居残ることになってしまった3人の心を繊細に紡ぐ『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』

寄り添い合う3人の間に生まれる優しさ

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』は、『サイドウェイ』と『ファミリー・ツリー』で二度のアカデミー賞脚色賞に輝く名匠アレクサンダー・ペイン監督の最新作。巧みなストーリーテリングで日常から生まれる心の機微を繊細に紡ぎ出します。

　1970年、ボストン近郊。クリスマス休暇の間、名門バートン校の生徒たちは誰もが家族の待つ家に帰り、クリスマスと新年を過ごします。しかし、学校に残らざるを得ない者もいます。生真面目で融通が利かず、生徒からも教師仲間からも嫌われている古代史の教師ハナム。勉強はできるが反抗的で家族に難ありの生徒アンガス。ベトナム戦争でひとり息子を失ったばかりの料理長メアリー。雪に閉ざされた学校で反発し合いながらも、孤独な彼らの魂は寄り添い合ってゆき——。

　古い価値観で教鞭をとる古代史の非常勤教師で、生徒からも教師たちからも嫌われているポール・ハナムを演じるのは、『サイドウェイ』でペイン監督と見事なコンビを見せたポール・ジアマッティ。本作で彼はゴールデングローブ賞主演男優賞（ミュージカル・コメディ部門）を受賞しています。

　頭が良く、傷つきやすく、トラブルメーカーだが、心根は悪くないバートン校の生徒アンガス・タリーを演じたのは、映画初出演となるドミニク・セッサ。そして、一人息子のカーティスをベトナムで亡くした学校の料理長メアリー・ラムの孤独を言葉少なに体現したダヴァイン・ジョイ・ランドルフは、アカデミー賞助演女優賞を受賞しました。

　ヤマハ「SR400」も登場するコメディ映画『ハングオーバー!!　史上最悪の二日酔い、国境を越える』から、『アメイジング・スパイダーマン2』『カリフォルニア・ダウン』といったアクション映画、そして、『それでも夜は明ける』などのような感動作まで、幅広い作品で名脇役として活躍するポール・ジアマッティ。ペイン監督の丁寧な演出と彼をはじめとする出演者たちの名演が見事に融合し、小さな心のひだの動きがスクリーンに刻まれる、普遍的ともいえるヒューマンドラマが誕生しました。

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』は、2024年6月21日（金）より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショーです。