衝撃とともに報じられた豊田章男氏の会長就任。そして佐藤恒治氏が新社長に就任した。この二人のトークショーやSNSでの発言で浮上したのが「セリカ」という車名だ。トヨタのスポーツモデルとして販売終了後も人気が高く、4WDマシンのベース車にもなった名車の魅力を振り返ろう!!
文/斎藤聡、写真/トヨタ、ベストカー編集部
トヨタの佐藤新社長がラブコール!! スポーツモデルの代名詞「セリカ」の復活はあるのか?
■イベントでの発言から「セリカ」の名前が急浮上
新城ラリーでデモ走行を行ったグループA仕様のST165セリカ
巷ではセリカ復活か!? というニュースで盛り上がっています。事の発端は、3月4~5日に行われた新城ラリーのトークショーでの一幕。会長就任が発表されてから初めて公の場に姿を現した豊田章男会長が、今後のセリカについて触れたことに始まります。
その日はST165型セリカGT-Fourのデモランも行われ、トークショーでセリカについての思いについて尋ねられて『(セリカというクルマが)もう一度ほしいなって感じがします』とか、最近のロングセラー車復活の流れを指して『そういう流れを佐藤新社長が引き継いでくれるんじゃないかな』とコメントをしています。
会長からの前振り(?)を受けて、佐藤新社長もSNSなどでセリカ復活に前向きな発言をしています。まあ、トヨタ会長から“引き継いでくれるんじゃないか”と振られれば、それはもう暗に“やってね“ということであって、これに対する正解は”ハイ“か”よろこんで“の2択しかありません。
じつは思い付きで発言したようなコメントですが、2021年に北米でセリカの商標登録が再申請されているようなので、会長↔社長のやり取りはもしかしたらアナウンスしてもいい時期に来ており、セリカ待望の機運を高めるための仕掛けだったなんて読み方もできるかもしれません。
トヨタのような大企業の会長、社長職にある方は失言などしませんから。セリカというコトバには何らかの意図があると考えたほうがしっくりきます。そう考えるとトヨタの大看板の一つであったセリカ復活はかなり濃厚であり間近と言えるかもしれません。
■映画『私をスキーに連れて行って』で大人気となったセリカ
ST165セリカGT-Four
さて、そのセリカですが、1970年の初代から1999年の7代目(~2006年)まで36年間の間作り続けられてきたトヨタ有数のブランドです。デビュー当初はスペシャリティカーと呼ばれ、いまでいうプレミアムスポーツスポーツカーといった立ち位置でした。
モータースポーツとの関わりも初代から色濃いものでした。個人的には初代セリカとセリカLBに強い思い入れがあるのですが、モータースポーツで華々しく活躍したセリカと言えば4代目T160系とT180系セリカでしょう。
T160セリカは1985年のデビューになります。駆動方式をそれまでのFRからFFへと変更したモデルでした。ワイド&ロー(と言っても全幅は1690mm!でした)の滑らかな面構を持ったクーペボディで、 “流面形”というキャッチコピーが使われていました。確かに当時カッコイイスタイルのスポーツカーでした。
4WDの登場は1986年に2L DOHCターボの3S-GTE型(185ps/24.5kgm)を搭載。当初はベベルギヤ+手動デフロック機構付きのセンターデフ式4WDでしたが、翌87年にデフロックに代わりビスカスLSDが採用されました。
操縦性は、全体にマイルドな味付けで、とても素直。4WD独特の曲がりにくさがなく、むしろスイスイとノーズが向きを変えてくれるような味付けでした。ペースを上げていくと穏やかにグリップ限界が訪れるタイプ。
速いコーナリングではタックインでヌルヌルヌル……とリヤが滑り出しクルマの向きを変えることができ、アクセルを踏むとスライドが穏やかに収まる、というものでした。コーナーの限界スピードが驚くほど高いわけではありませんでしたが、自由自在にクルマを操れる懐の深いクルマでした。
モータースポーツでは1990年にST165型セリカGT-Fourを駆ってカルロス・サインツが日本車初のWRCドライバーズチャンピオンを獲得しました。
■エディ・マーフィーのCMが印象的なモデル
ST185セリカGT-Four
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T180系は1989年に登場。起伏に富んだ曲面を多用した個性的なエクステリアデザインが特徴でした。CMキャラクターに起用されたエディー・マーフィーの「ぬう・せれか!」(と確かに言っていた)がやたら印象に残っています。
