日本でのドリッパーの主流はカリタ、メリタ、ハリオの3メーカー
こんにちは! バイク好きのコーヒー屋、Day Drip Coffeeのクロダです。コーヒーとバイク。それぞれに奥深い世界観を持つ魅力的な存在ですね。このコラムでは、そんな二つの世界を行き来するうちに見えてくるトピックをお届けしています。
【画像】シルエットは似ていても実は全然違う!? 様々なドリッパーを画像で見る(10枚)
今回はコーヒーのドリッパーについて。ペーパードリップでコーヒーを淹れる時の必需品ですが、最近は色々なタイプや形があって、どれが良いのかよく分からないのではないでしょうか。ということで、前回のコーヒーミルの話に引き続き、今回も一つの工業製品として捉えてみたドリッパーのお話です。
日本国内でのコーヒーの淹れ方はペーパードリップが主流です。使われているドリッパーは主にカリタ、メリタ、ハリオの3つで、シェアNo.1は恐らく今でも日本のメーカー「カリタ」のドリッパーでしょう。
台形のペーパーフィルターを用いる形状で、小さな穴が3つ開いています。似たような物にドイツの「メリタ」があります。基本形状は同じですが、こちらは一つ穴です。世界で最初にペーパードリッパーを発明したのはこのメリタの方で、カリタはそれにインスパイアされて生み出された物と言えます。
メリタ・カリタの特徴は穴が小さいこと。湯を注ぐと湯だまりが出来て、ゆっくり落ちます。
特にメリタは一つ穴なので、誰が湯を注いでもコーヒー粉が一定時間だけ湯に浸かっています。そのため抽出される味わいも一定となるので、味がブレにくく安心して使えます。
逆に言えば、味わいの印象は「穴の大きさと数」=「浸る時間」で決まります。カリタは若干早い抽出なので、湯の注ぎ方でわずかに味わいを変化させることも出来ます。この浸かっている時間で抽出する方式を「浸漬法(しんしほう)」といいます。
近年シェアを伸ばしてきているハリオ「V60」
近年シェアを伸ばしてきているのがハリオのV60というモデル。円錐型で、底にはとても大きな穴が一つ。湯を注ぐとそれなりに溜まるものの、すぐに落ちていきます。
実は湯が極力留まらず、最短時間で抜けていくように作られているのです。だからメリタ・カリタと同じように湯を注ぐと、コーヒー粉に触れている時間が短かく、薄味になってしまいます。では一体どうやって淹れるのでしょうか?
V60は湯の太さや注ぐ時間によって味わいを作っていきます。これは「透過法」と呼ばれ、注ぎ方のわずかな違いでも味わいが変化する繊細さがあります。でも一定の淹れ方が出来る腕前がないと、味がブレやすくもあります。全ては湯の抜けの早さによって生じる個性ですね。
この湯の抜けの早さは、穴の大きさだけでは実現しません。早さの秘密はリブ(内側の螺旋状の突起)にあります。リブの高さが他社製品と比べ非常に高く作られています。高いリブでペーパーフィルターを空中に浮いた状態で支え、ドリッパー壁面との間に大きな空間を確保するためです。それによってフィルターから滲み出た湯(コーヒー)はストレスなく穴へ誘導されるから、抽出が早いのです。
またリブ同士の間隔はとても広く、しかも螺旋状に配置しています。これは湯の重みでフィルターがたわんで張り付き、せっかくの空間が失われてしまうのを防ぐため、たわむ力を逃すための設計です。
直線で配置するよりもしっかり支えることが出来、空間を最大化しています。このリブの設計こそがV60ドリッパーの真髄、真骨頂だと思います。螺旋状は単なるデザインではなく、機能を追求し続けた結果なのですね。
アウトドアに便利な折り畳み式も登場
現在カリタからは更なる安定感を誇るウェイブドリッパーが登場、またハリオでも湯がゆっくり落ちる浸漬法のドリッパーや、V60の性能をそのままアウトドアでも手軽に味わえる折り畳み式ドリッパーまで登場しました。
こんな風に様々なタイプが作られている訳ですが、機能や構造から紐解いていくと「どんな人に、どんな風に」コーヒーを淹れてもらいたいのか、というコンセプトがそれぞれにあり、それを実現するために試行錯誤していることがよく分かります。全てはあくまでも「ハンドドリップでコーヒーを淹れる」ための情熱が為せるワザです。
ただ⋯⋯僕がこんなこと言うと身も蓋もないのですが、もっと簡単に安定的にコーヒーを淹れたいなら、コーヒーメーカーを使えば良いと言う話です。でもわざわざハンドドリップでアレコレやろうとする辺りが、なんだかバイクの世界と近い感じがするんですよね。
いろいろな不便やリスクを背負ってでもバイクで走るという行為が、ハンドドリップでコーヒーを淹れるという行為と、どこか遠い所で同じ価値観を共有している気がしてならないのです。ハリオのV60に、ピーキーな2ストロークエンジンのような面白さを感じてしまうのは僕だけでしょうけど。
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