この記事をまとめると
■カワサキが海外で展開するオフロード四輪車を国内に導入
ランクル70の復活は奇跡だった!? 過去の大人気車が「復活販売」される可能性はあるか
■日本ではあまり馴染みがないが海外では大人気カテゴリーのマシンとなっている
■「TWRYX KXR 1000」「TERYX4 S LE」」と「MULE」という3モデルを展開する
バイクメーカーが手がける話題のオフロード四輪に乗ってみた
オフロード四輪車と聞いて、どんな乗り物が頭に思い浮かぶだろうか。
おそらく大多数の読者諸兄は、ランドクルーザーやジムニーのようなクロカン4WDモデルを想像しているのではないかと思う。
恥ずかしながら筆者も同様で、カワサキモータースジャパンから届いた「オフロード四輪車『TWRYX/MULE』試乗会」の案内を見たときも、「カワサキが四輪乗用車に進出するのか!」と早合点してしまった。もちろん、そうした話であればもっと大きなニュースになっているわけで、ここでいうオフロード四輪車というのは公道走行を前提としていない、悪路走破性能の高い四輪車のことだ。
写真を見ていただければわかるように、そのスタイルは一般的なクロカン4WDはまったく異なっている。ロールケージがむき出しの外観はワイルドで、プリミティブ。とはいえ、ハンドルは丸く、シートを備えたコクピットは、たしかに四輪車であって、KAWASAKI(カワサキ)というブランドから想像するであろう二輪(バイク)とは完全に異なるものだ。この手のモビリティは、北米で人気が高く、「サイド・バイ・サイド」といったカテゴリー名称でまとめられている。
基本的には公道走行を考慮していないので、ウインカーなどの保安部品を持たない乗り物となっている。オフロードという表現には、悪路という意味と公道以外というダブルミーニングになっていると理解することもできる。
カワサキのオフロード四輪車となれば、バイクのエンジンを流用した乗り物を想像してしまうかもしれないが、それは間違い。フレームの設計思想はもちろんエンジンについても二輪とは別物で、オフロード四輪車専用設計となっている。なぜ、そこまでコストをかけて開発できるのかといえば、この手の乗り物は北米において数十万台規模の市場を持つ、人気のあるカテゴリーのモデルだからである。北米の荒野や森林でのレジャー用として、さらには農場などの働く現場を駆け回っているのがオフロード四輪車なのである。
そんなオフロード四輪車の試乗機会をメディア向けに用意した背景は、カワサキの乗り物を国内で販売しているカワサキモータースジャパンが正規販売することが決まったからである。正確にいえば、すでに日本で販売は始まっている。今回は、その全ラインアップに一気乗りできるという貴重な機会にもなった。
冒頭でも記したように、公道走行は不可という意味でのオフロード車であるから、試乗ステージはクローズドコースとなる。今回は、愛知県にある「さなげアドベンチャーフィールド」が、その舞台に選ばれた。クロカン4WDを趣味で走らせるようなアップダウンのあるハードなコースで、カワサキのオフロード四輪車はどのような走りをみせてくれるのだろうか。
悪路にも関わらず半端じゃない安定感!
