■2023年に相次いで登場したレクサスの新型4車種をいち早く「体験」!
2023年、レクサスは4つのニューモデル「LM」「LBX」「GX」「TX」を発表しましたが、これらの新型車は、現在レクサスが注力している電動化/知能化/多様化の3つの柱の中でも、特に「多様化」を表現したモデルだといいます。
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そんなレクサスのこれからを担うニューモデルを富士スピードウェイへ一堂に集め、体験を行なう「レクサスショーケース2023」に参加してきました。
1989年に登場した初代「LS」(日本ではトヨタ「セルシオ」として発売)で、世界の高級車の概念を変えたといわれるレクサス。
しかしその後の評価はというと、口の悪い人からは「レクサスは“デラックス”版トヨタ」という声も聞かれていました。
筆者(山本シンヤ)にも、思い当たる部分が無かったわけでありません。
初代LS以降登場したモデルは、見た目こそレクサスでしたが、走りの部分におけるトヨタとの違いについては、重箱の隅を突くレベルだったのも事実です。
しかしそんな状況も、2010年代になると変わり始めました。
レクサスの変化を象徴するのが、2017年に登場したフラッグシップクーペ「LC」でしょう。
このモデルは「純粋なコンセプトカーの量産化」というプロジェクトでしたが、当時のトヨタ/レクサスの技術とリソースでは「市販化は無理」と言う判断でした。
チーフエンジニアの佐藤 恒治氏(当時)が、豊田 章男社長(当時)に嘘いつわりなく伝えると、豊田氏は次のように話したといいます。
「今できないのは分かっている。それをできるようにするためにはどうすればいいのか。変えるしかないでしょ」
そこで佐藤氏は、プラットフォームを含む主要構成部品を新規開発し、見事に市販化にこぎつけました。
LC開発時の「限界を決めずに挑戦する」という精神が、LC以降のレクサスへ明確に宿るようになったのです。
以降のレクサスは新開発のTNGA技術を活用しながら、独自の「味」をより明確に表現できるようになりつつあります。
しかし一方で、ブランドとしての「軸」や「方向性」がモヤモヤして明確に見えこないところも、筆者には感じられました。
ほぼ同時期の2017年に展開がスタートしたトヨタのスポーツブランド「GR」の成長の速さが著しいこともあり、筆者は「レクサスの未来は本当に大丈夫なのか」と厳しい事もいってきました。
その後、2023年6月にトヨタの代表取締役社長に就任した佐藤 恒治氏ですが、それまでのポジションはレクサスインターナショナルとGR、各カンパニーのプレジデントでした。
社長就任後、筆者がレクサスの今後について聞くと、佐藤氏はこう答えてくれました。
「レクサスとGR、これらのブランドはより趣向性を強めていきます。
なかでもレクサスは、これまで(筆者から)『GRに対してレクサスは改革が遅いのでは』『目的がハッキリしない』と言われ続けてきたことも強く認識しています。
私がレクサスのプレジデントを務めていたときに行なっていたのは『ブランドの体幹を鍛える』でした。
とにかくいいクルマを造るため『当たり前』を徹底的にやることをレクサスのメンバーに叩き込みました。
そして、これからはフレーバーを乗せる段階というわけです。
料理で例えるならば、しっかり出汁(だし)が取れた状態で、いよいよ調味料を入れ、味付けをしていくタイミング。
ここから先は、新プレジデントの渡辺 剛氏が『レクサスらしさとは何か』を、もっともっと追求してくれるでしょう」
■既成概念を覆す新型「LM」と「小さな高級車」新型「LBX」に試乗
前述の通り、2023年に相次いで発表されたレクサスの新型車4モデルは、現在レクサスが注力している電動化/知能化/多様化の3つの柱の中でも、特に「多様化」を表現したといいます。
これらのモデルの走りはどうなのかについては、大いに気になるところです。
レクサスショーケース2023では、新型「LM」「LBX」「GX」「TX」にそれぞれ初めて試乗することができました。
