フォーミュラEとの「ラブストーリー」
text:James Attwood(ジェームズ・アトウッド)
【画像】特別な憧れを抱かせる高級車ブランド【DSの各モデルを写真で見る】 全123枚
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
先日、DSオートモービルズがABBフォーミュラE選手権に少なくとも2026年末まで参加することを表明した際、同レースシリーズとの関係を「l’histoire d’amour」(ラブストーリー)と表現した。今のところ、これは確かに幸せな物語だ。
DSは、姉妹ブランドであるシトロエンから正式に独立してからわずか1年後の2014/15シーズンにフォーミュラEに参戦した。フォーミュラEは2年目で、メーカーが独自のパワートレインを開発することが初めて認められた。DSはヴァージン・レーシングとチームを組み、第4戦でサム・バードが初優勝を飾った。
それ以来、DSは毎シーズン1勝以上を挙げており、2018/19年に第2世代マシンが導入されてからはクリーンアップを行ってきた。このシーズン、DSは、ジャン=エリック・ベルニュを擁して前シーズンのドライバーズタイトルを獲得したテチーター(Techeetah)の供給に切り替えた。新たなパートナーシップは、チームタイトルとドライバーズタイトルのダブル受賞という形で即座に実を結び、ベルニュはチャンピオンシップを2度以上獲得した初のドライバーとなった。
DSテチーターは2019/20シーズンに再びダブルタイトルを獲得したが、今回はBMWから移籍した新加入のアントニオ・フェリックス・ダ・コスタがドライバーズタイトルを獲得した。
フォーミュラEへのDSの愛着は新たなレベルに達している。アウディやBMWなどのライバルが関係を断ち切り、モータースポーツへの愛を求めて別の場所を探している中で、DSは少なくともあと5年間はこのシリーズに身を置くつもりだ。
中国資本のテチーターがフォーミュラEに参入した2016/17年シーズンからレースに参戦しているベルニュは次のように語っている。
「DSが長期的に継続することは、チームにとって素晴らしいことだ。メカニックをはじめとするチームのみんなにとっても、スポンサーにとっても、安心できる安定性がある」
勝利の鍵は努力の積み重ね
DSは、アウディやBMWが見落としているような、フォーミュラEの魅力を感じているのだろうか?トロフィーをたくさん獲得すれば、メーカーはモータースポーツのマーケティング費用を正当化しやすくなる。メーカーはフォーミュラEを電動パワートレインの開発に役立てることができるが、はるかに重要なのはブランド構築である。
DSのような比較的新しいブランドは、ドイツの高級車ブランドに対抗するフランスのライバルとして地位を確立する段階にあるが、フォーミュラEはその知名度を大きく向上させる。また、DSは他のメーカーよりも積極的にロードカーとレースカーの連携を図ってきた。
「DSは過去数年間、最高のパワートレインを持っていることを明確に示してきた」とベルニュは言う。「このブランドは、単にチャンピオンシップに参加するためではなく、勝つために存在しているんだ」
ベルニュは、DSがフォーミュラEの頂点に上り詰める過程を目の当たりにしてきた。テチーターに参加する前の2015/16年、DSヴァージンのファーストシーズンにハンドルを握っていたのだ。フランス人ドライバーがルノー製エンジンを搭載したテチーターで2017/18年に初タイトルを獲得したとき、タイトル争いの主なライバルの1人は、DSヴァージンのフォーミュラEベテランドライバーであるサム・バードだった。
「秘訣はハードワークだ。モータースポーツで成功するための鍵だよ。それはチームのDNAでもある。勝つたびに、ファクトリーに戻って仕事を続けるだけさ。常に他のチームに追いつかれると考えているからこそ、決して休まないんだ」
驚くようなことではないかもしれないが、これは本質的に真実だ。フォーミュラEは、シャシーの仕様が決まっており、メーカーが独自にパワートレインを供給できる領域も限られ、また厳しく管理されている。そのため、1つのメーカーが他よりも大幅に性能を向上させるようなことにはならない。昨年は6つのチームがレースを制しているが、DSのタイトル獲得は、ペースの優位性よりも安定性に基づくものだ。
近年、メルセデス・ベンツやポルシェといったメーカーの登場が騒がれていることを考えると、DSが最近の成功に特別な喜びを感じていることは想像に難くない。「でも、僕らが過去にとらわれすぎるようなことはないよ」とベルニュ。「他チームが僕らを打ち負かそうと努力していることはわかっているから、ただ座って『見て、自分たちはなんてすごいんだろう』と言うようなことはしない」
チームメイトとの共闘と競争
昨シーズン、DSがダブルタイトルを獲得した一方で、ベルニュ自身は1勝しか挙げられず、ドライバーズポイントでは3位に留まっていた。
シーズン後半の6レースは、ベルリンのテンペルホーフ空港で8日間にわたって行われた。フェリックス・ダ・コスタは、最初の2レースで勝利してポイントを稼ぎ、その後は激しい集団レースでトラブルに巻き込まれないようにすることに専念した。
ベルニュはトラブルには遭わなかったが、自分とチームの双方がエンジニアリングデータをよりよく共有できるように取り組んできたことを示唆しつつ、「2年連続でタイトルを獲得しても、下がるしかない」と、今年を振り返っている。
そのことが、彼のモチベーション向上につながるのだろうか?
