電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』(以下、MotoE)は、電動バイクによって争われるチャンピオンシップです。2023年シーズンからはドゥカティがMotoEにマシンを供給するメーカーとなり、全18人のライダーが専用に開発された電動レーサー「V21L」で争います。2023年シーズンのMotoEはMotoGPのヨーロッパ開催グランプリに併催で1大会2レース開催、全8戦16レースというスケジュール。カタルーニャ大会を迎え、シーズンも残り2戦となりました。
シーズン終盤のMotoEカタルーニャ大会は、波乱の展開となりました。ジョルディ・トーレス選手のチャンピオンシップランキングトップ陥落です。
ドゥカティの電動レーサー「V21L」の正体とは!? 従来モデルから22kgの軽量化を実現
昨シーズンまで使われていた「エネルジカ・モーター・カンパニー」のMotoEマシン「エゴ・コルサ」で争われていた2020年、2021年にチャンピオンを獲得したトーレス選手は、MotoEマシンがドゥカティ「V21L」にスイッチした今季も変わらぬ安定感でチャンピオンシップをリードしていたライダーなのです。
金曜日夕方の予選でポールポジションを獲得したトーレス選手は、土曜日、各7周のレースに臨みました。レース1ではマッテア・カサデイ選手と激しいトップ争いを展開。トーレス選手とカサデイ選手は1コーナーのブレーキングで、映像越しでさえ聞こえてくる甲高い音を響かせながら225kgの車体を減速させ、何度もトップを入れ替えました。
ちなみに、電動レースでは心身に響くエキゾースト・ノートがない代わりに、ブレーキングの激しさを思わせるスキール音を聞くことができます。
迎えた最終ラップ、やはり1コーナーのブレーキングで2番手を走っていたトーレス選手がカサデイ選手をパスしようとして、両者が軽く接触。トーレス選手はバランスを崩してオーバーランを喫し、これが大きな痛手となって7位でゴールとなりました。
レース2でもトーレス選手は混戦のトップ争いを展開していましたが、トップを走っていた終盤の6周目に転倒。グラベルのなかで必死にマシンを起こし再スタートを試みるも、結局リタイアとなりました。
このレースで優勝したのは、2レースでトーレス選手とトップ争いを演じたカサデイ選手でした。
カサデイ選手はパルクフェルメのインタビューで「すごく、すごく嬉しい。ジョルディが残念ながらクラッシュしたあと、“3位でもいいけど、優勝のほうがもっといい”と考えた。だから優勝しようと頑張ったんだ。1コーナーでいいオーバーテイクができた。そのあとは最後まで攻めたよ」と、笑みを浮かべていました。
この結果により、トーレス選手はチャンピオンシップの首位から陥落。ランキング2番手となりました。代わってトップに躍り出たのはカサデイ選手です。
2人の差は21ポイント。さらに、今大会は表彰台を逃したランキング3番手のマッテオ・フェラーリ選手もトップから22ポイント差につけています。最終戦の2レースで獲得できる最大ポイント数は50ポイント(※1レースにつき、優勝したライダーに25ポイントが付与される)のため、現実的には最終戦で、この3人がチャンピオンを争うことになるでしょう。
MotoE最終戦サンマリノ大会は、MotoGP第12戦サンマリノGPに併催で、9月8日、9日にイタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行なわれます。5年目のシーズンを迎えたMotoEの、2023年チャンピオンが決まる2レースとなります。
■FIM Enel MotoE World Championshipとは…… 2019年にスタートした電動バイクによるチャンピオンシップ。2019年から2022年まではWorld Cup(ワールドカップ)として開催されていたが、2023年よりWorld Championship(世界選手権)となった。MotoGPのヨーロッパ開催グランプリのうち数戦に併催され、2023年シーズンは土曜日に各2レース開催で全8戦16レースが予定されている。バイクはドゥカティ「V21L」のワンメイクで、タイヤはミシュラン。9チーム18名のライダーが参戦し、日本人ライダーとしては大久保光選手がエントリーしている。
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