最初にハンドルを握ったのは、スポーツモデルの最高峰「TERYX KRX 1000」。カワサキのワークスマシンと同じKRT(カワサキレーシングチーム)カラーをまとっていることからも、パフォーマンス重視のモデルであることがわかるだろう。2名乗車となっているのもスポーツイメージを強調している。
エンジンは専用設計の999cc・2気筒DOHC。最高出力は84kW(114馬力)/8500rpm、最大トルクは104Nm/7000rpmとなっている。二輪のエンジンとしては控えめにも思えるし、四輪だとすれば自然吸気でリッター110馬力オーバーというのはハイチューンといえる。このスペックからもオフロード四輪車のニーズに合わせて専用に開発されていることが理解できるだろう。
駆動系のメカニズムは、トランスミッションが遠心クラッチを使ったCVTで、ハイ/ローの副変速機を持つ。駆動方式はパートタイム4WD、リヤデフは直結タイプで、フロントもスイッチひとつでデフロックすることができる。滑りやすい岩場や、フカフカの砂地などハードなシチュエーションを意識した駆動系といえそうだ。
今回は、ローギヤでの試乗となったが、岩場のセクションもコースに設定されているため、6点式となるシートベルトでしっかりと体を固定して臨むことになった。しかし、走り出してしまうと緊張感はどこかへいってしまう。ストロークの長いサスペンションのおかげで車体が傾いていてもドライバーの視線は水平に保たれるし、ロールバーまでフレームの一部として使う設計のおかげでボディ剛性感が高く、そのおかげで乗り心地もいい。
ハイパワーエンジンと遠心クラッチCVTの組み合わせということで、アクセルコントロールにラグがあるのでは? という心配もしていたが、いい意味で裏切られた。むしろ、どこがCVTなのかと思うほどダイレクト感のあるパワーデリバリーのフィーリングだった。
2WDモードではアクセル操作でリヤを滑らせるといったふうに遊ぶこともできる。税込み363万円という価格や公道走行不可という部分は所有のハードルを上げてしまうのも事実だが、オフロードコースでのレンタルサービスなどあればハマってしまいそうなファンビークルであることが確認できた。
つづいて試乗したのは、同じ「TERYX」シリーズの4人乗りモデル「TERYX4 S LE」。こちらもキャンディライムグリーンのカワサキカラーが印象的なファンモデルだ。遠心クラッチCVT・副変速機・2WD/4WD切り替え機構からなる駆動系の基本プロファイルは共通だが、エンジンは完全に別物。
こちらは783ccV型2気筒SOHCとなっている。最高出力は43kW(58馬力)/6750rpm、最大トルクは64Nm/5500rpmというのがカタログスペックだ。バンク角90度のVツインエンジンは、鼓動を強調するほど主張が激しいわけではないが、実用エンジンとは異なる個性を感じさせてくれる。このあたりもマシンコンセプトにあっている印象を受けた。
こちらはリヤシートがあり、オフロードコースを攻め込むというよりも、林道などを家族や仲間といっしょにツーリング的に走って楽しむといったイメージのオフロード四輪車だ。そうしたキャラクターに合わせて、林道コースを10km/h目安でゆっくりと走ってみたが、どんなシーンでもなんの心配もいらない安心感は、いわゆるクロカン4WDやクロスオーバーSUVとは段違いだったことに驚かされた。
電子制御は皆無で、運転アシストといっても電動パワーステアリングが備わっているくらいのプリミティブな乗り物だが、通常のSUVではヒルディセントコントロールが必須と思われるほどの急な下り坂でもエンジンブレーキとフットブレーキだけで安定した姿勢で走ることができた。
エンジンをミッドシップに搭載、前後重量配分を48:52とするなど、ディメンションからオフロード走行に最適化させた部分が体感できたといえるだろう。税込み321万2000円という価格は、やはり高価だが、この乗り物が必要なくらいの私有林を持っている富裕層にとっては、別荘に置いておきたい1台といえるのかもしれない。
最後に試乗したのが「MULE」シリーズ。MULEとは「Multi-Use Light Equipment」に由来する名前で、実用性を追求した働くオフロード四輪車だ。前後2列の6名乗車仕様となる「MULE PRO-FXT EPS」と3名乗車仕様の「MULE PRO-FX EPS」の2バリエーションが日本に正規導入される。
ちなみに「MULE PRO-FXT EPS」は簡単な操作でリヤシートを格納できるため、数分で3人乗り+広いラゲッジへと変身できる。グレード名にアルファベットのTが追加されているのは変身(トランスフォーメーション)の意味だったりする。
ボディサイズは全長と全高が軽自動車サイズで、全幅は1625mmとリッターカーサイズ。812cc 3気筒DOHCエンジン(最高出力35kW/5500rpm、最大トルク65Nm/3500rpm)を搭載するのも含めて、軽トラックをひとまわり成長させたような車格をイメージしたくなる。実際、TERYXシリーズで感じられたファン要素はほとんどなく、純粋な道具感のほうが強い乗り味だった。
それでも悪路での安心感、絶対的な走破性という点では軽トラックとは一線も二線も画すレベル。アメリカでは農業や林業の現場で活躍しているということだが、まさに日本でも北海道などの広大な農地で活躍しそうなオフロード四輪車と感じさせられた。
ちなみに価格は、3人乗り仕様が242万円、6人乗り仕様が278万3000円となっているが、現場でのニーズにあわせてカスタマイズすることが多いために、あくまで参考価格といった意味合いが強いという。そのあたりの柔軟性も、働くオフロード四輪車らしいところといえそうだ。
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みんなのコメント
林道も公道ですし。
遊園地のアトラクションでもないし、
牧場経営者の道楽くらいか?
四輪自体は海外市場じゃ前から売ってるんだから。