強力なエンジンとモーターを組み合わせたPHEVへ進化
2023年にデビューしたスーパースポーツの「レヴエルト」に続いて、ランボルギーニは最量販車種であるスーパーSUV「ウルス」をPHEV(プラグインハイブリッド車)へと進化させた、その名も「ウルスSE」を新たに登場させました。
【画像】「えっ!…」これがドリフト走行も楽しめるランボルギーニのスーパーSUV「ウルスSE」です(30枚以上)
“ふたつの心臓”を持つとアピールされるこの「ウルスSE」は、実は単なる車種追加ではありません。正しくは、内外装、シャシーなど広範な改良を受けた最新アップデート版「ウルス」の登場といえます。事実、現行「ウルス」のラインナップは、この「SE」のみとなりました。
その国際試乗会が開催されたのは、イタリア南部のレッチェ近郊。イタリアをブーツに見立てたならば、カカトより少し上の辺りの街となります。
近くの空港からクルマで2時間もかかるこの場所が会場に選ばれたのは、プログラムに一般道だけでなく、ナルドのテストコースでのオフロード試乗を入れたかったからだといいます。何を隠そう、現在はポルシェが所有するナルドこそ、「ウルス」の主たる開発拠点なのです。
まずは滞在先のホテルで初対面を果たした「ウルスSE」は、内外装にも想像以上に手が入れられて、まさにリフレッシュされた表情で迎えてくれました。
外装でまず目を惹くのが、ボンネットフードが切れ目なくノーズ先端まで伸ばされたフロントマスク。「レヴエルト」との共通点を感じさせるポイントです。
さらに、ヘッドライトには円弧を描く新しいDRL(デイタイム・ランニング・ライト)シグネチャーが採用されています。実はコレ、ランボルギーニのエンブレムにある闘牛の尾のイメージなのだそうです。
リアの印象も大きく変わりました。センターピークの部分に折れ線が入り、テールランプの下には、デザイン部門を率いるミティア・ボルケルト氏のお気に入りだという「ガヤルド」から引用されたメッシュが入れられています。
さらに、ライセンスプレートがより低い位置に移動し、ディフューザー付近も一新。重心をより低く見せています。
この外観から感じたのは、ランボルギーニのDNAをしっかりと継承しながらも、よりクリーンで洗練された印象を醸し出すようになったということでした。いい方を変えれば、威圧感、押し出しが少しだけ控えられた感じ。賛否はあるかもしれませんが、個人的にはとても好ましく感じられるところです。
インテリアも同様に刷新されています。
ランボルギーニならではのコックピット感覚、あえてカバーを開けてからプッシュするスタートスイッチなどはそのままに、ダッシュボードは水平基調が強められて、より軽快に。中央のエアベントはお馴染みのヘキサゴン形状とされています。さらに、HMI(ヒューマンマシンインタフェース)や画面表示は、「レヴエルト」にならった最新のものに改められました。
では、肝心のパワートレインはどんな構成になっているのでしょうか。
まず、“ひとつ目の心臓”となる内燃エンジンは、4リッターV型8気筒ツインターボが従来から踏襲されています。これ単体でも最高出力は620CV、最大トルクは800Nmに達します。
そして、“ふたつ目の心臓”が電気モーター。8速ATに内蔵されたこちらは最高出力192CV、最大トルク483Nmを発生します。
これらを合計したシステム最高出力は800CV、最大トルクは950Nmときわめて強力です。実際、車重は2.5トンまで増えているにも関わらず、0-100km/h加速は「ウルスS」をコンマ1秒ながらしのぐ3.4秒、最高速度はやはり7km/h上回る312km/hにまで到達します。
外部電源からの充電が可能なリチウムイオンバッテリーは、荷室フロア下に搭載されています。容量は25.9kWh。「EVモード」では、距離にして60km以上のモーター走行が可能で、最高速度は130km/hとされています。
つまり、自宅などに充電できる環境であれば、日常走行はほぼエンジンをかけることなくまかなえるのです。
なお、「ウルスSE」にはリチャージモードが用意されていて、エンジン出力によって最大80%まで充電することも可能です。充電環境がなくても、フルパフォーマンスを味わうことができるというわけですね。
スライドさせながら左右に振り返したときの一体感は格別
「ウルスSE」の試乗は、まず「EVモード」から。前述のとおりモーター出力に余裕があるので、日常使いでは全く不足を覚えることはありません。単に足りているというだけでなく、ちゃんと「ウルス」らしく力強く走ってくれます。
続いては「ハイブリッドモード」に。こちらでも発進は電気モーターによっておこなわれるため、内燃エンジンだけで走り出す以上の瞬発力を得られます。
そして、その先の加速もトルク感は一枚上手。エンジンと電気モーターが一体となって速度をグイグイと引き上げていきます。
レスポンスの鋭さも印象的で、アクセル操作に対するタイムラグは実質ゼロ。豪快なだけでなく、爽快に走ってくれます。街中でのストップ・アンド・ゴーの繰り返しでさえ、そのうま味を存分に味わうことができるのです。
一般道での走りをチェックした後は、テストコースでオフロード走行、ドリフト走行を試すことができました。「大柄なSUVで?」と思われるかもしれませんが、忘れてはいけません、「ウルス」は紛れもないランボルギーニだということを……。
実際、「ウルスSE」のこうした場面での操縦性はとても素直で、セオリーに則った操作で気持ちよくドリフトに持ち込めます。ボディの大きさ、重心の高さをネガティブに意識させることなく、電子制御の違和感も皆無。安心して攻められることにうならされました。
特に、オフロードでアクセルを全開にし、豪快にスライドさせながら左右に振り返したときの一体感は格別で、試乗の際にも思わず“おかわり”をお願いしてしまったほど。
「ウルスSE」でそういう楽しみ方をする人はごく一部に違いありませんが、それは300km/hを超える最高速度と同様の意味で、実際にそれが可能だということが重要なのです。
こうした走りのキモとなるのが、刷新された駆動系です。ハードウェア的には、センターデフを従来のトルセン式から電子制御多板クラッチ式に置き換え、リアに電子制御LSDを組み込んでいるのですが、正直、これだけならよくあるシステムで目新しさはありません。
一方、目を惹くのが、その制御には最新のフィードフォワードのロジックが採り入れられていることです。
チーフテクニカルオフィサーのルーベン・モール氏によれば、電子制御が出しゃばって人工的な動きになるのを嫌って、あえてこうした構成にしたとのこと。聞けば、従来から標準装備の後輪操舵機構も駐車時以外は0.1度までしか切っていないのだそうです。「それ以上は違和感につながるから」と。
実はプライベートで三菱「ランサー・エボリューション」や日産「GT-R」などを所有し、ドリフトも楽しむモール氏ならではのリアルなこだわりというわけです。
* * *
電動化の波を逆手に取って、まさしく“ふたつの心臓”をフル活用した新しい走りの世界を切り拓いた「ウルスSE」。他に代わるクルマが存在しない「ウルス」を、全域で見事に進化させたといっていいでしょう。
新しいユーザーはもちろん、案外、デビューから6年が経つだけに、「ウルス」にほれ込んでいる従来ユーザーの乗り換え需要も喚起しそうな仕上がりです。
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