現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「ガルウイング」は序の口? 「バタフライ」「顔面ドア」など不思議なドアをもつ衝撃のクルマたち

ここから本文です

「ガルウイング」は序の口? 「バタフライ」「顔面ドア」など不思議なドアをもつ衝撃のクルマたち

掲載 21
「ガルウイング」は序の口? 「バタフライ」「顔面ドア」など不思議なドアをもつ衝撃のクルマたち

ガルウイングから驚きの「顔面」開閉式まで! 個性的ドア車

 通常、クルマのドアは前方にヒンジがあり、後方から橫に開くタイプが一般的。だが、中にはちょっと変わった開き方をするドアを採用した市販車も存在する。スーパーパーカーなどに多いガルウイングドアがその代表格だが、ほかにも様々な個性的な開閉方式を採用し、実際に公道を走っていたクルマが意外とある。ここでは、そんなちょっと変わったドアを持つ異色の市販車たちを紹介しよう。

納屋に放置されていたランボルギーニ・ミウラ。予想を大きく上回る1億7396万円で落札!

ガルウイングの元祖は300SL

 スーパーカーなどに採用されることで有名なガルウイングドアだが、そもそもの元祖は1954年に発売されたメルセデス・ベンツの「300SL」。

 SLクラスの初代にあたり、世界初のガソリン直噴エンジンを搭載したこの2シーター・クーペには、車体の外側上方に向かって左右のドアが開く方式を採用。その開いた時のフォルムが、翼を広げて飛ぶカモメに似ていることから、「Gull Wing door(カモメの翼)」といった愛称が付けられたのだ。

ルーフにヒンジを付けた跳ね上げ式のこのタイプは、デザイン的にも画期的だったが、採用された理由は意外にも実用面だったという。

「公道版レーシングカー」として開発された300SLは、軽量化と高剛性を実現するために、まるでジャングルジムのように小径の鋼管を組み合わせたマルチチューブラーフレームを採用。その構造上、どうしてもサイドシル(ドアの下に位置する敷居部分)が高くなりすぎて、通常のドアでは乗り降りに相当の苦労を擁する。そこで、ドアを上方に跳ね上げる方式にすることで、高いサイドシルをまたぐ様に乗り降りする仕様にしたのだ。

 ルーフ強度などの問題で、今では採用するモデルはほとんどないが、当時としてはかなり斬新だった300SLのガルウイングドア。後に映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で活躍した「デロリアン・DMC-12」などにも採用されるなど、一時はレーシーでかっこいいドアの代名詞として一世を風靡した。

ランボルギーニ方式はシザースドア

 跳ね上げ式ドアの中では、今やベンツのガルウイングドアより有名なのがランボルギーニが採用する斜め上方に開くタイプだ。

 日本では、この方式もガルウイングと呼ぶが、欧米などではランボルギーニ方式という意味で「ランボドア」とか、「シザースドア」とも呼ばれる。シザース(Scissors)は英語でハサミのこと。ドア前部にヒンジがあり、その開き方がまるでハサミのようなので、そう呼ばれているのだ。

 シザースドアを最初に採用したのは、1974年にデビューした「カウンタック」。その後、「ディアブロ」(1990年発売)や「ムルシエラゴ」(2001年発売)、「アヴェンタドール」(2011年発売)など、V型12気筒を搭載したランボルギーニ製スーパーカーには、伝統的にこの開閉方式が採用されてきた。

 こういった長い歴史を持つことからも、「スーパーカー=シザースドア」といった方程式ができあがったのだろう。現在では、アフターマーケットで普通のドアをシザースドアに変更するキットが販売されるなど、いまだに多くの人々が憧れる存在となっている。

テスラ製SUVには変形ガルウイングを採用

 米テスラ社が販売するSUVタイプのEV(電気自動車)「モデルX」には、後部座席のドアに「ファルコンウイングドア」と名付けられたガルウイングドアを採用している。

 3列シート仕様なら最大7人が乗れるこの大型SUVの後部ドアには、ダブルヒンジ方式により、ルーフの中央部を残し左右が中折れして上方へ上がる独自機構を採用。これは、2列目と3列目のシートへの乗り降りを考慮したものだ。

 3列シート仕様の大型SUVで最後部席へアクセスする場合、通常は橫開きの後部ドアから身をかがめるようにして乗り降りする必要がある。だが、モデルXでは後部ドアが上方に開き、開口部も大きいため、窮屈な姿勢で乗り降りしなくても大丈夫なのだ。

 また、他車のガルウイングドアと比べ、開く際に橫のスペースを取らないため、狭い駐車スペースでも開閉が可能。各ドアにはセンサーが装備されおり、周囲の状況を監視しながらスムーズに開閉するというのも、今ドキのクルマならではだ。

 ちなみに、モデルXの前ドアは、通常の橫開きタイプだが、ドライバーが車両に近づくと自動で開く機構を採用。さらに、運転席に乗り込んでブレーキペダルを踏むと自動で閉じることができるなど、最新技術による様々な便利機能が付いている。