「同じことが二度と起こらないように努力するよ。勝つとは言えないけど、自分なりにできる限りの変化を起こしていきたいと思っている」
また、モータースポーツの歴史でよく見られるような、チーム内でのバトルもチャンピオン2人の間で繰り広げられる。フェリックス・ダ・コスタとの関係について尋ねると、ベルニュはチームメイトが昨年に成し遂げた「素晴らしい仕事」に賛辞を送った。
「去年のベストドライバーがチームメイトであるというのは素晴らしいことだ。このような競争心を持つことは、チームにとっても良いことだと思う。彼はタイトルを守ろうとするけど、僕も彼からタイトルを奪おうとする」
「昨年のパンデミックで、人生にはもっと大きなことがあると気づかされ、レースに出られたことをとても幸運に思えたんだ。彼との友情が変わるわけではないよ。コース上でお互いに敬意を払っていること、それがチームメイトに求めるすべてさ」
2人の関係をラブストーリーと言えるかどうかはわからないが、この2人が共闘し続ける限り、DSはフォーミュラEとのラブストーリーを続けられるはずだ。しかし、ベルニュは、DSの継続的な取り組みだけで、今年限りでフォーミュラEとの決別を発表したメーカーに対して優位に立てるとは考えていない。
「DSが長期的に取り組んでいることはチームにとって素晴らしいことだけど、他のメーカーは僕らを打ち負かそうとするだろうね。たとえDSがフォーミュラEから撤退するとしても、勝つためにあらゆる努力をするはずだ。今年も非常にタイトな戦いになるだろう」
今年は誰が強いのか?
DSテチーターは、2人のチャンピオンを擁する最強のチームとしてシーズンをスタートさせるが、今年はさらなる競争激化が予想される。
ストフェル・バンドーンは、メルセデス・ベンツ初のフルワークスキャンペーンで2位に入賞しており、経験を積んだため、より安定して上位で戦えるはずだ。また、かつてのチャンピオン、セバスチャン・ブエミを擁するニッサンe.Damsの存在も大きい。
サム・バードがヴァージンからジャガーに、パスカル・ウェーレインがポルシェに、ジェイク・デニスがBMWに移籍するなど、ドライバーの移動が相次いでいる。しかし、アウディやBMWは今年限りで撤退するため、2021/22年シーズンのシートを探しているドライバーも少なくない。
サーキットから公道へ
フォーミュラEに参戦したすべてのメーカーは、自社のレースカーとロードカー(市販車)との関連性を強調してきたが、DSはそれをさらに一歩進めて、フォーミュラEの技術を使った2つのコンセプトを発表した。
2018年、DSは「X Eテンス」を製作した。これは、オープントップのスリルとゆったりとした快適性を両立するために設計された、左右非対称のコンセプトカーだ。フォーミュラEの1360psのツインモーターを搭載するなど、多くの機構を投入している。
同年にAUTOCARが試乗した際、スピードバンプやフランスの狭い町中では少々苦労したが、公道でも直感的なドライビングを楽しむことができた。
DSは昨年、最高出力680psの「エアロスポーツ・ラウンジ」を発表したが、これもフォーミュラE由来のパワートレインを搭載していた。空力的に最適化されたスタイリングは、X Eテンスよりも現実世界に近いものとなっており、将来的にはこれをモデルとした量産型EVの登場が期待されているが、さすがにフォーミュラEのモーターは搭載されないだろう。
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