どのモデルも試乗時間・場所が限定されていたため、今回はあくまでも「味見」レベルでしたが、その実力の高さは走らせて数百m、コーナーを2~3つ曲がるだけで実感することが可能でした。
そんなレクサスの新型4モデルの乗り味について、順を追って紹介していきましょう。
まずは、中国・上海モーターショー2023で発表されたショーファーカー(専任運転手がハンドルを握り、オーナーやゲストは後席に乗る高級車)の新型「LM」(2代目)です。
従来モデルは中国/アジア向けの地域専用車でしたが、新型LMは日本や欧州にも展開を行なうグローバルモデルとなります。
ショーファーカーの新たな選択肢として、高級ミニバンではなく「ラグジュアリームーバー」として開発したといいます。
初代は、レクサス版「アルファード/ヴェルファイア」のイメージが拭えませんでしたが、新型LMは、独自の内外装はもちろん、パワートレイン/シャシー周りも専用設計です。
今回のレクサスショーケース2023では、一般道を模したコースで新型LMを試乗しました。
動力性能は、2.5トン近い車両重量とは思えないような余裕を感じさせ、ハンドリングもミニバンである事を忘れる自然で素直なものでした。
新型LMの後席に乗ってみると、走行中は寝てしまいそうなくらい静寂な空間に驚かされます。
また、荒れた路面が平滑に舗装し直されたのでは、と錯覚するほど快適な乗り心地も味わえました。
このように新型LMは、従来の「高級車=セダン」という概念から脱却したゲームチェンジャーであることを実感した次第です。
続いて試したのは、イタリア・ミラノで発表されたコンパクトSUVの新型「LBX」です。
新型LBXは、これまで世界のプレミアムブランドが成功できなかった「小さな高級車」という概念に真っ向から挑戦したモデルです。
コンセプトに「クラスレスなコンパクト」を掲げ、今回の4台の中では最も独自性の高い内外装、電動化リッチなパワートレイン、サイズを感じさせない重厚な走りなど、高級車のヒエラルキーを崩す存在といえるでしょう。
こちらは、ショートサーキットコースでの試乗でした。
パワートレインは、日常域ではエンジンの存在を忘れさせ、アクセルを踏み込んでも3気筒らしからぬ滑らかさがあります。
直進安定性は、コンパクトらしからぬドッシリとしたもので、フットワークも軽快なのに重厚と摩訶不思議な感覚です。
そして、ひとクラス大きなクルマに乗っているような安心感や快適性があります。
このように、小さいクルマに乗っている事を忘れるくらい、新型LBXは「骨太」なモデルであることを実感できました。
■注目の新型SUV「GX」と日本未発売の3列SUV「TX」にも試乗!
続いて、アメリカ・テキサスで発表された新型高級SUV「GX」です。
GXとしては3代目ですが、日本市場には初導入となります。
新型GXの開発コンセプトは「レクサス“本格”オフローダーのど真ん中を作る」。
単なるモデルチェンジではなく、高級SUVのゲームチェンジャーとして開発されました。
エッジの効いたスクエアフォルム、機能的なインテリア、伝統のオフロード性能とレクサスファミリーとしてのオンロード性能を両立した走りなど、兄貴分の「LX」とは違った新たな個性・魅力を備えた1台です。
こちらはオフロードコースでの試乗です。
新型GXの3.5リッターV型6気筒ツインターボガソリンエンジンは、歩くようなスピードでもディーゼルのような粘り強さがあります。
フットワークは、極悪路でも頭のブレが少なく、ボディコントロールや乗り心地の良さを実感できます。
基本素性の良さと電子制御のコラボレーションにより、誰でも、楽に、安心して悪路を走破できる事を確認することができました。
開発者によれば、今回試せなかったオンロードでの性能にも自信があるとのことなので、こちらも期待大です。
そして最後は、GXと同じくアメリカ・テキサスで初公開された新型「TX」です。
新型TXは、近年ニーズが高まる3列シートSUVに直球勝負で挑むモデルです。
エレガントなエクステリア、大人がゆったり座れる3列目シートを含めた大容量空間、豊富なパワートレイン、「NX/RX」譲りのフットワークなど、ユーザーの「あったらいいね」が全て盛り込まれています。