前方に上がるスーパーカー御用達ドア

 ガルウイングドアの変形タイプをもうひとつ。「マクラーレン・F1」など多くのスーパーカーが採用するのは、ドアが前方に持ち上がり内側が下向きに開く「バタフライドア」という方式だ。

 ランボルギーニのシザースドアにも似たこの方式は、ドア全開時に、正面から見たフォルムが蝶が羽を広げたような姿になることからネーミングされたもの。

 マクラーレンでは、1991年に登場した6.1L・V12気筒を搭載したF1のほかに、2017年に発売された4L・V型8気筒エンジンの「720S」などが採用している。

 また、フェラーリでも、創業55周年を記念して限定販売された「エンツォフェラーリ」(2002年発売)や、初の市販ハイブリッドカーである「ラ フェラーリ」(2013年発売)などがこのドアを装備。

 ほかにも、メルセデス・ベンツの「SLRマクラーレン」(2003年発売)など、ランボルギーニを除く多くのスーパーカーにこの方式が取り入れられている。

 バタフライドアを装備するスーパーカーが多いのは、「ポルシェ・911GT1」などグループCのレーシングカーにも採用例が多かったことも理由のひとつだろう。レーシングカーと同様のドアを装備すれば、ドライバーは乗り込むだけで、レースの雰囲気やを満喫できることは間違いない。

 また、ドアを上げたクルマの姿が優雅に見えることも、バタフライドアが多く採用される要因だろう。究極の高級スポーツカーであるスーパーカーは、スポーティさだけでなく、ラグジュアリー感や独自の個性を出すことも重要だからだ。それだけ、このドア方式には人を惹きつける力があるといえる。

顔面がドアだったイセッタ

 次は、とびっきり個性的なドア開閉方式を採用したクルマを紹介しよう。イタリアのイソ社が1953年に発売したミニカー(超小型自動車)「イセッタ」は、なんと、クルマのフロントフェイスがドアとして開閉し、前から乗り降りする方式を採用していたのだ。

 丸い卵形の車体と曲面ガラスを採用した外観が、まるで泡のように見えることから「バルブカー」という愛称を持つこのクルマ。エンジンには、単気筒ながらピストンを2つ持つというユニークな構造の236cc・空冷2サイクルを搭載。室内には大人2人が乗車できるベンチシート、ルーフには巻き上げ式キャンバストップを採用するなどで、おしゃれな装備も人気のモデルだった。

 そのイセッタが最も個性的だったのが、前述のドア。冷蔵庫のようなノブを回すとフロントフェイスと兼用のドアが開き、乗り降りが可能。ハンドルはフロント部の内側に固定されているため、ドアを開くと一緒に出てくるという、まるでおもちゃのような作りだった。

 イセッタは、発売3年後にドイツのBMW社がライセンスを取得し、自社のバイク用4サイクルエンジンを搭載し1963年まで生産された。

 その後、スイスのマイクロモビリティ社がそのスタイルにインスピレーションを得て、丸味を帯びたボディと、同様のドア方式を取る2人乗り小型EV「マイクロリノー」を開発。2019年の東京モーターショーにも展示されたので、覚えている方もいるだろう。

 現在は、新しい外観のアップデート版「マイクロリノー2.0」も製作され、日本も含めた世界中で販売される予定だ。

日本にもあったガルウイング車

 ここでは、主に海外製のクルマを紹介したが、国産車でも例えば、トヨタが1990年に販売した「セラ」には、バタフライドアが採用されていた。

 4代目スターレットをベースに、モーターショーのコンセプトカーをそのまま市販化したようなデザインで話題になったこのモデル。その大きな特徴は「グラッシーキャビン」と称したガラス製の巨大なキャノピーとバタフライドアだった。

 また、マツダの軽自動車「オートザムAZ-1」(1992年発売)には、メルセデス・ベンツ式ガルウイングドアが採用されていた。2シーターのスポーティなクーペだったこのモデルには、FRP製の軽量ボディと、セラと同様のガラス製キャノピーを採用。スポーティかつ小粋でユニークなフォルムに、ガルウイングドアが見事にマッチしていた。

 このように、国産車にもかつては、跳ね上げ式などの変わり種ドアを採用するモデルも存在したが、今ではほぼ絶滅してしまったのは寂しいところだ。

 EVや自動運転車、先進安全技術や燃費性能など、主にテクノロジーや実用性が注目されている昨今の国産車。クルマ好きにとっては、もっとデザインや機能面でも個性的で、面白いクルマが登場することを期待したい。

