プレミアム・ドイツ車イーターとして躍進を遂げたボルボ。そのフラッグシップSUVが中身をさらに熟成させた。ラグジュアリーでスポーティな特別仕様のR-デザインに試乗し、他とは違う、その魅力を探った。
今度のR-デザインは「白くてスポ―ティ」
早いもので、本国でのVC90の登場から5年半。ここ数年、プレミアム・ドイツ車イーターとして世界中で大躍進を遂げたボルボのトップレンジたる、そのXC90のマイナーチェンジ版が日本市場に登場した。V90からXC60、XC40に直近のS60まで、新世代ボルボへのイメージを牽引した旗艦モデルは、年次改良は着々と重ねてきたとはいえ、マイナーチェンジの内容は控え目。バンパーやフロントグリルも変わったとはいえかなり気づきにくい。前後の灯火類の形状もそのままで、あくまでキープコンセプトで内的熟成に終始してきた。
今回、試乗したのは、パワートレインはD5のAWDで、仕着せはR-デザイン。R-デザインのディーゼル自体は先だって導入されていたものの、これまで内装はブラックしか選べなかった。ところが今回は、R-デザイン専用スポーツシートでありながらドアを開けると光がこぼれてくるようなホワイトのインテリアで、アルミやカーボンのインサートパネルといった加飾と組み合わされている。プレミアムモデルのスポーティな仕着せというと定番は黒で、男の仕事場的コクピットを必要以上に攻撃的なディティールで演出するという、暑苦しさがお約束だった。ところが新しいXC90 R-デザインの「白くてスポ―ティ」な内装は、マイナスイオンでも出ていそうな癒しの吸引力があるというか、インスクリプションのベージュがかったヒュッゲ感全開の空間とは少し異なる、落ち着きがある。ダメージジーンズとかジャラジャラ・アクセ着用で乗り込もうものなら、(実際には保護コートされているのでそういうことにはならないらしいが)色移りまたは引っ掻き傷を気にすべし、と、そんな使用上の落ち着きや上品さを求めてくる。要は、オラオラ系やアオラー、お断りのオーラだ。
凛としたプレミアムSUV
なのに、480Nmもの最大トルクが醸し出す、ゼロ発進からモリモリ蹴っていく感覚は、ちょっと凄い。2リッターディーゼルなのに、車重も2.2トンもあるはずなのに、アイシンAWの繋ぎマナーがいいのか、マツダの2.2リッタースカイアクティブ-Dの470Nmより力強く感じる。ちなみにオプションで燃調制御を変えつつさらに走りのキレを引き出すという、ポールスター・パッケージを装着すると、トルクはじつに500Nmにまで増やせるとか。海外ドラマ「ヴァイキング・シーズン5」で観た、ハンマーを手に暴れる怪力マッチョ戦士を何となく思い出した。
それにしても、R-デザインは275/35R22、つまり9Jで35扁平の22インチもの大径ホイールを履いているのに、乗り心地にドタバタ感や角がないことに舌を巻いた。試乗車はエアサス装着仕様で、いくらデフォルトのドライブモードが「コンフォート」とはいえ、タイヤはボルボ専用コンフィギュレーションを与えられたピレリとはいえ、足回りが恐ろしくしなやかによく動いている。ワインディングでも適度にボディの動きを抑制して、下りでもユル過ぎて怖い、みたいなことがない。初期モデルのオーナーは、この乗り心地とライド感目当てに買い替えもアリと思えるほどだ。
モードを「ダイナミック」にすると、ステアリングの対舵角、対アクセルの踏み込み感度が増して、足回りも軽く締め上げられ、ロール量も減る。5m近い全長の巨体を忘れさせるほどまでに、手の内にすっと馴染みよく収まるようなハンドリングだ。静止状態でも後輪側に80NmがプリロードされているというAWDのレスポンスも申し分ない。生憎の雨だったが、アクセルを踏み込んだ時にも素早く安定して加速に移る。それでいて、長距離ではディーゼルの燃費と足の長さ、3列シートでマックス7人乗れる余裕、静かで開放的かつ落ち着く室内。それはもう何かと押しつけがましいテイストが増えすぎた、プレミアムセグメントの中でも凛としているというか、惚れてしまうワケだ。
いちばんのネックは、それぞれ1.9mオーバー、1.75mオーバーという幅と高さ、つまり外寸の巨大さによる街での取り回しだろう。とはいえこのクラスを求める人は、停め場所は元より気にしないだろう。安全装備面でも2020年モデルは、前方衝突回避ブレーキの作動時に停止し切れないと判断すると、ステアリング修正舵で衝突回避支援する機能が加わるなど、ちゃんとアップデートされている。それでいてディーゼルの今回の特別仕様車は959万円と、オプション充実でも1000万円を少々出るぐらいのレベル。
ちなみにXC90は日本においては、ボルボのラインナップ中でもいちばん若い世代の顧客がついているというから、他ブランドから見たら羨ましい限りだろう。メルセデスGクラス辺りとプロフィールは似ていても、真逆の嗜好・志向をもつ、そんなオーナー像が想像される1台といえる。
文・南陽一浩 写真・柳田由人 編集・iconic
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
1000馬力の“4.1L V6”搭載!? 新「R36GT-R」まもなく登場!? レトロなデザイン採用した「和製スーパーカー」 どんなクルマ?
クルマに出現する「光るカメ」は危険のサイン! 見慣れない「謎マーク」の意味は何? そのまま走り続けるのはNG!
ガソリンを捨てきれない理由は[ハイブリッド車]のバッテリー寿命!? 延命術はあるのか?
ホンダ「新型コンパクトミニバン」登場! 8年ぶり刷新でゴツい「アウトドア仕様」に上質“洗練スタイル”も用意! 「新型フリード」純正アクセ公開
26年ぶり復活に!? ホンダ「新型CR-X!?」が超カッコイイ! 現代風デザインまとった「ライトウェイトスポーツ」の予想CGがスゴイ
みんなのコメント
車内もかなり明るく清潔感あるし、気分も落ち着き無駄に飛ばす気が起こらない。
国際線のファーストクラスに印象が似ている。