マツダが新たな道を歩み出すひとつのキッカケとなった1台
原点回帰した5ナンバー正統派セダン
キミは知っているか? バブル景気崩壊後のマツダを支えた“ショーケンカペラ”を【ManiaxCars】
CGカペラが出た時、「なんかつかみどころのないセダンだな…」と思った記憶がある。それまでのマツダ車には、販売実績はともかくデザイン面で攻めの姿勢が見られたから、オーソドックスな3ボックスセダンに対して、そんな印象を抱いたのかもしれない。
不思議なもんでデビュー当時は気にも止まらなかったのに、20数年が経ってから間近に接してみると、変態グルマ好きであることを差し引いて考えても…これがなかなかイイ! カペラの「これがセダンです」と言わんばかりのスタイリングが妙に落ち着くのだ。それでいて、絶妙な逆スラントを見せるフロントマスクが内に宿した意志を静かに物語ってるようで、決してデザインに無頓着なわけじゃない。むしろ、巧みな計算の上に成り立っているのでは? と思ってしまうほどだ。
エンジンは1.8L直4のFP-DE型(115ps/16.0kgm)と、そのロングストローク版となる2.0LのFS-DE型(125ps/17.6kgm)の2機種。FS-DE型は、クロノスやユーノス500に搭載されていたエンジンをリファインしたもの。日本の交通事情を踏まえ、常用速度域で多用する低中回転域におけるトルク特性の改善に重きが置かれている。取材車両のZiは2.0LのFFモデルで4速ATが組み合わされる。
動力性能面での不満はないけど、K型V6のようなスムーズさや爽快さは期待できず、実用性を最優先してる感じが強い。ただそれも、マツダがもう一度セダンのあり方を真剣に考えて導き出した結論に違いない。
内装に目を移すとダッシュボードは、なだらかな面と線で構成された2段風のデザインを採用。良好な前方視界を確保し、開放感も演出している。メーターパネルはクロノスからのキャリーオーバー。搭載エンジンの違いによってタコメーターのレッドゾーンが6500rpmからになっているけど、各メーターやATポジションインジケーターの配列は共通だ。
また、ホールド性よりも座り心地を重視したように思えるデザインの前席は、腰部をしっかりとサポート。腰への負担を軽減し、長時間の運転でもリラックスできる。
後席は前後方向、天地方向ともに身長180cmのひとが2人、ゆったりと乗れるだけの居住空間を確保。背もたれは6:4分割可倒式でトランクスルー機能も備わる。
カペラの名前が復活するとともに、ボディサイズもクロノス時代の3ナンバーから5ナンバーへと原点回帰。同時に4ドアセダンとしてのパッケージングが突き詰められた。その証のひとつがフルセットのゴルフバッグを4つ積んでもまだ余裕があるほどの容量を誇るラゲッジルーム。さらに、凹凸を抑えたスクエアな形状によって隅々までムダなく荷物を積めるなど、実用的かつ機能的な設計とされる。
試乗して思ったのは、まずフットワークのよさだ。リヤに採用されたストラット式サスペンションのロワアームは、シャシー側のピボット位置がほぼ車体中央に設けることで最大限のアーム長を確保。しなやかなサスペンションストロークと後輪の優れた接地性を実現している。ベーシックなセダンなのに、ちゃんと走りのことを考えて設計しているのがいかにもマツダらしい。
カペラのカタログを開くと、1ページ目に「正統派セダンを作りあげることは、あなたの幸せな毎日を思い描くこと」というフレーズが見つかる。バブル期のハジけっぷりからすると手のひらを返したような優等生発言に思えるけど、そこからマツダが新たな道を歩み出したのは事実。90年代半ばの軌道修正が今のマツダの好調へと繋がっているのは間違いないわけで、だとすれば、CGカペラはもっと評価されてしかるべき1台だと思うのだ。
■SPECIFICATIONS
車両型式:CG2SP
全長×全幅×全高:4595×1695×1395mm
ホイールベース:2610mm
トレッド(F/R):1460/1480mm
車両重量:1170kg
エンジン型式:FS-DE
エンジン形式:直4DOHC
ボア×ストローク:φ83.0×92.0mm
排気量:1991cc 圧縮比:9.0:1
最高出力:125ps/5500rpm
最大トルク:17.6kgm/4500rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式(F/R):ストラット/ストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR195/60R15
TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
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