こんな記事も読まれています

【F1第22戦決勝の要点】 岩佐歩夢が分析するメルセデスの速さの秘密「マシン特性の不利を覆すほどのいい仕事」
【F1第22戦決勝の要点】 岩佐歩夢が分析するメルセデスの速さの秘密「マシン特性の不利を覆すほどのいい仕事」
AUTOSPORT web
1.2L 3気筒+モーター3基で300ps ルノー・ラファール E-テックへ試乗 アルピーヌに相応しい走り
1.2L 3気筒+モーター3基で300ps ルノー・ラファール E-テックへ試乗 アルピーヌに相応しい走り
AUTOCAR JAPAN
ヒョンデ「アイオニック5」がマイチェンで航続可能距離703キロに! 気になる車両価格は523万6000円から…30台限定の「コナ マウナ ロア」にも注目
ヒョンデ「アイオニック5」がマイチェンで航続可能距離703キロに! 気になる車両価格は523万6000円から…30台限定の「コナ マウナ ロア」にも注目
Auto Messe Web
『絶対完走』の重圧に耐えた勝田。来季シートがかかっていたことを示唆【ラリージャパン後コメント】
『絶対完走』の重圧に耐えた勝田。来季シートがかかっていたことを示唆【ラリージャパン後コメント】
AUTOSPORT web
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 後編 ジャンクヤード探訪記
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 後編 ジャンクヤード探訪記
AUTOCAR JAPAN
中型からステップアップ 人気の“ミドルクラスネイキッド”スズキ「SV650」とカワサキ「Z650RS」どっちを選ぶ?【スペックでライバル比較】
中型からステップアップ 人気の“ミドルクラスネイキッド”スズキ「SV650」とカワサキ「Z650RS」どっちを選ぶ?【スペックでライバル比較】
VAGUE
ラリージャパンで一般車の侵入という衝撃トラブルが発生! SSのキャンセルもあるなかトヨタ勢は2・3・5位に着ける
ラリージャパンで一般車の侵入という衝撃トラブルが発生! SSのキャンセルもあるなかトヨタ勢は2・3・5位に着ける
WEB CARTOP
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 前編 ジャンクヤード探訪記
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 前編 ジャンクヤード探訪記
AUTOCAR JAPAN
サーキット派に朗報! ウェッズスポーツ「TC105X」に16インチの新サイズ登場…マツダ「ロードスター」や走りのFF車にオススメです
サーキット派に朗報! ウェッズスポーツ「TC105X」に16インチの新サイズ登場…マツダ「ロードスター」や走りのFF車にオススメです
Auto Messe Web
【ラリージャパン2024】最終ステージでトヨタが逆転! マニュファクチャラーズタイトル4年連続獲得、豊田章男会長「感動という共感を生んだ」
【ラリージャパン2024】最終ステージでトヨタが逆転! マニュファクチャラーズタイトル4年連続獲得、豊田章男会長「感動という共感を生んだ」
レスポンス
独創的な「近未来」フォルム! シトロエンCX 5台を乗り比べ(1) モデル名は空気抵抗係数から
独創的な「近未来」フォルム! シトロエンCX 5台を乗り比べ(1) モデル名は空気抵抗係数から
AUTOCAR JAPAN
1度の運転では好きになれない シトロエンCX 5台を乗り比べ(2) GTiにファミリアール 仏大統領も愛用
1度の運転では好きになれない シトロエンCX 5台を乗り比べ(2) GTiにファミリアール 仏大統領も愛用
AUTOCAR JAPAN
4連覇を決めたフェルスタッペン「苦しいシーズンの中で多くのことを学んだ。だからこそ特別だし、誇らしい」
4連覇を決めたフェルスタッペン「苦しいシーズンの中で多くのことを学んだ。だからこそ特別だし、誇らしい」
AUTOSPORT web
【ポイントランキング】2024年F1第22戦ラスベガスGP終了時点
【ポイントランキング】2024年F1第22戦ラスベガスGP終了時点
AUTOSPORT web
「ジャガー」のブランドロゴが大胆に変更! 英国の名門ブランドはどこに向かう? まもなく登場する“新たなコンセプトカー”とは
「ジャガー」のブランドロゴが大胆に変更! 英国の名門ブランドはどこに向かう? まもなく登場する“新たなコンセプトカー”とは
VAGUE
カワサキ新型「レトロスポーツモデル」に反響多数!「古き佳き」スタイリングが“現代”に刺さる!? 玄人も注目する“バイクらしさ”を味わえる「W230」とは?
カワサキ新型「レトロスポーツモデル」に反響多数!「古き佳き」スタイリングが“現代”に刺さる!? 玄人も注目する“バイクらしさ”を味わえる「W230」とは?
くるまのニュース
村民の力で蘇った昭和のボンネットバス! 熊本県・山江村の宝物マロン号がロマンの塊だった
村民の力で蘇った昭和のボンネットバス! 熊本県・山江村の宝物マロン号がロマンの塊だった
WEB CARTOP
本物の贅沢──新型ロールス・ロイス ブラック・バッジ・ゴースト・シリーズII試乗記
本物の贅沢──新型ロールス・ロイス ブラック・バッジ・ゴースト・シリーズII試乗記
GQ JAPAN

みんなのコメント

21件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村