」という狙いで、マレーのサウンドクリエーターを採用。結果、空吹かしでの「いかにもエンジンが空気を吸っている」という吸気音や、中高回転域でのクオーンという気持ちいいエンジン音を聴かせることに成功。
このシステムはアフターパーツを使って音を調整もできるほか、似たシステムはロードスターやFR系のレクサスのエンジン車にも採用されている。
●こだわり度=120
■スーパーカーはキーにも「世界」が必要!
スーパーカーのキーは最近主流になりつつあるカードキーではなく、普通のキーなのが相場だ。
過去に見たフェラーリ348のキーはフェラーリのマークが入っているだけの非常に安っぽいものだったが、「これがフェラーリの世界なのかな」と感じたものだ。
レクサスLFAの場合も普通の形のキーに別体でキーレスのリモコンがあるという古めのものだが、キーはカーボン製! 価格は40万円とも60万円ともいわれている。
エンジン始動もキーをイグニッションに差して、ステアリングスポークにあるスタートボタンを押すという、LFAだけのこだわりあるものとなっている。
●こだわり度=90
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■四輪操舵の進化でハンドリングの常識も変わる?
低ミュー路でもビックリするようなスタビリティを発揮してくれるP-AWS。こいつは凄いゾ!
旋回力を自ら生み出す独創のリア・トルク自在制御。雪道に代表される滑りやすい路面だとP-AWSの効果はより大きいという。コーナリングスピードの向上も期待できそうだ
1987年に3代目プレリュードで四輪操舵を市販化し、しばらくは進化させていたものの、とうの昔に四輪操舵をお蔵入りにしてしまったホンダだったが、次期レジェンドで四輪操舵を復活させる!
プレシジョン・オールホイールステア(P-AWS)と呼ばれる新しい四輪操舵は通常の四輪操舵機能に加え、左右の後輪のトー(タイヤを上から見た角度、ハの字になっていればトーイン、その逆ならトーアウト)を独立してコントロールできる電動伸縮アームも備える。
簡単に言ってしまえば、オンザレールの軽快なハンドリングと高いスタビリティを両立するうえに、ハンドリングを決める際の最後の重要な味付けであるトーも変化できることで、セッティング幅も広がるという夢のようなシステムだ。
トーを変化できるだけに、もしかしたらスピード域によってトーも変え、トーでも燃費重視やスタビリティ重視といったセッティングができるのかもしれない。沈黙が長かっただけにこだわり方も猛烈だ!
●こだわり度=100
【画像ギャラリー】MT、塗装、ステアリング、エンジン、GT-R…… もの作り王国日本・日本車のこだわり(2013年版)(13枚)
■レクサスはエンジンへのこだわりも桁違い
登場から時間はたっているが、いまだに世界トップクラスであるLSのV8エンジン
日本車のフラッグシップの1台であるレクサスLSのV8エンジンは、手組みでこそないものの、高い精度を得るため猛烈なこだわりを持ちながら丹精込めて生産されている。
その一例として挙げられるのがクランクシャフトやカムシャフトの鏡面仕上げだ。これは完全な回転バランス(≒スムースさ)を実現するためのもので、高度な生産技術を駆使しミクロン単位の精度で磨かれる。
さらに生産工程の最終段階では、専門の職人が「異音が出ていないか?」を聴診器! を当てて確認するという念の入れよう。もちろん自分のものにできる人はかぎられるが、これだけこだわったエンジンを味わえる人は幸せ者だ。
●こだわり度=150
【画像ギャラリー】MT、塗装、ステアリング、エンジン、GT-R…… もの作り王国日本・日本車のこだわり(2013年版)(13枚)
■CVTが2ペダルスポーツの主役に躍り出る?
CVTは一番トルクの厚い回転域を常にキープできるので、速さという面でもポテンシャルは高い
動力伝達に金属ベルトを使うCVTは、高トルクを発生するエンジンとは組み合わせられないとされてきた。
その常識は日産がCVTと3.5L V6を組み合わせたことで覆したが、それでも最大トルクが40kgmを超えるエンジンに組み合わされるCVTは世になかった。
しかし、「今後の我が社の2ペダルミッションはCVT」と決めたスバルは、動力伝達に対応トルクの大きいチェーンを使うCVTを開発。チェーンの音対策なども苦心しながら、対応トルクも高め、ついに40.8kgmの最大トルクを持つレガシィの2L直噴ターボに搭載できるまでに熟成させた。
このCVTは次期WRX STIにも搭載される見込みだ。
●こだわり度=130
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■矛盾するクルマの動きを技術で見事に解決!
ステアリングギア比を変えるだけでも大英断! WRカーの雰囲気を味わえる市販車はこれだけだ!
手首の動きだけでタイヤが切れ、シャープに動いてくれるカートのハンドリングはとても楽しい。
しかし、市販車をカートのようなクイックなハンドリングとすると、向きが変わり過ぎて危険(特に高速域)といった副作用も出てしまう。
現行WRX STIの最終仕様となるtS タイプRAの開発陣はWRカー並みとなる11:1というステアリングギア比(クィックにタイヤが切れる)の採用を決断。
これだけでも凄いこだわりだが、前述した副作用を出さないため、リアのスタビリティを高めるなどの対応も行ない、全スピード域でWRカーのような楽しいハンドリングを実現した。瞬時の完売にも納得だ。
●こだわり度=110
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■伏兵的な驚きを与えるスズキ
ポート噴射のインジェクターを2本使うという手法は、ジュークの1.5Lも採用している
軽自動車で次々と燃費向上技術を市販化するスズキは、小型車でも7月に行なったスイフトの一部改良で、なんの前触れもなく二本のポート噴射用インジェクターを持つデュアルジェットエンジンを搭載してきた。
2本のインジェクターの役割は主に圧縮比を上げながらノッキングを抑えることで熱効率を向上させること。同時に減速エネルギーを無駄なく電力に変えるエネチャージとエアコンの補助をするエコクールも搭載し、JC08モード燃費はクラストップの26.4km/Lをマーク。スズキの燃費へのこだわりは凄い!
●こだわり度=130
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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