ただ残念ながら北米専用モデルのため、日本へは導入されません。
新型TXは、ショートサーキットコースでの試乗です。
全長5170mm、全幅1990mmと非常に大柄なボディサイズで、なおかつオールシーズンタイヤを装着するとは思えないほど、フットワークは一体感と自在性が備えられています。
なかでも、2.4リッターターボとリアの高出力モーターを搭載したハイブリッドシステム「ダイレクト4」を搭載する「TX500h Fスポーツパフォーマンス」は「君はNX!?」と思うくらい、クルマが小さく、そして軽く感じました。
恐らく全レクサスラインナップの中で最も万能な1台といえるでしょう。
■新型4車種に共通して感じられた「走りの統一感」の源とは
このように今回試乗した4車種は、いずれも魅力あるモデルに仕上がっていました。
しかし筆者がそれ以上に感じたことは「走りの統一感」です。
新型4車種は、ボディサイズやパッケージはもちろん、パワートレインやレイアウト、サスペンション形式もバラバラですが、走らせているとどこか同じ感覚があるのです。
これは乗ってみればわかる感覚なのですが、コーナリング時の一連のクルマの動きがどのモデルも同じ「波長」で行なわれているのでしょう。
レクサスのブランドホルダーでもある豊田 章男氏は、レクサスを「素のままの自分に戻れる、本物を知る人が最後にたどり着くブランド」と語っています。
その考えと、今回の新型4モデルに乗った印象から得た最新レクサスの味とは「おいしい白飯とお味噌汁」だと筆者は解釈しました。
その心は、主役にも脇役にもなれる応用性、シンプルなのに味わい深く飽きがこない、そしてどこかホッとする「ニッポンの味」ということです。
それを踏まえると「ザ・ナチュラル」が、レクサスが目指している「味」だと考えています。
レクサスでは近年、チーフエンジニアのみならず各領域のリーダーたちが一堂に会して「味磨き」と言う活動を行なっています。
恐らく、従来はチーフエンジニアの個性がクルマに反映されがちで、「個々のモデルとしては良いけれど、ブランド全体としてみたときにはどうだろうか」という悩みもあったと推察されます。
しかし、この活動を通じてブランドに横串を刺すことで「目指す道を明確にする」といった考えになったと考えられます。
その結果、レクサスとして目指すべき「理想のクルマの動き」が生まれ、そこに個々のモデルの特性やボディサイズ、レイアウト、車両重量、パッケージなどを考慮した味付けが行なわれる、というわけです。
もちろん、これまでのレクサス車もそれぞれ同じ考えをもとに開発が進められていたと思いますが、基本の素性が似ていると比較的実現しやすかったのかもしれません。
しかし、今回はコンパクト、ミニバン、ボディオンフレーム、3列シートSUVと、基本の素性が多種多様でバラバラでした。
そんななかでレクサスを明確に表現するためには、「味磨き」の重要性はより高まり、それが今まで以上に色濃く反映されたのが今回の新型4車種というわけです。
では、レクサスの目指す「理想のクルマの動き」とは何なのでしょうか。
レクサスブランドの味つくりを担当するLEXUS TAKUMI(匠)の尾崎 修一氏は、次のように教えてくれました。
「やはり『すっきり』と『奥深い走り』を突き詰めた結果だと思います。
より具体的に話すと、すっきりとは『雑味を取り除き本質追求する』こと、奥深い走りとは『人に依らず、路面を選ばず、環境を問わない懐の深さ』です。
今は感覚的に『これがレクサスだよね』と共有できていますが、将来的は誰でもそれがわかるように、シッカリと数値化させる必要があると思っています」
※ ※ ※
2023年4月に行われた新体制発表会で佐藤社長は「2026年に投入予定の次世代電気自動車をレクサスで投入する」と公言しています。
このモデルは「電動化」と「知能化」を表現しており、様々な技術を含めて電気自動車のゲームチェンジャーとなり得る存在のようなので、こちらも楽しみです。
このようにレクサスは未来に向けて確実に変わり始めています。
そして、この挑戦はこれからも続きます。
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