プラットフォームは先代GT-Fourをベースにしていますが、サスペンション回りの剛性アップが図られ、またリヤデフにトルセンLSDが装備されたことで、トラクション性能の強化が図られています。
搭載する3S-GTE型エンジンも225ps/31.0kgmにパワーアップされました。
セラミックタービン+ツインエントリーターボの効果によってレスポンスとパワー(&トルク)アップが図られていますが、パワーの伸びの良さだけでなく、レスポンスが良くトルクバンドの広いエンジンに仕上がっていました。
操縦性は、基本的な特性はそのままにST165GT-Fourよりグリップレベルが1ランク上がり、グリップしている様子が明瞭にかんじとれるようになっています。
またタックインで穏やかに向きを変えていたリヤのスライドも少なめになって、クルマがぐいぐい前に進むようになりました。先代GT-Fourと比べ、より実践的な速さを身につけたという印象があります。
ちなみに、WRC用ホモロゲートモデルとして5000台限定生産されたGT-Four RCは性能の安定性、整備性を考慮して水冷インタークーラーとメタルタービンを採用。
パワーこそ235psとパワーアップしていますが、ターボラグが大きくクセが強めでした。ブーストアップやミスファイアリングシステムなどを使うことでよりその性能が引き出せる、競技用ベース車で、グループA時代ならではのモデルでした。
WRCでは、そのGT- Four RCで1992年にカルロス・サインツがドライバーズタイトルを獲得。翌93年にはユハ・カンクネンによってドライバーズタイトルとマニュファクチャラーズタイトルを獲得しています。
■セリカ復活はあるのだろうか?
ST205セリカGT-Four
6代目(1993~1999年)となるT200系はWRCでの華々しい活躍は見られなかったものの、セリカをさらに一歩進化させたモデルでした。
スーパーストラットを採用したのがこのモデルの特徴で、市販車としては秀逸と言っていい出来映えでしたが、ラリー競技ではセッティングの難しさがネックとなって、デビューイヤーとなる1994年シーズン前半はST185GT-Fourで戦うなど思うような活躍を見せることができませんでした。
また1995年シーズンはリストラクター不正問題でWRCポイントをはく奪されるなど 不遇なモデルでした。ポテンシャル自体は高かっただけに残念です。
といった具合に、セリカGT-Fourは、特にラリーシーンで大活躍したモデルでした。今のトヨタのモータースポーツの主軸の一つは間違いなくWRCです。
そのためにGRヤリスを投入し、またラリーコンペティションマシンを強くイメージさせるGRカローラ、同モリゾウエディションも作り出しています。とすれば、このプラットフォーム、パワーユニットを使ってセリカGT-Fourを生み出すのはそう難しい話ではないかもしれません。
冒頭に触れた北米でのセリカの登録商標の期限を考えると、水素エンジン車を搭載するには少々時間がなさすぎます。他の選択肢として考えられるとすれば、ハイブリッドスポーツか、BEVも考えられます。
ハイブリッドの4WDモデルで考えると、プリウスPHEVベースにした4WDモデルはもしかしたら可能性ありかもしれません。
新型プリウスPHEVは積極的にリヤを駆動するようプログラムされており、燃費のプリウスからプレミアムハイブリッド(PHEV)へと進化していますから、バッテリー容量に余裕があるPHEVをつかって、さらにリヤモーター出力を高めたハイブリッド(PHEV)スポーツというのも考えられなくはありません。
ただ力作プリウスの存在感を薄くしてしまうようなことをするかどうか。
BEVで考えるなら、bZ4Xベースが順当だだと思いますが、出力的には少々物足りない転は否めません。新規作成には微妙に時間が足りないのでEVの線は薄目ではないかと思います。
高いスポーツ性で定評のあるGRヤリス
2025年までと発売時期を考えるなら、やはりもっとも現実味がありそうなのはGRヤリスのパッケージングをベースにしたモデルが可能性は高そうに思えます。もちろんこれから発売するのにそのまま搭載したのでは芸がないので、何らかの仕掛けはしてくるのではないかと思われます。
考えられるのはエンジンを水素燃料対応、あるいは合成燃料対応にしてカーボンニュートラル時代を見据えたスポーツカーという線はあるかもしれません。いずれにしても、ハイパフォーマンスなスポーツカーとなりそうなセリカの復活に大いに期待したいところです。
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アメリカ辺りで86の名前だけすげ替えた復活はあるかもしれん。